プロローグ
「あんた、大変なんだよ!
熱が全然下らなくて!
顔は真っ青だし!
この子!死んじゃうよ!!」
父親は慌てながら赤ん坊を車に乗せると、一番近くの救急病院に急ぎました。
病院に着き母親は救急外来の受付で真っ青になる赤ん坊を見せると、その場に泣き崩れてしまいました。
医師や看護婦達も赤ん坊が緊急な容態である事を察しすぐに診察に入りました。
その後、暫くして父親が診察医から呼ばれると病名を急性腸閉塞と告知されたのです。
医師の説明によれば、この病気は主に下腹部を強い衝撃で打撲する事が原因で起こり腸がネジ折れてしまうと言った珍しい病気でした。
しかし、そのまま放置してしまえば腸が内部で膨張し、最悪は破裂を起こし腹膜炎までになってしまう末は命に関わる様な
とても恐ろしい病気だと伝えられたのです。
原因は衝撃以外にストレス性で発症する事様ですが、こんな小さな赤ん坊がストレスで発症する事は考えられないので、事態は極めて稀な事でした。
また、最悪な事に腸は破裂寸前で一刻を争う程、切迫していたのです。
この話を医師から聞いた時、父親は衰弱している我が子を見て生命の危機を覚悟しなければならないと感じました。
そして、待合室で不安そうに泣き崩れる妻の前に立ち、医師から言われた通りの状況を告げました。
父「落ち着いて聞くんだ…
医者は最善を尽くしてくれるが99%助からないと思った方がいい…
俺達に出来る事は残りの1%…
この子の生命力に賭けて信じるしかない…
それでダメだった時は… ダメだった時は…
無念だが… 諦めるんだ…」
目を真っ赤にして話す父親を前に母親は泣き崩れました。
〜そして、まもなく手術中のランプが灯火し真夜中の緊急手術が始まったのです〜
必死で両手を合わせ祈る母親…
少し離れた待合席で目を閉じて動かぬ父親…
それから、長く辛い時間が過ぎ、ようやく手術中のランプが消灯しました。
【ガチャ】手術室の扉が開きました。
父母「先生!」
二人は医師に縋る様に声を震わせ、同時に呼びかけました。
医師「大丈夫ですよ、手術は成功しました。この子の恐ろしく強靭な生命力に私も正直、驚きました。きっと今晩が峠になります、後はこの子の生命力を信じて祈りましょう。」
両親は医師に無言のまま深々と頭を下げると二人の涙が床にボタボタと落ちました。
医師は母親の肩を二度ほど軽く叩くき、父親の顔を見て軽く会釈をして去りました。
その後、集中治療室で横たわる我が子を見守りながら二人は朝を迎えました。
赤ん坊の身体は、まるで戦時中の飢えで死んでしまった子の様に骨と皮だけになっていましたが無事に峠を越える事が出来たのです、そうですこの子は見事に奇跡的に助かったのです。
それから、赤ん坊は驚異的な速さで回復し無事に退院する事が出来ました、お腹には12センチほどの痛々しい傷後が残りましが元気に笑える様にまで回復していたのです。
そして、あれから7年の月日が流れました。
母「ヒカルー!、寄り道するんじゃないよー!」
光「うん! 行ってきまーす!」
この子は命を勝ち取り、名の如く元気に光り輝いていました。
でも彼の人生は決して、幸せな道のりを辿るものではなかったのです。