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天使の誕生

前作を完結してから、長くお休みをしてましたが、連載開始です。

楽しく読んでくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

医師に呼ばれて産室に入ったジェファーソン・ダークシュタイン伯爵は目を見張った。

生まれたばかりの赤子はあまりに異様な姿をしていたのだ。

真っ白の羽が生えている、伝説にある天使の姿そのもの。

伯爵家の始祖は天使だと伝承はあるが、天使のように美しい姿の貴人であったのだろう、と思われていた。

天使は誰も姿を見たこともなく、教会の絵にあるだけの想像のものだからだ。


産室の中は、驚愕で部屋の片隅に集まっている産婆と医師。

出産後のポーラ伯爵夫人は、自分の横に寝かされている我が子の羽を撫でている。

ジェファーソンは、ベッドに近づくとポーラの額にキスをした。

「ポーラ、よく頑張った。間違いなくダークシュタイン伯爵家の子供だ。

先祖返り、我が伯爵家は天使の子孫だという証だ」

ジェファーソンの言葉にポーラから涙が流れ落ちた。羽を持つ子供を産んだことで、とてつもなく不安だったのだろう。ジェファーソンは、ポーラの涙を指でぬぐった。


「この子は私が守るわ。弟ですか?妹ですか?」

その声の持ち主はジェファーソンの横で、赤子を覗き込みその手を握っている。


「女の子よ、貴女の妹よ。ジェネヴィーブ、お願いね」

ポーラが答えれば、ジェネヴィーブと呼ばれた女の子は笑顔になり頷いた。

まだ2歳というのに言葉が堪能で、ジェネヴィーブは聡明であった。ポーラは、天使の子供が生まれてわかった。ジェネヴィーブも普通ではない、二人とも特別なのだ。

「きっと綺麗な女の子になるわ」

ポーラが二人の我が子に微笑めば、ジェファーソンが、ゆっくり休めといたわる。



赤子はチェリシラと名付けられ、伯爵領で隠すように育てられた。

出産に立ち会った医師や産婆たちには箝口令として大金を渡したが、羽があるのを秘密にするために屋敷から出すわけにはいかなかった。

成長とともにチェリシアは羽を隠せるようになったが、興奮すると羽を出してしまうのだ。

それも10歳になるころには、完全に隠せるようになった。

だが、興奮しないように表情を抑えるくせもついてしまっていた。

チェリシア自身には何の力もないことがわかった。ただ羽があるだけで、飛ぶことも出来ない。


だが、その白い羽が問題である。

チェリシラが羽を広げて、「この国は(ほろ)ぶでしょう」

と言えば、誰もが信じるのは間違いない。本当に国が滅ぶほどの恐慌になるかもしれない。


だから、チェリシラが羽を自由に隠せるようになっても外には出さなかった。虚弱体質で外の空気に耐えられない、と言い張った。


それでも、完全に隠す事はむずかしい。

チェリシラは、領地の伯爵邸で限られた使用人のみで育てられたが、その使用人が問題だった。


一人の侍女が恋人に話してしまい、幼いチェリシラを拐って逃げようとしたのだ。

『羽のある人間なんているのかよ。本当にいたら、凄い金になる。一生遊んでも余るぞ』

恋人の男性にそそのかされて、チェリシラの口を塞ぎ抱えると屋敷から連れ出そうとした。

ジェネヴィーブが気がついて門を閉ざしたことで無事に保護できたが、信頼のおける使用人だけに任せたことが裏目にでた。

それからは、普通の子供であると見せる為に、少しずつ外に出るようになった。

そうして、チェリシラだけでなく、ジェネヴィーブも能力を隠すことを覚えた。


ジェネヴィーブは言葉を話すのが早かっただけではない。文字も直ぐに覚え、4歳の頃には王国歴史伝を読破していた。

そして、言語や科学、多方面に才能をみせ、領地の各地で気候を観測して、冷夏と干ばつを予想した。

周りが災害に苦しむ中、ダークシュタイン伯爵領はジェネヴィーブの進言で十分な備蓄を用意してあり、被害を最小限に抑え、農地の改革と農作物の品種改良にも着手していた。


チェリシラは、ジェネヴィーブを手伝っているからこそ思うのだ。

姉は領地にいるより、王都の学院に通って才能を披露すべき人だ。私の為に、目立たないように領地にいるのは間違っている。

きっと姉の才能は、たくさんの人々を助けるに違いないのだ。

領地の冷害を対策して領民を助けたように、国中の人を助けられる。

姉は賞賛されるにふさわしい才能がある。

                                                                                        

読んでくださり、ありがとうざいました。


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