第31話【背景】
「とゆー訳みたいです。」
事のあらましを南から聞いたけど正直に驚いた。
「これは派閥争いか?」
そのまま南に聞くが南は分からないと言った感じで両手を上げて首をふるジェスチャーをする。
「分からないー。そもそもそんな事が起きて良いの?ねぇ、四切。」
納得がいかない姫の表情を見ていた俺が溜息をしながら答える。
「姫が言ってる事は正しいけど、それだけじゃないのが世の中なんだろうな。」
冷静な台詞を姫に向けつつも俺自身内心怒りに満ちていた。
「正直言って、私達学生にはわからない事だらけですねー。」
南が呆れた感じで話しかけてくる。ここに居る誰もが納得はしていないようだった。
「ごめんなさい。2人に愚痴っても仕方ないよね。」
「いいんだよ。それが姫の良いところなんだから。」
「そうですよー。納得行かなきゃ行かないってちゃんと言うのも大事なことです!」
姫に俺と南でフォローを入れる。ちょっと照れ臭そうに姫も笑顔を取り戻した。
取り敢えず本社に麻くんを無事に届けないとな。
「麻くんも大丈夫かな?」
「はい。人形に乗るとは思いませんでしたが。」
南と合流してから麻くんはドールに運んでもらっている。周りにも数台のドールを展開して警戒は怠らない。南の得意分野だな。
「それにしても、子供も巻き込んでんのか、、、。利権争いは怖いな。」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
あっ、しまった。気を遣わせる事を呟いてしまった。思わず口から溢れちゃったか。
「いいや。さっきも言ったけど君が謝る事は何も無いよ。強いて言うならお互いに立派な大人になろうって事だよ。」
「おっしゃる通りですね。精進します。」
何処までも真面目だな。この子が大人になる頃には俺もちゃんとしてたいもんだ。さてと
「南、俺達はこのまま駅に向かって本社に戻れば良いんだな?」
「そうです。保護を最優先で任務を遂行しろって言ってました。」
なら後は安全に戻るだけか。
「OK。なら先頭はこのまま俺が、殿は姫が抑えてくれ。麻くんを中心に置きつつ南はその周りの警戒をしてくれよ。」
「うん!」
「はい!」
2人が返事を同時にする。よしこのまま本社まで戻るか。
美虎さんの方は南が言った通りならどんな事になるのか、ちょっと想像もつかないな。
とりあえずはターゲットを無事に届けるのが俺たちの任務か。後はあの人達が片付けるだろうしな。
それにしても、大人達の方は一体どうなっているんだ?ボーダーラインの中でもこんなことが起こっているなんて信じたくはないけど手を取り合うっていう事はそんなにも難しいことなのか?
そんなことを考えながら駅に向かうのだった。