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クラスカースト

「アレステア様、いい加減にしてください」

チェリシラは隣で世話を焼いてくるアレステアにウンザリしていた。

頬を心配してくれているのは、わかる。

だが、休み時間毎にクラスに来るから、クラスメイトに馴染む間もない。

止めは、この昼食時間だ。

食堂に連れて来られ、大勢の観衆の前で食べさせようとする。

学院では冷静な公子であるアレステアの執着に、周りが驚いている。


向かいの席に座るジェネヴィーブとグラントリーも唖然と見ていた。

ファーガソン公爵家の生活で、ジェネヴィーブもファーガソン公爵家の男の生態は慣れていたが、学院という公衆の面前では哀れと思う。

グラントリーは初めて知ったようで、面白そうに見ている。

「あのアレステアがね・・。もしかして公爵夫人が病弱で(おおやけ)の場に出て来ないというのも?」

「病弱な方です、それだけではないですが」

ジェネヴィーブがグラントリーに答えれば、グラントリーは少し考えて言った。

「王家では妃に公務があるから、同じようにはできないな」


え?

その答えおかしくない?

ジェネヴィーブがグラントリーとの間を開けようと動いたので、グラントリーが吹き出した。


誰にでも穏やかに微笑む王太子殿下が、大笑いしている。遠巻きに学生達が様子を伺って、驚いている。

グラントリーとアレステアは人の視線は慣れているようだが、ジェネヴィーブとチェリシラは恥ずかしくってしかたない。


明日も明後日も、この公開処刑のような昼食が続くのだろう、と思うとジェネヴィーブは決意した。

「殿下、明日から私とチェリシラがお昼ご飯を準備します。

ですから、どこか4人で食事できる部屋を用意してください」

田舎貴族だから料理ができるなんてことはない。料理は調理人がしてた。

けれど、この視線の中で食事しても味なんてわからない。

なら料理を覚えよう、とジェネヴィーブは思うのだ。

調理人が用意した具材を挟むサンドウィッチなら作れるだろう。


「それは嬉しいね。わかった部屋を用意するよ」

グラントリーとアレステアは、周りの視線に悪意が混じっているのに気がついていた。

その悪意が自分達ではなく、ジェネヴィーブとチェリシラに向かうだろう。

ただ一人を決めた以上、今までのようにはいかない。

今日は、二人に張り付いて、周りの反応をみるつもりだ。



午後の授業に教室に戻ると、チェリシラは机の中に何かあるのに気がついた。

包みを机の上に取り出すと、周りがチラチラとチェリシラを見ている。その包みを開いていく。


「きゃああ!」


悲鳴をあげたのはチェリシラではない、様子を見ていたクラスメイトだ。

ネズミの死体がくるまれていたのだ。

領地で土の観測をして小動物に慣れていたチェリシラは、驚きはしたが大騒ぎするほどでもない。なにより、動揺しないように練習している。


うわぁ、と言っている男子達に交じって、クスクス笑い声が聞こえる。

「田舎貴族のくせに公子に取り入って、王女殿下に歯向かうからよ」

「陛下が王女殿下を可愛がっているのを、知らないのかしら」

聞こえるように言っているのだろう。

「学院が平等なんて、思っている人がいるのよね」

「逃げかえればいいのに」

止めに入るクラスメイトはいない。


ネズミは病気を持っていることもあるから触りたくないな、席を移動しよう。

チェリシラは悪口を気にしてもどうしようもない、と空いている席を探す。


「ちょっと、貴女、何しているのよ!」

違う席に座ろうとするチェリシラを、女生徒の一人が止めに来る。


「あの席には座れないでしょ? ここ空いているから」

チェリシラが座ろうとした席は、医務室から帰った王女の席だったようだ。


「殿下のお席よ!

これだから田舎者は困るわ。

王女殿下におケガをさせて、許されるはずないわ。

席に座りたくないなら、床に座ればいい」

継承権のない王女でも取り巻きはいるらしく、クラスで傲慢(ごうまん)にふるまっているようだ。


「これはなんだ!」

揉めているうちに授業の時間になって教師が来たらしく、チェリシラの机の上のネズミを見つけた。


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