ヒトリゴト
霙の第三魔法によって神への道は開かれた。
暗い門をくぐり抜けて、霙は中の道を歩いていた。
「ここまで長かったような、短かったような…………不思議だよな」
暗くて何も見えないように感じる。
だがそれも罠・錯覚だと断言できる。
「昔から気になりだすと満足出来るまで調べて、考えて…………」
真っ暗な道も、枝分かれする道も、道幅が極端に狭くなった道も、どんな道だろうと霙の『魔眼』は即座に術式を変更して霙の思う普通の道に正す。
「ゼロのやつ、こっちから侵入されることも想定してるんだな。そんなに心配性なら自分でやればいいのに、それが出来ないからこんなことになってるんだけどさ」
錯覚を利用した罠も、古典的な罠も、音もなく暗闇を飛んでくる槍や魔法も、霙の『魔眼』の前に等しく滅びる。
「『無意識』の連中も氷雨と遊んでれば大人しくなるよね。私のストレス発散にもなるから一石二鳥……まってまって、氷雨を倒さないこと自体が菫の妨害にもなるから一石三鳥じゃない!」
まるでピクニックにでも行くような陽気さで進んで行く霙。
そんな声色に対して表情は硬く、無表情。
「緊張してる?」
自問。
「大丈夫。多少でも緊張してるってことは、それだけこの日のために頑張ってきた証拠」
自答。
「絶対にアイツを神の座から引きずり降ろしてやる」
しばらく歩いてまで術式を見た。
ゼロの仕掛けになど、最初から気付いていた。
「無限に続く一本道みたいなものか。まぁ、最初から次元だろうが境界だろうがこの魔眼で無理矢理通るつもりだったし」
術式を『見破る』こと、それこそ魔眼。
術式を分解した霙は次に進む。
今頃ゼロは必死になって防壁でも作っているだろうか。どちらにしろ、霙はゼロの防壁をすべて解きいてゼロのいる場所まで来た。
「やぁやぁ。こうしてこの場所で会うのは久しぶりだね、愛しの霙」
「お前の質問に全部答えてやるよ。その代わり───」
これは夢。
アイツの術式で出来た幻だ。
「【分解・魔眼】」
すぐさま看破する霙。
「…………『夢中世界』か。これで死道を無力化したな」
夢から覚め、前を見据える。
そこにいたのは忘れもしない神の姿。
その右目。次々に色を変えて混ざり、鮮やかに光る虹色の魔眼。
その左目。目の白と黒を何度も何度も反転させるその魔眼。
その身体。様々な動物・植物・鉱物・未知でそれぞれ構成された6枚の翼。
このルケイ世界の支配者。
オリジン・ゼロ。
「約束通り、滅ぼしに来たぜ。ゼロ!」




