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狙われた姉妹

ジェネヴィーブは学院を1週間程休んだのだが、その間に王妃教育が予定されていた。

「どういうことですか?」

グラントリーに詰め寄るも、納得いく答えはでない。

「知識は十分なんだけど、マナーが王家と貴族は違うから」


王太子妃候補とは聞いているが、王妃教育に興味はない。

その時間があれば、他に使いたい。


お昼を取りながらの会話だが、周りでは好意的に聞いている者ばかりではない。

マリリエンヌ・ヌガデウィン公爵令嬢は手の中の小さな瓶を握りしめた。

王太子妃の最有力候補と言われていても、王妃教育を勧められたことなどない。

一緒に食事をしているサマンサ・ベンドーラ侯爵令嬢は、マリリエンヌの手の中の物をみつめる。

ヘンリエッテ王女が学院に登校しなくなって、予定が狂った。

自分達の手を汚さずダークシュタイン伯爵家の姉妹を排除するには、ヘンリエッタは必要な駒だった。


そんな様子を見ているのがゼノンだ。

なんとしてもアドルマイヤ王国にジェネヴィーブを連れ去りたい。

ファーガソン公爵邸を調べている手の者が、公爵夫人の動向を報告してきている。

今まで、公爵夫人は病弱で表には出て来ない存在去った。公爵邸で働いている者でさえ、姿を知らない者が少なくない。

それが公爵に支えながらだが、自室から出て来たらしい。

ダークシュタイン姉妹の周りが、大きく変化している。

兄のキラルエの手紙には、アドルマイヤ王国に脅威となるようなら排除を考えるようにとあった。

全ての進化には恩恵だけではない、常に負の要素がある。思いもよらない物が、武器に転用できたりする。



グラントリーは放課後、王宮で王太子の執務をする必要があり、アレステアも王太子補佐官として同行する。

ジェネヴィーブとチェリシラを迎えに来たファーガソン公爵家の馬車に乗せると、グラントリーとアレステアは王宮に向かった。

早く公爵邸に帰りたいアレステアは、馬車の中でも書類を広げている。


学院から、王宮もファーガソン公爵邸もすぐの距離だ。ましてや護衛も付いている。安全は高いはずだった。



カン、カン!

何本もの火矢がファーガソン公爵家の馬車に射られた。護衛も火矢に射られて落馬した。

それはあっという間に燃え広がり、燃え上がる馬車を引く馬が暴走をする。

御者は馬を止めて火を消そうとするも、火に興奮した馬は操縦が効かない。

王都の街中での出来事で、たくさんの人間が側に居ても、暴走した馬にはどうしようもない。

ガン、ガン、馬車が大きく跳ねる。

「きゃああ」

馬車の椅子にしがみ付いて、ジェネヴィーブとチェリシラが馬車の中で転げ回らないように耐えている。だが、馬車は外側が火だるまになっていて、扉も窓も崩れ落ちて車内に火が入ってきそうである。


「ジェネヴィーブ嬢!」

燃えて暴走する馬車に並走する1頭の馬。

「馬を殺して止めるから、何かにしがみ付くんだ!」

馬を駆っているのはゼノンだ。

そう言ってゼノンは剣を大きく振り上げた。

ゼノンだけではない、後から何頭もの馬が駆け付けた。

馬車が火矢に射られるのを見た男子学生達が、自家の馬車の馬を外し、騎乗して追いかけて来たのだ。

ゼノンが2頭の馬を殺して動きを止めたが、馬車は勢いのまま倒れた馬に乗り上げて(はね)、スピードが緩んだ。

そこを、駆けつけた学生達が回る車輪に棒を突き刺して止めた。

ガンッ!!

急に止まった勢いで、車内のジェネヴィーブとチェリシラは正面の壁に叩きつけられる。


ゼノンが扉を蹴り上げて開くと、車内に飛び込み、気絶しているジェネヴィーブを抱えて飛び出す。

ゼノンに続いて飛び込んだ学生が、チェリシラを抱いて飛び出て来る。

ジェネヴィーブとチェリシラは火傷を負っており意識もない。

ゼノンと多くの学生が火傷を負っていた。


連絡を聞いて教師達が駆けつけてきた頃、グラントリーとアレステアは王宮で知らせを受けた。


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