帰り道、公園で。
沈丁花が、薫る。
「アオー」
「うんー?」
「何描いてるのぉー?」
「嶋子〔シマコ〕ちゃん」
「下手っぴ」
「・・・」
そうかな?
ボクはまじまじと地面に描いた嶋子ちゃんを見る。
まぁるい顔、揃えた前髪、両側の三つ編みにはリボンもつけた。
何が足りないんだろうか?
むむむむむ・・・
首を捻って呻るボク。
ラララララ・・・
キミは、優しい歌を口ずさむ。
「ねー、アオー?」
「・・・うんー?」
「ここに、来てー?」
カンッ・・・、カンッカンッ・・・
さび付いた手摺り、滑り台のてっぺん。
嶋子ちゃんは身を乗り出して、巨匠アオ先生の絵画をのぞき込む。
ホッペにふたつ、マルを描いたの、正解。
なのに「全然、似てないよー」って、キミが言うから、ボクはちょっと悲しくなる。
だってさ。
「それじゃ、ボクは、嶋子ちゃんじゃない子にキスをしてるってこと?」
滑り台の下。
キミの隣には、ボクがいて。
たくさんのハートと、たくさんのキスを贈る。
それは、キミだけの特別。
「やだ、ダメ」
「うん。ボクもやだ。だから、あれは嶋子ちゃんだよ」
「でも、アオも似てない」
「・・・」
じゃ、あれは、嶋子ちゃんとボクの・・・ものまねさんってことで。
ものまねさんを真似て、ボクはそっと、キミにキスをした。
揺れる三つ編み、ひるがえるスカート、舞い上がるハート、ハート、ハート。
キミは笑って滑り下りた。
沈丁花が、零れた。




