第1話「現実」
大体1000〜1500文字位で毎日書いていこうと思います。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
走る――走る――走る――
アスファルトがめくり上がり、割れた道路を一心不乱に。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
走る――走る――走る――
ボロボロに崩れ、鉄骨がむき出すビル群に脇目も振らず。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
走る――走る――走る――
煙が上がり悲鳴が聞こえる街を、自己最速のスピードで。
「はぁ、はぁ、はぁ、クソっ、、、!」
逃げる――逃げる――逃げる!!!
あの醜悪で、不快な臭いを撒き散らす、人間を食らう異形の化物から!
「はぁ、はぁ、はぁ、な、、なん、で、、だよ!」
来るな!来るな!!来るな!!!
死にたくない!死にたくない!!死にたくない!!!
死にたくないんだ!!!!!
「た、助けて!はぁ、はぁ、はぁ、」
どれ位走ったかもう分からない!ひたすらに走り続けてもう、まともに息も出来ない!!
「頼む!誰か!誰でもいいから!!!助けてくれ!!!死にたくないぃぃー!」
残った全身の力を全て振り絞り助けを呼ぶ!
だが―――。
ザンッ!!
背後から何かを蹴り上げるような音が聞こえ、俺の事を追いかけ続けて来た化物が、目の前に急に現れる。
いつでもこの様に出来たと言わんばかりに、耳障りで恐ろしい笑い声を上げながら。
皮肉にも自分の絶叫に答えたのは、誰でも無く今迫り来る化物自身だった―――
限界を超えて走った状態で急停止が出来る訳もなく化物に全体重をかけて体当たりをする感じになった。
「がっっっつ!」
出した事の無いような変な声を出して、体はその場所から弾かれ吹っ飛ぶ。
地面と触れ合いながら自分の体は止まり、そのまま仰向けに倒れてしまう。
「げほぉ!げほ!げほ!」
あれだけ走った。当然息は整わない。しかも化物に突撃した衝撃と吹き飛ばされ、地面に身体を擦り付けた痛みで意識が飛びそうになる。
何とか上半身だけでも起こしてみると化け物は、先程浮かべた笑みのままゆっくりと近付いてくる。
皮肉な事に、意図しない体当たりは結果的に全力攻撃だったのだがまるでダメージを与えていない。
「はぁ、はぁ、はぁ、来るな、来るなよ、、、。」
そんな言葉を発しても、当然ながら状況は何も良くならない。
化物はニタニタと笑い、涎を垂らしながら近づいてくる。死が迫って来るのを実感する。
それでも諦められない。死にたくない!死にたくないんだ!まだまだやりたい事が一杯あるんだ!
痛みを抑え、ふらつきながら立ち上がり、あらん限りの絶叫を再び放つ。
「頼む!!誰か!!頼むから!!何でもするから!!誰か助けてくれーーーーー!!!」
頭では理解していた。誰も助けてくれない。この荒廃した街で助けてくれる存在は居ないのだと。 だけど心では認める事はしたくなかった。
ただ、頭の中では自分自身が最悪の答えを回答として用意しているのも分かっている。
最後の時がひたひたと近づいてくる。
既に目の前にまで来た化物は鋭い爪を持つ両の手で俺の肩を掴み動けないようにする。
「痛っつ!は、離せ!離せよ!!!」
そのまま化物は、俺を持ち上げ、口を大きく開き、不快な臭いを撒き散らす。俺を頭から食べようとしている事は理解出来た。
「嫌だ!嫌だ!嫌だあぁぁぁ!!助けて!!だ、誰かあああぁぁぁーーー!」
身体の箇所で動く所を渾身の力で動かすが、何の抵抗にもなっていない。
「やめてくれぇぇえぇー!!!」
これが俺の本当に最後の絶叫なんだろう。そして、目の前が不快な匂いと共に暗闇に覆われた。
ああ終わるんだと、やっと心が諦めた時に俺は抵抗を止めた。