第5話「殲滅」
「はぁ〜またか、、、。ヒメの奴。」
少年は溜息をつく。まるでこの状況に動じていない。
「逃げよう!早く、はや」
少年に言うが、俺が言い終わる前に食い気味で
「大丈夫ですよ。」
と少年は笑顔で告げ、先程まで連絡を取り合っていたデバイスを取り出し操作を始める。
こんな時に何をやってるんだ!?こっちが考えてる事など何も気にせず少年はデバイスの操作を続ける。
そうすると―――
「コードカクニン。ロックカイジョ。オンセイニンシキヲオコナイマス。」
デバイスから機械合成音が聞こえる。その声に対して少年が喋りだす。
「能力開放。タイプβ。」
「ニンシキシマシタ。ブリングアウトアビリティ。スタンバイレディー。」
その直後に少年の髪の色と瞳の色が赤色に変わり始める。
今までの黒い髪色に黒い瞳だったのが嘘のように。
「カウントダウンスタート。ゴブウンヲ。」
デバイスからの合成音が止むとそれをそのまま服の中へ納め、髪と瞳の色が金色に変わった少年はこちらに向かってきている少女に向かって叫ぶ。
「ヒメ!一瞬でいいから動きを止めろ!」
「分かったー!」
少女は急ブレーキをかけてその場に止まる。
そして同時に腰にある刀に手を添えて、振り返り化け物と対峙する。
「一瞬だけだからね!」
そう言うと刀を抜き身構える。
「ふっ!」
光の線の様なものが化物の体に沿って何本か見えたと思ったら、化物は緑の液体を線になぞって垂らす。
一瞬化け物がよろめき動きを止めたが、直ぐに体制を立て直し叫び声を上げる。
「後は頼むよ!シキ!」
少女は斬撃の後にこちらに向かって走り出す。
入れ替わる様に少年がそのまま化け物に向かって走っていく。
そして高く飛び上がり両足を揃えて畳み、化け物に向かって思い切り伸ばす!
「ドロップキック!?」
思わず口にしてしまった。あんな化物にプロレス技が効くのか?
少女とは言え、1人の人間が刀を切りつけたのに化け物は少し足を止めただけだった。
そして、今少年が繰り出したのはドロップキックだ。ただ両足をそろえて蹴っただけだ。
それなのに、、、、化物が先程より大きくよろめき足を止めた、、、?
ドロップキックを繰り出した後に少年は空中で一回転し綺麗に地面に着地する。
その勢いを利用してもう一度高く、高く空に飛び上がリ、よろめく化け物の肩に飛び乗る!
それは化物が少年を肩車している様な態勢だ。まるで休日に公園で父親が子供にするように。
少年はその容姿に似合わない笑みを―――いや、
"無邪気な年齢相応の笑顔"を浮かべ―――
「喰らえ!リバース・フランケンシュタイナアァー!!!」
そう叫ぶと、両足を化物の首にガッチリと巻き付け背後にバク転の様に勢いよく倒れこむ!
それと同時に化物の巨体が浮き上がる!
そして、信じられないがあの巨体が、半回転して頭部から肩口までが地面に突き刺さる!
ドガーン!!!!
凄まじい程の衝撃がアスファルトにかかり、化け物が刺さった場所を中心に陥没する。化け物は微動出せずに真垂直に地面に刺さっている。
少年は何事もなかったのようにその場で立ち上がり辺りを見回す。
「良し。これで終わりかな?」
「タイムオーバー。アビリティヲロックシマス。」
また機械合成音が聞こえると少年の赤色の髪と瞳が黒に戻っていく。