表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/91

姉と妹の謁見

謁見室の前に着いて、ジェネヴィーブは気を引き締める。

いざという時は、王家を欺いて逃げる。

そのために、王の能力を見極めねばならない。

王太子グラントリーは、残念ながら能力が高そうだ。父との話し合いで、王太子の思う方向に持っていかれた。王太子から逃げるのは至難だが、まだ王太子で権力は王には及ばない。


最終的には、煙幕で姿をぼかした形で、チェリシラに羽を出させて天啓とやらを言わせればいい。

その混乱に乗じて逃げれるはず。

『今日と明日、王宮で私の姿を探しなさい』

これでいい。群衆につめかけられた王宮は混乱し、安全の為に軍隊は王宮警備に駆り立てられ、逃亡しやすくなる。

期間限定となると人は焦り、王宮の門や塀は壊されるかもしれないが、こっちも命がけだから。

必ずチェリシラを守って逃げる。


王に会う前から、ジェネヴィーブの中で逃亡計画がたてられる。

殿下が本当に味方なら、どんなに心強いだろう、と考えながらジェネヴィーブは諦める。

チェリシラの羽を見て、求婚した人達を信用できない。

チェリシラが生まれた時からの侍女だって、裏切ったのだ。


王の待つ謁見室の扉が開かれると、グラントリーがジェネヴィーブを、アレステアがチェリシラをエスコートして部屋に入る。

王は玉座に座ったまま片眉をあげて、二人を見下ろしている。


「ただいま戻りました。

ジェネヴィーブ・ダークシュタイン伯爵令嬢とチェリシラ・ダークシュタイン伯爵令嬢をお連れしました」

グラントリーに紹介されて、ジェネヴィーブとチェリシラが前に出て、カーテシーをする。

王から声がかかるまでは、低姿勢で待たねばならない。

貴族令嬢として身に付けているとはいえ、田舎の領地では披露する機会などなく、王の御前でぶっつけ本番である。


「顔を上げよ」

王の言葉で顔を上げるが、まだカーテシーから解放されない、すでに足が筋肉痛だ。当然、そんなことは耐えて表情にしないのがマナーである。

そして、声をかけられたのでやっと挨拶が出来るのだ。


「王陛下にご挨拶申し上げます。ダークシュタイン伯爵家の長女ジェネヴィーブでございます」

「王陛下にご挨拶申し上げます。ダークシュタイン伯爵家の次女チェリシラでございます」

ジェネヴィーブ、チェリシラと続けて挨拶をすると、楽にしていいと王から声がかかる。

これで、カーテシーから解放だ。


「なかなか美しい令嬢のようだが、視察を切り上げて帰る程のものとは思えないが?」

王は二人を誉めたようで、(けな)している。ジェネヴィーブとチェリシラを歓迎していないのだろう。

もちろん、グラントリーも気がついており一歩前に出た。

「東部の陳情による視察だったわけですが、陛下も気にかけておられたダークシュタイン伯爵領の陳情がない理由が彼女であります。

東部地域が干ばつに苦しんでおりますが、ダークシュタイン伯爵領は農地改革と気候の予測により、豊かな農地をこの目で見てきました」

グラントリーの言葉に王が身を乗り出してくる。


「ジェネヴィーブ嬢が幼少の頃より領地の気候観測をおこない、土木を含めた農地改革を推し進めた結果が干ばつをも乗り越える農地となっております。

若い令嬢のことと信じられないでしょうが、伯爵家よりデータを持ち帰っております。

そして彼女を学院に編入させれば、学院の教授陣が彼女の優秀さを証明することになるでしょう」

王の興味をひいたことで、ジェネヴィーブの学院編入は確定となったと、グラントリーは確信して言葉を続ける。

「なお、彼女の才能で伯爵領だけというのは惜しい。国土全域で試す価値があります。

ジェネヴィーブ・ダークシュタイン伯爵令嬢を私の妃に迎えたいと切望しております」


「それは学院で結果が出てからだ。もしそれほどの才能があるなら他家に取られる訳にはいくまい。

だが、すでに婚約者候補としてガデウィン公爵家の令嬢がおろう。

伯爵令嬢ならば、シューマンの婚約者がよかろう」

王は、第2王子シューマンの名前を出した。


ここで発言することは許されないが、それでも自分のことを反論できないのが腹立たしい。ジェネヴィーブは拳を握りしめる。

王太子を殴った前科のあるチェリシラは、肩をアレステアに押さえられて飛び出せないようになっている。表情を変えてなくともチェリシラが腹をたてているのが感じ取れる。


グラントリーがジェネヴィーブに寄り添うと肩を抱いた。

「陛下、お言葉ですが、血筋だけの公爵令嬢よりも、国の未来を補うかもしれないジェネヴィーブ嬢が王太子妃にふさわしい。

なにより、私が彼女でないとダメなのです」

チュッ、グラントリーがジェネヴィーブの頭にキスをした。


ぎゃあ!

ジェネヴィーブは驚かないよう心身統一しながら、心の中で悲鳴をあげた。なにするのよ!

王の前、我慢、我慢。


チェリシラが怒りで興奮して羽が出てしまうのでは、と心配になって横を見れば、チェリシラも耐えているようで、落ち着いているようだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ