第1話『とりあえずそんなんでいいんじゃね?』
簡単な登場人物紹介です。
第1話では主にこの2人が登場します。
登場人物
車軸 勇志 17歳
生まれながら男の子が好き。幼馴染である彩牙のことを好きであるようだが…?
八王子 彩牙 17歳
勇志の幼馴染でノンケ。
それでは本編です。
拙い部分もあるかと思いますが、ぜひご覧ください。
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『お前、まじでキモいんだよ。』
やめろ…。
『いや、俺、お前のことそんな目で見てないから。』
やめてくれ…。
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「っ…!」
朝の日差しが顔を照らす。
いつものスマホのアラーム音が鳴り響き、俺は目を覚ます。
「嫌な夢見ちまったな…。」
とても寝覚めの悪い夢をみてしまい、1日の始まりがなんと悪いことだろうと思いながら、制服に着替え、朝食を済ませ学校へ向かう。
いつも歩く道は代わり映えはなく、そんな退屈な日々に俺は飽き飽きしていた。
「よっ!」
「おー、彩牙。はよ。」
後ろから唐突に話しかけられ、条件反射的に振り向く。
振り向いた先にはいかにも女子ウケの良さそうな顔立ちが整った男子生徒が立っていた。
「愛しい幼馴染に会えたにしては反応薄くねぇ?」
「朝っぱらから気持ち悪いこといってんじゃねーよ。」
彩牙はよくこんな冗談を口にする。
しかし彩牙は知らない。この冗談がどれだけ俺の心を傷つけ、そしてお前への想いを強くしていってしまっているのか。
「そーいや、ゆう、今日体操服ある?」
「あるけど。」
「わりー。忘れちまってさ、貸してくんね?」
手を胸の前で合わせ、申し訳なさそうな顔で俺をみる彩牙。そんな彩牙の顔に俺はめっぽう弱い。
「仕方ないな。その代わり、今日の昼飯代奢れよ?」
「わかったよ。じゃあまた後で借りに来るからな。」
そんな他愛もない会話をしているうちに学校に着いたようだ。彩牙とは別のクラスのため、彩牙は自分の教室に向かっていった。
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「…。」
代わり映えのしない教室とクラスメイト。
自慢ではないが、俺には友達と呼べる人間はほとんどおらず、クラスの中ではぼっち状態。
初期の頃は俺に話しかけてくる物好きもいたが、6月ともなればそんな物好きはもういない。
「(つまんねぇクラスとつまんねぇ人生。俺ってこんな無意味な生活いつまで続けんだろ。)」
ふとそんな思いが頭をよぎるが、こんな気持ちになるのはきっと彩牙がいないからだと思う。
俺と彩牙は幼馴染で、家が近いということも加えて生まれた病院も誕生日も一緒だった。
物心がついた頃から彩牙はいつも俺の隣にいた。そして俺は生まれながらにゲイであるため、彩牙に気持ちをよせることに長い時間はかからなかった。たが、初めから彩牙に特別な感情を持っていた訳では無い。
中学のときは部活の先輩が好きだったし、高校1年の時は同じクラスの男子生徒が好きだった。
告白をしたこともあったが、こっ酷く振られ暴言を吐かれ、それ以来俺は恋をすることに臆病になってしまった。だから俺は彩牙に想いを伝えることに躊躇している。
「出欠とるぞー。」
勢いよく担任がクラスに入ってくる。
今日も無駄な1日が始まるんだなと思うと眠くて仕方がない。これは今日も睡眠コースだな。
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「ゆう、体操服借りに来た。」
「おう。持ってけよ。」
ゆうが体操服を借りにクラスにやってきた。
それを見ていた周りのクラスメイトが、車軸くんって友達いたんだー、とかアイツが話してるの初めて見たわー、などと口々に話し始める。
たいそう耳障りだったが、そんなことはどうでもいい。
いまは彩牙は目の前にいるんだから。
「さんきゅ。また放課後な。正門のまえで待ってるから。」
「おー。」
「…。ゆう、放課後話したいことがあるから、集まったらそのまんまエムドナルドいくからよろしくー。」
それだけ言うと俺の返事は聞かずに彩牙は教室を後にした。
俺は彩牙が話したいこと、それが一体なんなのか気になって仕方がない。
もしかして俺と同じ気持ちで、それを俺に伝えてくれるのだろうかと淡い期待を持たずにはいられなかった。
早く放課後にならないかな、と胸を高鳴らせた。
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「クーポン509、アイスラテと爽健美茶のSで。」
彩牙がレジで注文を済ませ、商品を受け取り俺が座っているところにもってくる。
俺がアイスラテで、彩牙が爽健美茶。昔から彩牙はお茶しか飲まず、コーヒーやジュースといったものは苦手なようだ。
「それで話したいことってなんだよ。」
ポテトをつまみつつ、彩牙に話を振る。
彩牙は一瞬照れたそぶりを見せながら、俺をみる。
「俺さ、好きな人ができたんだ。」
期待が更に膨らんでいくのが自分でわかった。
そして期待するだけ無駄だという気持ちの俺と期待したい俺の気持ちがぶつかり合いドキドキが止まらない。
「…っ。そうなんだ…。んで、相手は誰なんだよ!俺の知ってるやつ?」
「実は…。」
彩牙が俺の目をみる。無意識のうちに心臓がはやくなっていくのを感じた。
「お前のクラスの委員長の萌ちゃん。」
「えっ…。あ、半澤さん?そ、そうなんだ。彩牙ってあんな感じの女の子が好きなんだ。」
なにかが俺の中で崩れた。
彩牙をそういう目で見ていた自分にも腹が立ったし、一瞬でも期待をしてしまった自分が恥ずかしい。
消えてしまいたい、強く心の中で静かに願ってしまった。
「んでな〜…――」
「…。」
「だから俺は半澤さんの――」
「…。」
「ってわけなんだよ――」
「…。」
「ゆう?さっきから俺の話、聞いてる?」
「ん…?あぁ、そうだな。」
一生懸命、意中の相手への想いを語る彩牙をいったい俺はどんな目で見ていたのだろうか。
彩牙が何を話していても上の空。心配した彩牙が俺の事をいつもの申し訳なさそうな目で見つめる。
「でさぁ、俺、さっき話した告白の仕方がしたいわけよ。どう思う?」
「…とりあえずそんなんでいいんじゃね?」
なにも聞いていなかったというのもあるが、一刻も早くこの場を立ち去りたかったので適当に返事をする。
彩牙の顔を見たくても見れない。見てはいけない。
今見てしまえば想いが溢れてどうにかなってしまう。
「ごめん。俺、帰るわ。」
「え、どうしたんだよ、ゆ―」
最後まで聞かずに店を飛び出した。
少しでも期待した自分が本当に嫌で仕方がない。
なぜ自分だけがこんな思いをしなくてはならないのだろう。
なぜ、自分だけが。
そんなどす黒い感情が支配した。
「はぁはぁ…、あ…雨…。」
急に走り出したせいで息が途切れ途切れになる。
そこに気持ちが呼応したかのように都合よく雨が降り出した。
第1話 『そんなんでいいんじゃね?』END
初めての投稿で緊張しました…!
コメントお待ちしております。
拙くて読みにくくて誠に申し訳ありません!