おさげ。
嶋子ちゃんの髪の毛は色素が薄い。
ハゲるかもしれないって、キミは泣いたことがあった。
その時ボクは、ハゲても好きだよって言ったけど、キミはホッペを膨らませたんだよね。
「アオー?何笑ってるの?」
夢中になっていた絵本から顔を上げて、嶋子ちゃんは眉を寄せてみせた。
その眉毛も、少し茶色。
「うん。三つ編み、好きだなって思って」
「そうなの?」
「そうみたい」
嶋子ちゃんの髪を2つに三つ編みにすると、シッポみたいになる。
でも、それは内緒。
きっとしてくれなくなる。ボクはそれが好きなのに。
片方のシッポを撫でるボクを、キミは不思議そうに見上げる。
パチパチ、パチパチ。
大きな瞳を、瞬き、4回。
あ、その顔は、もしや・・・・
「じゃ、アオにもしてあげるっ」
「えええ・・・」
嬉しそうに跳ねて、嶋子ちゃんはボクの後ろに回った。
「きっとアオも似合うよ」
細い指が、真っ黒でゴワゴワしてるボクの髪を梳いていく。
キミはボクの知らない歌を口ずさむ。
ボクのお腹の虫はキュルキュルと鳴く。
短い歌を4回繰り返して5回目の途中、キミは手を止めた。
「出来た。フフ、かわいいー」
かわいいって、ボク、オトコだよ?
「どうー?気に入った?」
小さな手鏡に、映る三つ編みされたボク。
「・・・ちょっと痛い」
「だって短いんだもん」
キツキツに編まれたボクの髪の毛は、アッチコッチに逃げるように飛び出してる。
手触りも、ザクザクしていいものじゃない。
やっぱりボクは・・・
「嶋子ちゃんの三つ編みの方がいいよ」
「えー」
・・・そんな残念な顔をしても、もうしないよ、三つ編みなんて。
だから今度、髪の毛、切っちゃお。
「ほどいていい?」
「ダメ」
「え・・・」
「ほどいたら、ゴハン作ってあげない」
えええ、そんな・・・
朝からキミが仕込んだカレーは、まるで隠れきれないシッポのようにいい香りを漂わせている。
ボクのお腹の虫は楽しみにそれを待っているのに。
キュルキュル、キュルキュルって。
「作ってあげないよー?」
「・・・わかった、今日だけ、我慢する」
満足気に頷く、嶋子ちゃんの三つ編みが揺れる。
ボクの三つ編みも揺れればいいのに。
「アオ、お揃いだね?」
ザクザクでチクチクの三つ編みに触れたキミ。
ボクは笑って、頷いた。




