山での出会い
西部地方の山の中に、ジェネヴィーブの姿があった。
試験の後、学院に休暇を出して公爵夫人の薬草を探しに来ているのだ。
グラントリーが最後まで反対し、チェリシラは一緒に行くと譲らなかった。
けれど、ジェネヴィーブがチェリシラを置いていくことに決めた。チェリシラには、ジェネヴィーブがいない間、公爵夫人の検温と脈を測ることをお願いした。
グラントリーはジェネヴィーブに護衛をつけることで、許可をだした。
2日かけて西部地方の街についたジェネヴィーブは、調べておいた山に入った。
ジェネヴィーブは、町娘の姿。護衛の騎士たちは、剣を持った冒険者の姿である。しかも、薬草の採取を手伝うように言っている。できるだけ広範囲に探したいから、護衛よりも採取である。
国境を有する山は、街道を外れると、人気なく静かであったが、ジェネヴィーブと同じように、薬草や山菜採集に入る人と
出会うこともあった。
「あった」
ジェネヴィーブは、下草をかき分けて見つけた薬草を護衛の騎士達にも見せた。
「これを探しているの」
騎士達は始めて見る植物の特徴を覚えようと、メモをしている者もいる。
「これを探して欲しいの。
根っこで株が繋がっているから気をつけてね」
ジェネヴィーブは、土を掘って株ごと持ち帰るつもりだ。今後のことを考えると、公爵邸で薬草を育てたいのだ。
「でも、その辺りの株を全部取りきらないように。
ここの薬草が無くなってしまうのは困ります。
見つけた半分は残しておけば、また広がって元のようになるから」
そう言って、ジェネヴィーブは騎士達に別れて探すように指示する。
ジェネヴィーブは、最初の株を見つけてから見つけられず、集中していたせいで、人が近づいて来るのに気が付かなかった。
「驚いた、こんなところに若い娘がいるなんて」
ジェネヴィーブのすぐ後ろに人が、立っていた。
驚きのあまり、ジェネは言葉も出せずに後ろに飛び退いた。
「ああ、驚かせてゴメンね」
男はあわてて、誤ってきた。
「ところで、それは何?」
男が指差す先には、ジェネヴィーブが使っている薬品作成の道具が広げていた。
鮮度が落ちないうちに、葉をすって瓶詰にしようとしているのだ。
「こんにちは。
薬草を摘んだら、鮮度が落ちないうちに瓶詰めにしようと思って」
ジェネヴィーブがすり鉢とすりこぎを手にして説明をする。
男はふーん、と面白そうにジェネヴィーブを見る。
「ここで、見ていてもいいかな?」
「いいけど、自分の仕事はいいの?」
ジェネヴィーブも男を探るように見る。
「じゃあ、この草よ。これを、あっちで探してくれる?」
思っていた以上に足場が悪く、採集に時間がかかる。人手は多い方がいい。
ジェネヴィーブは、始めて会った男も手伝わそう、と決めたのだった。