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公爵令嬢のとんでもない勘違い  作者: 夏の柴犬
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公爵令嬢、街へ行く


 出かける支度ができた母、姉妹の3人にマリーも同行し、一行は馬車に揺られ、屋敷から少し離れた街に向かっていた。


 マリアは街に出かけるのはこれが初めてのようで、見えてきた景色に大興奮で馬車の窓に張り付いている。


 久しぶりに訪れるリーリアも、思わずその景色に目を奪われた。


 それもそのはず。目的地の街は国内でも指折りの大きな街で、数々のお店が屋根を揃えて並び、大通りには遠方からやってきた人も多く行き交っている。


 到着した馬車を降りるなり、マリアは至る所にきょろきょろと目線を向け、あまりの情報量に目が回りそうになっている。


 その可愛らしい様子を見てリーリアは微笑んだ。


「マリア、今日はあなたの行きたいところについていくわ。どこか行きたいところはある?」


「行きたいところ…うーんと、うーんと……」


 必死になって考えているものの、どこに行ったらいいのか分からないという顔をしているマリアに、リューネが優しく声をかけた。


「マリアはお花が好きだったわよね。まずはお花屋さんに行くのはどうかしら?」


「うん!お花屋さんにいく!」


 街で1番大きな花屋には、色や形、大小さまざまな花々がずらりと並べられていた。その鮮やかな色彩は、見るだけで心を潤していくようだ。

 マリアがリューネと共に、屋敷の庭の一角に植える花を選んでいる間、リーリアも店内を眺めていると、不意にマリーが話しかけてきた。


「そういえばお嬢様、朝食の際のお話を伺って、一つお耳に入れておきたい話がございます」


「何かしら?」


「魔導会はほとんど貴族と関わらない、とのことでしたが、一方で街の人々にとって魔導会は、それほど縁遠いものではないようです」


「あら、そうなの?」


「はい。私自身、最近大通りを歩いていた際に、魔導会について商人が何やら話をしているのを耳にいたしました」


「では、街を拠点に活動しているのかしら…?」


「少なくとも、街で何らかの活動を行なっていることは間違いないでしょう」


 マリーからの情報に、もしかしたら街での調査が有効なのでは、と考えたリーリアは、そこでふと思い出した。


(昨晩はつい何も考えずに帰ってきてしまったけど、そういえばわたくし、魔導会がどこでどんなことをしているのか、分からないままじゃないの…)


 自分から連絡する手段が無いということに気づいたリーリアは額に手を当て、ため息をついた。


「マリー。わたくしとしたことが、昨晩魔導会への手紙の宛先も聞かないまま帰ってきてしまったわ……お願いがあるのだけど、せっかく街に来たことだし、この周辺で魔導会の情報を集めるのを手伝ってくれないかしら?」


「かしこまりました、お嬢様」


 店内を見渡すと、マリアとリューネはまだ花を選んでいる途中のようであった。


「お母様、せっかく家族3人で出かけることが出来ましたのにこのようなことをお願いしてしまい申し訳ないのですが、少し調べたいことがあって……マリーと2人で別行動させていただけないでしょうか?」


「あら!別に構わないわ。でも日が暮れる前には帰っていらっしゃいね」


「はい、お母様。マリアもごめんなさいね、楽しみにしていてくれたのに…」


「大丈夫です!マリア、おねえさまにおみやげ買って帰るわ!」


「まあ…では楽しみにしているわね?」


「うん!」


「では、奥方様、マリアお嬢様もお気をつけて」



 2人は花屋を出て、大通りを歩き始めた。


 しばらくは魔導会を知る人物がいないか、人々の会話に耳をすませていたものの、やはりそう簡単に見つかるはずもない。


 そこで2人は、いくつかの店に入って直接聞き込みを開始することにした。


 まず最初に話を聞いたのは、露店で香辛料を売っている恰幅の良い女性だ。


「あの…すみません。わたくし、魔導士の方を探しているのですがなかなか見つからなくて…何かご存知だったりしないでしょうか?」


「……ああ、すまないが何も知らないよ。悪いが他を当たってくれ」


「そうでしたか…すみません」


 しかし、次に訪れたパン屋の主人も、


「…ん〜知らないねえ。ご令嬢様の力になれず申し訳ない」


 また、他の店でも、


「え?ああ…いや、すまねえが何も知らねえんだ」


「悪いね、お嬢ちゃん。力になれなくて」


「いや、俺は何も。それはそうとお客さん、うちのりんご買っていないか?ほら、これなんか良い色してるだろ?」


 行く先々で、皆が口を揃えて知らないと言う。

 訪れた店が20を超えたところで、ついに2人は立ち止まった。マリーはりんごの入った袋を抱え直した。


「お嬢様、このまま聞き込みを続けますか?」


「いえ、これ以上続けてもきっと同じ結果だわ。…それに何となくだけど、皆何かを知りつつも、それを話さないようにしている気がするのよね」


「私も同意見です」


「さて、これからどうしましょうか」


 2人が他の方法がないか考えを巡らせていると、突然、怒鳴り声が聞こえてきた。


「おい、クソガキ!うちの商品を返せ!」


 リーリアたちのすぐ横を、ボロボロになった麻の服を着た少年がバゲットを抱えて走り去っていった。


 それをパン屋の主人と思われる男性が追いかけていくのを見て、リーリアはマリーが持っていたりんごの袋を抱えた。


「追いかけるわ。ついて来て」


「かしこまりました」



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