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偶然の次は?

ロンは博識だった。

ジェネヴィーブは、これほど話が合う相手は初めてだった。素性を隠している為に、薬のことしか話していないが、ロンは薬剤の知識はないものの、伝染病の歴史や分布の知識が深かった。

そして、ジェネヴィーブの話を質問しながら聞くのだ。

護衛3人とジェネヴィーブとロン。

5人のテーブルには山盛りの肉がおかれ、ジェネヴィーブはロンを観察していた。


「どうした?俺に見惚れているのか?」

ニヤリとロンが口元をあげるから、ジェネヴィーブも皮肉る。

「そう、綺麗な顔よね。骨格も綺麗なんだろうな、って」


二人の会話を聞いている護衛達は、食事を楽しんでいるようにみえて注意を怠らない。

王太子から必ず守るように指示を受けているのだ。

ロンという男は怪しい、山菜採集に来た町人というには知識が深い。冒険者や騎士の体格であり、衣類も高価ではないが廉価でもない。手には剣だこがある。

自分達が下級貴族の娘と護衛となっている以上、いろんなことに気付いているのを悟られてはならない。


カタン。

ジェネヴィーブが小さな瓶を一つ差し出した。

「これは、あの薬草を擦ってお酒を混ぜて保存できるようにした物よ。

万能薬というわけではないけど、自己回復力を高めるの。

今日、手伝ってもらったお礼よ」

お酒だけではなく、ほかの物も混ぜているが、それは企業秘密だ。


「自己回復力を高める?そんな薬は初めて聞くな」

ロンは瓶を手に取り、かざして見る。

「薬って、病気やケガの症状を抑えて、治すのは自己治癒力よ。

もちろん、病気やケガ、そのものに効く薬も多いわ。それでも自己治癒力が大きいと治りも早い。

これは、それを高めるの。

病気でなく、疲労でも効力を発揮するから、試してみて」

瓶を指さして、ジェネヴィーブは笑顔を浮かべた。

それが綺麗で、ロンは言葉に詰まった。

もちろん、護衛達は気づいているが、沈黙を通す。下手に騒いで意識されても困るのだ。


「馳走になったな、俺はもう行くよ」

椅子を音をたてて立ち上がったロンが、瓶を持った手を振って店を出て行った。


食事を終わり、サウザーが勘定を払おうとしたら、すでに支払い済だという。

ロンが支払ったそうだ。

「あいつ」

王宮の近衛としてサウザーは、未来の王妃であるジェネヴィーブに禍根の可能性を残すわけにいかない。

ロンのことは王太子に報告するが、独自でも調べようと思っていた。



翌朝は王都に向かうために、日が昇ると馬車を走らせた。

町を出たところで、馬車に異変が起きた。車輪に何かが挟まって車軸が折れてしまったのだ。

調べてみると、小さな動物を()いてしまい、車輪に巻き込んでしまったようだ。

問題は、馬車を修理しても長距離は不可能だということと、事故の時にジェネヴィーブが馬車の中で肩を強打してしまったことだ。

ジェネヴィーブは馬に乗れるが、王都までの長距離を馬車から馬に乗り換えて行くことは不可能だった。

時間のロスになるが、町に戻り新しい馬車を用意するしかない。

町までの距離ならば、ジェネヴィーブも騎乗を耐えれるだろう。


護衛の3人は元々騎乗だったから、一人が馬車に残り、積荷や薬草を守ることになった。その護衛の馬にジェネヴィーブが騎乗した。


町に戻ると、馬や馬車を預けるクラブに向かう。そこで新しい馬車を手に入れる予定だ。


サウザーが新しい馬車の手配をし、ジェネヴィーブはクラブの前のテラスで休んでいた。もちろん護衛は一人ついている。

その目の前を黒い大きな馬が通り過ぎようとして、止まった。

「ラン?」


黒い馬に騎乗しているのは、ロンだった。


朝早く町を出たジェネヴィーブは、もう二度とロンと会うことはない、と思っていた。

こんな所で会うなんて。



グラントリーが建前を言っている間に、ジェネヴィーブに新しい男が・・・ですね。

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