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グラントリーの決断

王に進言しようとして、王が執務室にいないことが分かった。グラントリーは補佐官に王の所在を尋ねるが、聞かなくとも分かっている。

王妃の所だ。

あれから、王妃の部屋の警備は厳重になり、公務も席を離している。

それが余計に王の執着に火を点けたらしい。

ここまで、無能ではなかったはずだ。

ギラッシュ夫人とのことも、正妃がいるという障害がよかったのかもしれない。


これは早々に引きずり降ろす承認を議会から得られるだろう、とグラントリーは思いながら王妃の執務室に向かう。

「殿下」

後ろを歩くアレステアがグラントリーに声をかける。


廊下にいるのは、第2王子シューマン・ギレンセン。

ヘンリエッテ王女の弟で、ギラッシュ夫人が産んだ最初の王子だ。

「兄上」

まだ学院に通う年齢ではなく、ギラッシュ夫人が王妃を敵視していることから、過去に交流はない。


「兄上、あの」

聞こえなかったかと、声を大きくしてシューマンがグラントリーを呼ぶ。


これ以上無視するのも、大人げないと思いグラントリーが足を止めると、シューマンの顔がほころぶ。

「私に弟はいない。そう呼ばれるのは迷惑だ」

グラントリーがそう言えば、今まで王の権威で周りから機嫌取りされていたであろう王子は眉間に皺を寄せる。


「僕も王の子供だ。そんなに王妃の子供が偉いのか!」

王位継承権がなくとも、シューマンは王の直系王子だと扱われている。


「王太子として義務と責任を負っている。同じ扱いでないのは当然だろう」

これ以上は無駄だと、グラントリーは歩みを進める。


後ろに取り残されたシューマンが叫ぶ。

「バカにするな!」


グラントリーに会いに来たのではないだろう。

王を探しに来て、出会ったというのが正しいと推測が付く。

「ギラッシュ夫人は、王が行かなくなって焦っているのか、予算を減らされて切羽詰まっているのか」

どっちだろうな、とグラントリーが言えば、アレステアが答える。

「どちらもでしょう。

子供に会いに行かせて、王に媚びをうるのでしょう」

王が子供を可愛がっていたのが想像できる。

グラントリーが王太子教育に明け暮れている時に、彼らはのびのび育てられたのだ。


「大臣達を至急に招集して、臨時会議を開く。

天使教の事は、王に報告する必要はなさそうだ。私が全権行使する」

王妃の執務室に向かっていた足は、違う方向に向かう。

「はい」

と返事があったのは執務官からだ。彼らはグラントリーから離れ、それぞれの職務に向かう。

グラントリーの護衛を兼ねた側近のアレステアが、側を離れる事はない。


元来た廊下を戻ると、まだシューマンがいた。

その横を護衛に守られたグラントリーが通り過ぎようとして、シューマンが手を延ばした。


ダン!

アレステアの剣が、シューマンの目の前の床に刺さった。

あまりの速さに、シューマンが何も動けないでいる。

「刺客と間違うので、怪しい動きはされませんよう」

剣を抜きながら、アレステアがシューマンに言う。

「僕は王子だぞ!」

アレステアに(おび)えながらも、傲慢(ごうまん)に言う。


「存じてます。私のことは、ファーガソン次期公爵とお呼びください」

剣を(さや)に納めたアレステアは、見下す形だ。

シューマン王子には、爵位も職位もない。

王子という呼称だけだ、とアレステアは意味を含ます。

王子としている間に、必要な人間になっておかないと、王の後見がなくなった時には何も残らない。


「アレステア」

グラントリーが呼ぶと、アレステアはシャーマンから離れて後ろにつく。


グラントリー達がいなくなると、シューマンは柱を蹴り上げた。

はぁはぁ、肩で息をして、シューマンは離宮に戻る。

「アイツ、絶対に許さない」


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