夏のはじまり。
くわぁぁぁ。って、大きな欠伸。
うぃっしょ。って、背伸びして、その腕が後ろを通った女子に当たる。
ああ、ゴメン。と、片手で謝った。
もう片っぽの手は、カバンの中。
取り出したのは、パンパンなビニール袋。
あ。
チョココロネ。
「アオ。お前、痩せた?」
セージはよく食べる。
いま食べてるメロンパンで、4個目。
残るはチョココロネ、1個だけ。
セージは甘甘甘甘党。
「どーだろう。わからない」
ボクは、セージが顔を顰めるほど嫌いっていう豆乳を飲む。
フツーのやつ。味の、ないやつ。
「何か青白い。夏バテ?」
「・・・違うと思うけど」
暑いのは苦手だけど、よく、外で遊ぶし。
でもやっぱり苦手。
寒いくらいの方がいいな。
マフラー巻いて、手袋して、ニットの帽子を被って。
ギューッ・・・て、嶋子ちゃんと抱き合うんだ。
きっと、温かい。
「シマちゃんって、期末中だっけ?」
「・・・うん。でも明日で終わりだから」
いますぐ、会いたい。けど、会えない。
明日、会えるから。
あと1日の我慢。
だけど、ボクの心臓は悶える。
どうしてここにキミがいないんだろう・・・
「あのね?たかが4日間、会わないくらいでそんな暗くなってどーすんのよっ」
「うおぅ、シヅノ」
ガタンッと椅子が鳴る。
セージの見上げてる先に、威圧的に立ちはだかる女の子。
ドサリ、と机に置かれた重量感のあるお弁当箱。
「びびるだろっ。いきなり近づくなっ」
「びびるよーなこと喋ってたわけー?私には嶋子、嶋子って泣いてるよーに見えたけどー?」
・・・泣いてないよ。
泣きそうな気分ではあるけど。
シヅノは、セージと似て柔らかく明るい髪の毛をサラリと靡かせて椅子に座る。
重箱を思わせるお弁当箱を広げて、シヅノは一瞬箸を迷わせて、卵焼きを突き刺した。
「今から昼メシ?何してたの、お前」
「誰かさんが異常なほどオチてるお陰で、勘違い女子のみなさんに捕まってたの。・・・はい、あげる」
ああ。と、セージは頷いたけど、ボクにはさっぱりわからない。
突き出された真っ黄色の卵焼きを、一口、食べた。
甘い、甘い、フワフワな卵焼き。
嶋子ちゃんの卵焼きはもっと、しょっぱかった。
・・・早く嶋子ちゃんの卵焼きが食べたいな。
「花柄のシュシュを恥じらいもなくつけてるこの男のどこがいいんだか」
「まったくなぁ・・・」
「アオっ!しっかりゴハンくらい食べなさい!嶋子に会う前に倒れるわよっ」
「お前はかーちゃんかい・・・」
「アンタはチョコ食べ過ぎっ」
もうすぐ、キミと一緒の夏が始まる。




