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異世界流しに遭った私の異世界生活  作者: プニぷに
第二章:帝国
60/75

幕間1

 霙が行ってから数十分後のこと。


「あのぉ~、みなさぁん?」


 スライムの家の空気は沈み切っていた。


「…………」

「…………」


 意識の無い三杉とエリン。


 流花とルーナは意識こそあるものの、霙が居なくなったことで現実に直面してしまったのだ。

 恩師は死んだ。仲間の少年も。心優しいウサギの少女も…………死んだ、殺された。


「何があったかはぁ、ご主人様の中から教えて貰ってますけどぉ~そんなに落ち込むことですかぁ?」


 愛する者のために世界を滅ぼした流人であるグリエバ・ニコからすると、二人が落ち込んでいるのが不思議に感じるのだ。


「…………」

「…………」


 さっきまでの明るさが嘘のよう。


 二人も、どうして霙の前で明るく振舞えたのか分からない。


「はぁあぁ~めんどくさいなぁ~」


 心身共に疲弊している彼ら四人のケアを霙から頼まれているニコとしてはさっさと治って欲しいものだが、心を癒すことがどれだけ難しいことなのか。


 『神無月 霙』という存在に、そして『内在世界』も多少知っているニコだからこそ『ココロ』というものがどれだけ繊細なモノか分かる。


「美人なぁ~ニコちんを見たら癒されますぅ? それともぉ~このまま完全妖精状態の丸っこい体をぉ、眺めてる方がいいですかぁ?」


(まったくぅ~死ぬほど面倒ですよぉ~ご主人様ぁ~……まぁ、既に死んでるんですけどぉ~)


「…………」

「…………」


「ほらほらぁ~、前の世界を滅ぼすほどの美貌ですよぉ~。素敵な素敵なニコちんですよぉ~。見てますかぁ? 人間さぁん」


 完全な吸血鬼、前の世界では『吸血姫』と呼ばれる状態になったニコ。

 深紅の瞳に純白の肉体という暴力的な魅力と美貌を二人の前に晒す。普通なら、というか霙でさえも絶句した美貌を前にした二人。


「…………」

「…………」


 それでも二人の感情が動くことはなかった。


「まったくぅ~、仕方ないですねぇ~」


 二人が落ち込んだままでは勝手に主人にした霙に申し訳ない。

 そう思ったニコはおもむろにドレスのコルセットを外し、そしてお腹だけを見せるようにボタンを外していく。


「…………」

「…………!?」


 その様子を見て、流花だけは反応してしまった。


「おやおやぁ~? 人のお腹なんて見て反応してしまうなんてぇ~、流花ちゃんもなかなかスケベェなんですねぇ~」


 相変わらず顔の表情は一切変わらず、声の感情表現しかないニコ。


「えっ……それ、大丈夫?」


 落ち込んだ声で問いかける流花。


「ん? 何がですかぁ~?」


 思わず流花が話しかけてしまうほどの『お腹』


 それもそのはず。そのお腹には()()()()()()()()()()


「ソレ……骨……」


 虚空の腹の上から見える肋骨(ろっこつ)は黒く、そしてほのかに紫色が纏わっているように見えた。


「あぁ、これですかぁ。前のご主人様にアプローチした時にぃ、お前は外も中も他者の『欲』に満ちているってぇ~言われたんですよぉ~」


 流花に向かって正面を見せるニコ。

 彼女の皮膚は胸下から無く、内臓は全く無いように見える。


「酷いですよねぇ~、あの人のためにぃ娼婦をぉ辞めたのにぃ~」


 声だけなら悲しげな、それでいて少し楽しそうな様子のニコ。


「だからぁ……()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 ニコの発言に、流花の脳内が明滅する。


 どうして古くは流人殺しが当然であったか、今の流花なら分かる。

 流人は犯罪者。それも、ただの犯罪者ではない。最近の研究で分かったことだが、彼らの多くが世界を滅ぼすレベルの犯罪を犯しており、元々の世界では彼らに罪の意識も罰も与えられないから流されるらしいということが分かっている。


「……なっ、」


 だが、根本が違う。

 霙の過去も、目の前のグリエバ・ニコの過去も詳しく知っている訳ではないが、コレは根本が違う。

 そして霙も……この流人と同じく流人。同類なのだ。


「ほらほらぁ~二人が悲しんでたぁ、サナちゃん? 後はぁ~ナントカっていう男の子とぉ、ご主人様ですよぉ~」


 ニコが腹から取り出したのは黒いヘドロのようなもの。

 流体のように見えるのに、その黒いソレは球体を保っている。


「……それ、ライトと、サナと、霙の感じが……する」


「おぉ! 流石はぁ神秘を秘めた乙女ですねぇ~。やっぱりぃ、こぉゆうの分かるんですねぇ~」


 ニコが取り出したもの。

 それは『ミゾレ』だったものであり、アチラとコチラの境界であり、『内在世界』の入り口である。


「どうしますぅ? お悩み相談旅行にでもぉ、行きますかぁ?」


「…………」

「…………」


 二人とも言葉にはしなかったものの、同じ考えだった。


「決心したんですかねぇ? キヒヒ……」


 笑顔というよりは口を横に広げただけ。

 それでもニコがルケイ世界に来て初めての表情だった。



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