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異世界流しに遭った私の異世界生活  作者: プニぷに
第一章:新世界
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8A:それぞれの過去『医者』

~とある町の伝説の殺し屋に取材したときの資料より~ 


 俺の名は『死道 殺気(しどう さつき)

 俺はこの薄汚れた世界の、どす黒い町の医者。

 俺は金さえもらえばどんな患者も助ける『医者』……いわゆる『闇医者』なわけだが、俺は殺し屋でもあるんだ。


 え? 何故殺し屋もやってるかって?

 ははは、そんなの簡単さ。

 殺し屋もやることで『金になる』からだよ。


 いや、医者の方が金はもらえる。

 ……分からないって顔だな、なぁに簡単だ。俺がターゲットを殺すだろ、当然(とうぜん)殺される側だって自分を守るために仲間を集めるわけだ。

 その上でターゲットを殺すとどうなるか?けが人や重症の患者が出来る。俺はいつも顔を隠してたからな、俺がお前らの(かたき)とも知らずにのこのこ俺の手によって治療されるってわけだ。


 俺はターゲットを殺した報酬とターゲットの為に傷ついた連中の医療代でウハウハさ。

 



~近頃の殺し屋は『超能力』を持っているとの噂ですが、それについてはどう思いますか? ~


 お~ついにあんたらみたいにな()()()()じゃない連中にもその話が来てるんだな。


 ああ、本当だよ。


 どんな奴にあったか? ……そうだな、すげえ遠くからでも眉間を狙ってくるスナイパーとか、相手の目を自分の目に釘付けにさせる能力を持ったエロいねえちゃんとかいたな。


 ……あ? 一番てこずった相手?


 ――やっぱり透明になれる能力を持った戦闘狂の少女かな……そいつは洗脳されていてさ、やりたくもないこといっぱいやって、やっと生きていけるようになったんだ。時代の闇ってやつさ。



 ははは、今更な質問だな。それじゃあ記者失格なんじゃないのか?

 そんな強敵と渡り合って今も生きている理由なんて一つしかないじゃないか。


 俺も『()()()()』なんだよ。

 にいちゃんはラッキーだ。なんせ、誰も見破れなかった俺の能力を俺以外で初めて知るんだからな。


 俺の超能力は『死を見る』ことだよ。

 生きているんだ、誰だって死は訪れる。それを俺は見ることが出来る。俺はそれを早めるだけさ。


 ん? あんたの『死』だって?

 ははは、にいちゃんは面白いことを聞くなぁ。


~メモ:この時の表情は今でも忘れない。細い目に秘めた殺気が鋭いレイピアのように僕の心臓に突き刺さったような感覚がしたんだ~


 にいちゃんの寿命は後70年ってとこかな、随分と長生きできるじゃねえか。



 俺がこの依頼を受けた理由か?

 それも簡単なことさ、単純に()()()()に俺を『殺そう』なんて考えるバカがいなくなったからだよ。それも、二度と(あらわ)れない。


 この超能力は俺のことも見えるのさ、じゃなきゃあのスナイパーを殺すことは出来なかっただろうな。

 そんで、この超能力で俺を見たとき、俺には寿命しか見えなかったのさ。


 俺の運命は、後数十年でやってくる寿命を待つこと。

 寿命が普通の人間よりも短いんだ。まるで、奪ってきた他人の人生の分だけ(けず)られたみたいにな……


 それが今回の取材を受けた理由だよ。


~メモ:この取材の次の日から伝説の殺し屋:『死道 殺気』が謎の行方不明となった~




 真っ暗な世界に独りぼっちになった時。

 俺は初めて、自分の『死を見た』と思った。


「罪人!死道 殺気を『異世界流しの刑』に処す!!」


 暗い世界で、どこからかそんな声が聞こえた気がした。


「……ん? ここはどこだ?」


 こうして俺はこの異世界『ルケイ』に流されたのだ。


 辺りを見渡すと、人々がこちらを見ている。遠くの方には森も見える。


「……なに見てやがる……消えな、俺に殺されたくなきゃな」


 普通の人間なら俺の殺気を受けただけで腰が引くもんだが……成程、ただの一般人ではないようだな。


 そう思った瞬間、気付く。


「……なっ、『死』が……見えない……だと」


 ある種の絶望が死道を襲う。

 死が見えないということは、死なないということに等しい。最低でも死道にはそう見える。

 死道には目の前にいる人間達が不死身の化け物に見えているのだ。


「――いや、あいつと同じなのか?」


 死道のいた世界。そのラスボス的存在も『死』が見えなかった。

 神に愛された少女。家族を殺されたことによって超能力を発現し、歪んだ正義感を持ってしまった少女。『可能性を手繰り寄せる』能力は『死』という運命さえも歪めてしまう。それ故に死道には見ることが出来なかった。


 だとすると、こいつらも何かしらの能力を持っているのかもしれない。


「――ねぇ、貴方も異世界から流されてきたんでしょ」


 銀の瞳に白髪の少女が、群衆の中から現れた。


「あ? 知ったような口きいてんじゃねえぞ、女」


「いいなエリン。用心棒としてお前みたいな流れもんをうちの村で働かせてやってんだ。仕事はしっかりしてもらうぞ」


 この世界ルケイに生きるものなら我らの神が異世界の罪人をこの世界に連れてくる事をだれでも知っている。

 今まで数々の罪人が送られ、そのたびにこの世界の住民は罪人を殺してきたが今は違う。


 彼らとて無能ではない。今まで来た彼らは全員、魔法ではない『能力』を持っていた。『能力』は魔法の前に粉砕された。『能力』を持った彼らはルケイの人々を何人も殺してきた。


 これが過去。今、この王都周辺の地域では罪人の更生を(うなが)している。

 お互い、殺し殺されるのは嫌だろう。だから、その『能力』を、本人の『能力』を生かして、この世界で一緒に生活しようと考えている訳だが……


「俺を殺そうってか、俺はまだ何もしちゃいないぜ?」


 無駄口を叩いた瞬間。

 目の前の『エリン』と呼ばれた幼女の手元から死道の首筋に向けて『死のライン』が伸びる。


≪カキッィン≫


 死道とエリンが飛ばしてきたナイフがぶつかり、甲高い音を立てる。


「……!」

 

 エリンは死道に肉薄し、ナイフで襲い掛かる。


(一見、無謀な特攻だが、後ろからの『死線』を感じる……前のお嬢ちゃんは罠か)


 案の定。後ろを振り返ると、さっき弾いたナイフが襲ってくる。


「なっ!?」


 死道の世界には無かった法則がそこにはあった。


「……」


 死道は咄嗟(とっさ)によけたが、すぐにエリンが追撃する。

 咄嗟の行動に態勢の悪くなった死道にはエリンの両手のナイフを防ぐことしかできず、一向に攻撃に移ることが出来ない。


 何より、幼い少女の力では死道の『技術』と『力』によって両手のナイフなど持っていられない……が、彼女はどういう訳かナイフを『浮かせて攻撃させている』


 そんな少女に死道が出来る行動は一つしかなかった。


「待ってくれ! 俺は医者だ!!」


 命乞い。

 伝説の殺し屋も、40代(なか)ば。いい年にもなって変なプライド持って死ぬより、この訳の分からん世界で幸せに生きた方が良いに決まっている。


「俺は! ……いや、『私』は医者だ!! あんたらを傷つける気はないんだ!!」


 エリンは構わずに向かってくる。


 多方向からのナイフ攻撃……避けることは出来ない……なら。


「頼む! 本当だ!! ……くっ『天命への反逆(リザレクション)』!!」


 迫りくる『死』 確実な『死』

 死の運命から逃れるためには、『死』という概念を断ち切らなくてはならない。

 そして『死』などという見えないものを見ることができ、断ち切るなどという芸当ができるのは彼一人。


 黒い斬撃のような風が彼の周りから放たれる。


「『天命への反逆(リザレクション)』を使った私に同じ方法での『死』は一時的に起こらない。どんな重病でも一瞬で直してやる。だから私を信じてくれ!」


 死を見続けた死道 殺気の最終兵器。

 寿命を一年減らす代わりに、今から起こる死から復活するという技。この技は瀕死状態の(みぞれ)にも使われており、死をみる超能力で瀕死の霙に気づけたからこそ霙は命を救われたのだが、霙はそれを知らない。


「エリン! そいつをテストする。縄でそいつを縛れ」


 一人の男がエリンに命令する。恐らくこの村の村長なのだろう、誰も反論するものはいなかった。


 それから死道はこの村にいる患者をすべて救い、村の医者という地位を手に入れた。

 エリンは最初こそ死道の見張りだったが、死道と接していくうちに心を開き、今では死道の右腕として病院の看護師となってくれた。


 死道がこの世界に来て9年。神無月(かんなづき) 霙が異世界流しに遭ったのだった。

医者が戦ったラスボスの『可能性を手繰り寄せる』能力は、生き残るための最善の策。自分の思い描く未来のために自分がどういった努力をすればいいのかが分かるといった能力で、死道 殺気の対極の能力と思ってください。

自分が生きるために『死』を殺す『天命への反逆』:リザレクション

に対して

自分のために他人の『生』を奪う『滅亡の運命』:デストラクション

といったところです。

※これらの内容をもっと詳しく書いてほしい方は感想の方で教えてください。今のところは、これ以上医者の過去について書く予定はありません。


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