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王女という名の暴君

ジェネヴィーブとチェリシラは、それぞれの学年主任に連れられて教室に向かう。

3年生のジェネヴィーブは3階へ、1年生のチェリシラは1階の教室へと別れる。滅多にない編入生ということで注目のところに、正門前の騒動だ。


1年A組、そのクラスの扉を開けた途端に視線が集まる。

1時限目の授業の教師が、学園主任とチェリシラを迎え入れた。

平常心、平常心、チェリシラは編入生なのだから第一印象が大切、と自分を落ち着かせながら教室に入ると、豪華なドレスの女生徒が近寄って来た。


パッチン!

チェリシラは頬を叩かれたのだ。

あまりに突然のことで、チェリシラは叩かれた頬を手で押さえて茫然とした。教師達もあっけにとられている。


「この泥棒猫の妹が!

あの人は、私の結婚相手なのよ!」

叫んだ女生徒は、さらに手を振り上げた。


さっきは突然で対処ができなかったが、今度は避けて身をかわし、そのまま殴り掛かってした女生徒の足をすくって転ばせた。

田舎育ちのチェリシラが負けるはずない。

ガン!

すごい音がして、女生徒は倒れ込み、したたかに肩を打ったようだ。

「痛い!」


「先生、見ましたよね。正当防衛です」

チェリシラは教師と学年主任を見るが、二人は目配せをしている。


豪華なドレスといい、権力者の娘か、とチェリシラは察する。ジェネヴィーブほどではないが、チェリシラも頭脳明晰である。ジェネヴィーブと行動を共にしていると、自然に知識が身に付くのだ。

それに泥棒猫の妹と言った、ってことは王太子殿下の婚約者?

伯爵領に籠っていた姉妹は、貴族の名前は資料で知ってはいても、顔を知らない。


女生徒は床に座り込んだまま、金切り声で叫ぶ。

「お前、私を第1王女ヘンリエッテ・ギレンセンと知っての狼藉か!

誰か、この者を捕まえなさい!」


ああ、愛妾が産んだ王位継承権のない王女か、とチェリシラは知識を総動員する。

「醜い」

大きくはないが、決して小さくない声でチェリシラは言う。

「誰が結婚相手かは知らないけど、こんな醜い心の持ち主の王女なんて、逃げられて当然だわ」

火に油どころか爆弾を入れる発言である。

王に可愛がられてワガママに育ったのだろう。

王の怒りを買うなら、この国を出ればいいだけだ。チェリシラは逃走の算段をする。

さっきアドルマイヤの王子がいたから、あれを頼れば、ああでも、アレステアが追いかけてきそう、と嬉しいような悲しいような複雑である。


「こいつを捕まえなさい。お父様に言いつけてやる」

ヘンリエッテに従う生徒が数人、チェリシラを捕まえようとして、教師がそれを阻止する。


「止めなさい」

教室で暴力は許しません。

学年主任が王女を起そうとし、教師は他の生徒を制止する。


さすが学院の教師、とチェリシラは見直す。

「私への暴力、神が許さないでしょう。

王女、貴女は醜い。

そして姉を冒涜する王女に、私は予言する。報いを受けるでしょう」

チェリシラの叩かれた頬を、アレステアが見たら絶対に報復するだろうからね。ここで羽を出したら気持ちいいだろうなぁ。皆が平伏(ひれふ)すだろうに、と思いながらチェリシラは神妙に言う。


キン、教室の空気が、冷たいようで刺すように澄み渡った。


教師も生徒も一瞬の事だったが、目を見張る。今のは何だったのか?

学年主任は、姉の編入試験の異常さばかり目についたが、この妹も普通ではないと悟る。

王女より優先すべきは、この姉妹だ。


「王女サマ。王様に言うなら言えばいい」

ファーガソン公爵家を筆頭にした高位貴族は、王太子グラントリーを支持している。

それら全部を敵に回して王が王女を庇うとは思えない。


「ゼノン殿下に色目を使ったお前の姉が悪いのよ!」

学年主任に手伝ってもらって立ち上がりながら、ヘンリエッテが怒鳴りながら睨む。


「え? あの人の事言ってたの?

断ったって言ってたけど、これじゃ当然よね。

断られても結婚するって思ってたの、バカじゃないの?」

チェリシラ、正直すぎる。


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