3年A組
チェリシラは教室に入って、皆の視線を感じていた。
今日から王女は登校禁止だと聞いているが、だからと言ってチェリシラに近寄ってくるわけではないが、気になるようで、チラチラ見てくる。
王都の人間って、面倒だと思いながら、新しい机に替えられた席に着く。
嫌な視線を感じて、王女の取り巻きかな、と思う。
それより、今日も休み時間になればアレステアが来るだろう。
アレステアを嫌いではないが、不自由である。
愛情の押し付け、鬱陶しすぎる。
どうすれば、いいんだろう。
アレステアの取り扱いに悩んでいるチェリシラは、王女のことまで思考がまわらない。不幸中の幸いである。
「グラントリー殿下、おはようございます」
マリリエンヌ・ヌガデウィン公爵令嬢が、ジェネヴィーブを連れて教室に来たグラントリーの挨拶をする。
「ああ、おはよう。マリリエンヌ嬢」
グラントリーも挨拶を返して、ジェネヴィーブを席まで連れて行く。
「おはようございます、ダークシュタイン様。
殿下とずっと一緒では、クラスで浮いてしまいますわ。
今日は、私達女子とご一緒しませんか?」
マリリエンヌは、ジェネヴィーブに笑顔をみせる。
「そうしてもらうと助かるよ」
グラントリーが言えば、ジェネヴィーブを飛ばして話がきまる。
「ええ、お任せくださいな」
「おはようございます、ヌガデウィン様。よろしくお願いします」
ジェネヴィーブも、学院で他の生徒と交流したい。ジェネヴィーブ達を見ていたクラスメイトが寄って来る。
「私もお話ししたいと思ってましたの。シャルラ・エスカルゴですわ」
次々と声をかけられて名前をつげられる。すぐに3人の女子学生に囲まれた。
ジェネヴィーブは覚えるのは得意であるが、それよりも警戒が大きい。
最初にチェリシラの秘密を知られたグラントリーとアレステアは別格だ。それ以外の人間は、ささいな事が秘密の防露に繋がるかもしれない。
「王都はよく知らないので、いろいろ教えてくださいませ」
ジェネヴィーブは伯爵令嬢らしく、笑顔をみせる。
この中に、チェリシラの事をしれば利用しようとする者がいるかもしれない。
それは、一人か二人か全員かもしれない。
「お昼は、皆で一緒に取っているのよ」
マリリエンヌは、昨日グラントリーがジェネヴィーブを連れて食堂に来たのを知っている。
「申し訳ありません。お昼は妹と一緒に取るのでご一緒できません」
4人分のサンドウィッチを作って持ってきているジェネヴィーブが申し訳なさそうに断ると、マリリエンヌが提案してくる。
「妹さんもご一緒しましょう。きっと楽しいわ」
チェリシラを教室に送ってから、遅れて教室に来たアレステリアと話しているグラントリーは、ジェネヴィーブの話も聞いている。
同じ教室の中だ、ほとんどの生徒が聞いている。
編入生で、王太子のグラントリーが付き添っている。初日はゼノン王子に、グラントリーがジェネヴィーブを婚約者と言ったという噂まである。注目されないはずはない。
グラントリーが行こうとするのを、アレステリアが止める。
アレステリアはチェリシラ以外の事は、有能なのだ。
「残念ですけれど、妹はファーガソン公子の婚約者なので、アレステリア様とグラントリー様も一緒なの。私の一存で、皆さまをご招待するとは言えません、悪く思わないでくださいませ」
ジェネヴィーブは一緒に食べるを、マリリエンヌのグループに参加するのではなく、王太子のグループに皆を呼ぶと思っているようにした。こうしてしまえば、マリリエンヌの方から、王太子に一緒に食事をしたいとは言えない。
だが、マリリエンヌからさらに妬みをかうことになった。