第9話「再建」
死者は日本だけで約三千万人。日本の人口の約5分のの1が、僅か1年の間に減ってしまった。ちなみに世界規模でも死者は約5億人に登り、全世界でも20分の1の人間がこの世から姿を消した。
クリーチャーとの戦いの後は人による犯罪が多発。あれ程の被害を浴びたにもかかわらず人は愚かである事を辞めなかった。
強盗、窃盗、傷害、放火、強姦等、それに加え頻度としては下がったがクリーチャーの出現も変わらず起こる。
弱り切った国の軍や警察だけでは各所で起こる犯罪やONIの出現に対処しきれなかった。
その現状に国は、各地で僅かに残ったオーバーウェポンやロストネームにも、クリーチャーだけではなく犯罪にも対処する事を要請し協力を仰いだ。
元々オーバーウェポンは軍や警察に属していた者が多かったが、ロストネームは軍や警察に属さない者が多数だった。
そんな生き残りの彼らの中で、国からの要請を承諾した者たちが自警団として犯罪にも対処にあたる事になった。
そして自警団としての活動からより動きやすくする為に警備会社へと姿を変えたのが、
『株式会社ボーダーライン』
現在も国と協力しつつ各地でクリーチャーや犯罪の対処に当たっている。
そして、ボーダーラインは後人の育成も行なっており、5年前に私立高校も設立。対ONIに特化する人材を育成している。
その中でも特に優秀な生徒はインターンとして扱われ、学生の身でありながらボーダーラインでの仕事もする事となる。
クリーチャーが出没してから20年。犯罪こそ減ったが、今でもONIの出現は変わらない。
何故クリーチャーが俺達人間を襲うのかは不明。
様々な人、機関、国が対処にあたっているが答えは20年経った今でも出ない。だけど、答えが出なくても人々が日々危険に晒される現実は変わらない。その現実に対抗する為に俺達は日々戦いに身を投じるんだ。
カタカタとデスクに備え付けられたデバイスのキーボードを叩き、先程の案件の報告書を黙々と作っているとオフィスのドアが開き、女性が入ってくる。
「四鬼ー、お疲れ様。」
「はい。お疲れ様です。先程はありがとうございました美虎さん。」
「いいのよ。チームなんだから。四鬼はもっとお姉さんを頼りなさい。」
女性がそう言うと、その豊満な胸を自分で叩き、胸の服の上からでも胸が揺れるのが分かる。それを反射的に目を逸らしてデバイスモニターの画面に目を移す。
「ありがとうございます。」
本当に美虎さんは俺を男として見てないな。
まぁ俺は、彼女からしたら子供としか思えないよな。
彼女は西尾美虎さん。
この部署の主任だ。年齢は25才。身長168Cm。髪の色は鮮やかな金色。瞳は翡翠の様な緑色だ。親父さんがアメリカ人でハーフ。国籍は日本だ。
元々自衛隊に所属していて、ある案件で当社と共同戦線を張った際にスカウトをされて入社したらしい。
本人は規律が厳しい自衛隊より、ある程度の自由があるボーダーラインを選んだと言っていた。
美虎さんはロストネームで風使い。分類で言うとシャーマンに入るらしい。
風を利用して常識を超えた威力と正確無比な射撃が可能なスナイパーが美虎さんのポジションだ。
確か最大で3000mの距離からクリーチャーの群れを1人で一掃した事もあるらしい。いつも遠くからではあるが、戦場で必ず助けてくれる頼れる上司だ。
「あれ?報告書また四鬼が書いてるの?」
やれやれと言った表情を美虎さんは俺に向ける。その後に背後から声がした。