大魔導士発見?
リーリアはその後も何人かに聞き込み調査を続けたが、どれもリーリアの知っている情報ばかりで、役に立ちそうなものはなかった。
リーリアが次に話しかける人物を探していると、アレンが戻ってきた。
「ごめん、リーリア。ずいぶん待たせてしまって」
「いえ、構いませんわ」
「予定が長引いてしまったから、もうダンスの時間も過ぎてしまったね……すまない」
「いいえ、大丈夫ですわ」
「そうか……ところでリーリア。仮面のご子息とのダンスは、楽しかった?」
「え?……あの、ええと……」
アレンはリーリアに一歩近づいて、リーリアの瞳を真正面から覗き込んで、言った。
「ああ、勘違いしないで。もちろん君が誰と踊ろうと君の自由だ。だけど、リーリアがあの男とあんまりにも楽しそうだったからね。つい、妬いてしまったんだよ」
アレンは確かに微笑んでいるのに、どこか冷気を感じさせるような表情で。
リーリアからすれば、他の異性とよろしくやっているのはむしろアレンの方なのだが、アレンの雰囲気に飲まれてしまったのか、なんだか今すぐ逃げなくてはいけないような、そんな危機感を感じた。
「その……ひ、久しぶりに体を動かしたものですから、楽しかったのですわ。それに、流れていた曲がわたくしの好きな曲でしたの!」
「そうだったんだね。君が楽しそうで、僕も嬉しいよ」
(あら……?いつものアレン様だわ。あの妙な威圧感は一体なんだったのかしら?きっと、あの失礼な方のせいで、普通の判断ができなくなっているのね。今日は勝負の日なんだから、しっかりしなければ。……それにしても、アレン様はミシェル嬢と談笑なさっていたはずだけど……わたくしの様子にも目を光らせていた、ということかしらね。まあいいわ)
「アレン様。ダンスの時間が終了したということは、これから魔力査定が行われるのでしょうか?」
「ああ。ほら、ちょうど準備が整ったようだよ」
リーリアがアレンの指差した方向を見ると、ダンスフロアの中央に、大きなクリスタルが載せられている台座が運び込まれていた。そしてその周辺に、マントを身につけた、魔導士と見られる人物が数人立っている。
(わたくしの勘も、あながち間違いではなかったのですわ。やはり魔導士はマントを着ているのね)
クリスタルの周りに立っているのは、五名ほどで、背中に魔導士のものと見られる紋章が刻まれた、金の刺繍が入った濃紺のマントを身にまとっている。
そしてそのクリスタルから少し離れた場所には二人の人間がいた。
立っているのが、青い長髪を1つに束ねている整った顔立ちの男性で、座っているのがフード付きのローブを身につけた、白髪の高齢の男性であった。
その年配の男性が周囲に指示を出しているのを見て、リーリアは確信した。
(あの座っていらっしゃる方が大魔導士様なんだわ……!やはり、大魔導士様はご年配の方と相場が決まっているものね)
そんな相場はないのだが、ずっと探していた大魔導士を見つけた喜びで、リーリアは少々冷静さを欠いていた。
リーリアが心の中で舞い上がっていると、青い長髪の男性が話し始めた。
「紳士淑女の皆様方、本日は魔導会主催の魔力査定にご協力いただき、誠にありがとうございます。皆様は順番に、こちらのクリスタルに手をかざしていただき、少々魔力を流していただくだけで結構でございます。お一人ずつお名前をお呼びしますので、それまではどうか楽になさっていてください」
話している男性の美しい容姿に、何人かのご令嬢が頬を染めて見惚れていたが、やがて人々はだんだんとフロアの周囲に散らばっていった。
「さて、僕たちも名前が呼ばれるまで端の方で休んでいようか」
「はい」
会場に残っている全員が見守っている中で、1人目のご令嬢がクリスタルに向かって手をかざした。すると、クリスタルは白く輝きだし、そしてクリスタルの表面になにやら、エンブレムのようなものが浮かんできた。
「あれは、風の絵?風の属性……ということでしょうか?」
「ああ。そのようだね」
(なるほど。魔力をあの石に注ぎ込むだけで、簡単に属性の判別が出来てしまうのね)
その後、何人かの魔力査定を見ていると、クリスタルの輝きの強さにも個人差があり、それはどうやら持っている魔力の強さと比例しているようだった。
「次は、アレン・レオナルド・ラトレイア様」
「僕の番か……行ってくるね、リーリア」