39:『月とウサギと流人と鬼と』その3
~神聖魔法王国:南の森~
サナの話から数日。
エリンとルーナは南の森へ『朱雀』を探しに行くことにした。
一応、西の森にいるかもしれない『白虎』はサナとカグツチが探すことになった。これには霙の言葉も関わってはいるが、カグツチには「カグツチ君とサナちゃんしか行けないからお願い!」とエリンがお願いし、流人嫌いのカグツチをなんとかサナと共に行動させるようにしたのだった。
「カグツチ君、大丈夫かなぁ?」
「カグツチ、も、きっと、分かってくれる……はず」
しかし、どうしたものだろう。朱雀の姿は一向に見えない。
最初から、すぐに見つかるとは思っていなかったが、手掛かりの一つも見つからない。
(そういえば、朱雀って火と赤が象徴だよね? だったらカグツチ君がいた方がよかったなー。それにサナちゃんもいないし、どうしよー)
南をエリンとルーナ。西をサナとカグツチに行かせようと言ったのは、実は菫。
これは菫さんからの試練だ! そう思い直したエリンは目を閉じ、周囲の魔力を感じ取ろうとする。
「エリン。ルーナも、やる」
風や音。魔力の流れ。生命のもつ魔力の波動。
それらすべてを感じるべく意識を深く集中させる。
「お困りかい? お嬢さん方」
近くで声が聞こえた。
霙や菫やサナのように察知能力や探索魔法が優れているとは言えない二人ではあるが、それでも、ここ数日の探索でそれなりに能力の上がった二人である。
その二人に気配一つ感じさせず、近づいてきた謎の声の主。
「誰?」
エリンとルーナは目を開け、周囲を見渡す。
「この世界に長くいる、流人だよ」
確かに近くにいる。
だが、その声はまるで、耳元でささやかれているようで音源が特定できない。
「ルーナ、困ってるよ」
「る、ルーナちゃん!? (ダメだよ、まだ相手が敵か味方か分からないんだよ?)」
「ん? 大丈夫、エリン。敵なら、もう、ルーナと、エリンは、死んでるよ」
エリンは小声でそう伝えたが、帰ってきた返事は至極まっとうなものだった。
いつもの天然ボケかと思いきや、意外にも鋭いルーナ。
「朱雀を見つけたいんだろ? 見つけてやる。もしよかったら君のスライムを人型にしてくれないかな?」
エリンは声の主の言う通りに、スライムを固有魔法:『物体操作』で人型にする。
すると、人型になっただけのスライムが突如として自分の制御から外れる。
「ふぇ!?」
「あ、女の子?」
辺りの魔力を吸い上げながら、スライムがキラキラと光り輝く。
激しい発光の後、現れたのは濃い紫色の長髪に全身真っ黒の少女だった。
「ふぅ、初めまして。北欧のトリックスター! ロキちゃんでーす☆」
目元でピース。
そして決めポーズ。
「…………」
「…………」
二人は、忘れたかった少女の面倒な部分を思い出した。
~神聖魔法王国:西の森~
「…………」
「ねぇ、カグツチお兄ちゃん」
「あ? 黙って歩け」
「う、うん。あっ、でもね」
「いいから、黙って、歩け」
「……はい」
菫は一体何を考えてんだ? 俺が、流人と一緒に森へ探索? ふざけんな! 菫からお願いされなきゃぜってー流人となんか行かなかったのによ。
そこまで考えて、カグツチはあることを思い出す。
単純な歴史の話だ。
「あれ? 強力な魔獣って全部スリート・ルーインと菫に駆逐されたんじゃなかったっけ?」
だとすると、霙が大亀の魔獣。つまり、四神でいうところの『玄武』に出くわしたと言うのは何だかおかしい気がする。
「おい流人。一旦帰って菫に魔獣のこと聞きに行くぞ」
アイツ、何か隠しちゃいないだろうな。
例えば、俺とコイツを仲良くさせるとか……だとしたら一発は殴る。うん、そうしよう。
「待って!」
「あ?」
カグツチがサナを連れて帰ろうとした時、唐突にサナが叫びだした。
待てと言われて振り返ると、カグツチの目線の辺りでぴょこぴょこと周囲の様子を伺うようにせわしなく動くウサギ耳。正直うっとおしい。
「ど、どうしよう、魔獣に囲まれてる……どうしよぉ」
驚きと恐怖にまみれた目でこちらを見てくる流人。
コイツ、さっき俺がなんて言ったのか覚えてないのか? それとも純粋に俺を信用してんのか?
「そんなの、全部倒せばいいだろ」
~帝国:海岸~
霙達から少し離れた海岸で、セラフィーは霙から言われた通りに根雪にお願いしていた。
「根雪お姉ちゃん! お願い!」
「嫌です」
「ママからのお願いでもあるの。だからお願い!」
「ダメです」
「天才の根雪お姉ちゃんなら魔法で結界を張るなんて簡単でしょ」
「ああ、その通りだな。でも、作るかどうかは我が決めることだ」
「天泣お姉ちゃんも紫雲ちゃんも危険にさらされるかも知れないんだよ。だからお願い!」
「はぁ、一ついいことを教えてやってやってやる。紫雲は死なないぞ。何故ならアイツはそういう概念として生まれてるし、そもそも交代人格がコッチに出て独立しているというだけで、貴様ら普通の生物とは『死』についても『生』についても違う」
「でも、根雪お姉ちゃんも皆も痛いのとか、怖いのは嫌でしょ?」
「フッ……我が怖がるとでも? それに、痛いというのは、相手の攻撃が当たるからだろう? 天賦の感覚を持った天泣には当たらんだろうし、根本的に違う紫雲には……どうなるんだろうな?」
その言葉に思わず微笑むセラフィー。
「なんだかんだ言っても、根雪お姉ちゃんって皆のことを信用してるんだね」
「よし、今ので我の機嫌を損ねたな。結界の話はなしだ」
「ああぁー! ズルいよー」
一体全体、この少女は何なのだろう。根雪は何度も何度も、バカで甘ったれた姉のため、行動し、はっきりと言い放ち、決断してきた。それが役目なのだからといえばそれまでではあるが、今回の事についてはその役目すら全うできそうにない。
自称『天使』だか『悪魔』だか知らないが、コイツが本当に姉上のために役立つというのか?
「ねー、どうしたらしてくれるの?」
根雪がセラフィーの真意を測りかねている時、ふと自分が主導権を握れていないことに気づいた。
そうだ、この俺様が『悩む』だとか相手のことを考えるなどという方がおかしいのだ。
分かった途端、イライラしてきたなぁ。後で姉上でも殴るか。
「…………よし、いいだろう」
「ホント!?」
「ただし、二つ我の質問に答えろ」
「うん! いいよ」
「一つ。お前は我が結界を張らずとも、何の問題もないのではないか? 『右目』と『右足』と『右腕』を魔力を割り振って、まがい物の肉を作ってはいるが、それを止めて反撃や防御に回せばそれなりの結果は出せるのではないのか?」
セラフィーは辺りをキョロキョロと見回した後のち、少し下を向いた。
そして、決意を持った表情で顔を上げる。見上げるセラフィーの顔を根雪も突き刺すように真っすぐ見つめ返す。
互いの視線がぶつかる。
「確かに、根雪お姉ちゃんの言う通り、この腕や足の魔力を割けば皆みたいな魔法がセラフィーにも使えるかも……でもね、私にできることは神の御命令と、神の御考えを私なりに考えた時だけなの」
「つまり?」
根雪は少しイラついた声色でそう言った。
それでもセラフィーは威圧にも言葉の棘にも目線の槍にも負けず、真っすぐ根雪を見つめ続ける。
「私は『使われる者』だから、セラフィーは何もできない。概念に近い存在だから、誰かに攻撃されても死なないかもだけど、身体が無くなっちゃう…………そしたらね」
その言葉に嘘偽りはない。そう感じた根雪はセラフィーの言葉を遮る。
「姉上は……悲しむだろうな」
「……うん」
「いいだろう、セラフィー・ルシフェル。二つ目の質問だ」
「うん! なんでも聞いて」
「『なんでも』と言ったな、ならば聞こう。お前は自身を『使われる者』と言ったな? では、使われる者であるお前の正体は何だ?」
「えっ……」
「よもや、ここまできて『ただの女の子』などとは言うまいな?」
悪魔の笑みで困り顔のセラフィーを見つめる根雪。
つい視線を外してしまったセラフィーを逃すまいと、根雪はそっと……それでいてずっしりとした圧をかけ、セラフィーの肩に手を乗せる。
「お前は、何だ?」
~帝国:海岸:現実~
霞の『二刀夢現流・逆転』によって夜と昼をその名の通り逆転させたことで、吸血鬼は太陽の光に晒された。
「あ゛あ゛ぁあああーーーーー!!!」
全身火だるまになる吸血鬼。
なんとか火を消そうとしているのか。吸血鬼は大岩のあった台座からなんとか海水にたどり着くも、一向に浄化の火が消える様子はない。
初めて会った、あの時の未熟な自分とは違う。今の自分の剣術であれば、必ず仕留められるという自信が霞の中にあった。
「知ってるか、霞。月の光は……太陽の光なのだぞ」
月光が、実は月の表面に反射した太陽光だと知らない霞にとって、吸血鬼の言葉は訳の分からないものであった。
しかし、そんなことはどうでもいい。
何故なら吸血鬼が太陽の光を浴びて、絶叫し、もがき苦しんでいるのに、ヤツはまだ生きている。燃え尽き、灰となることもなく。それが何よりも訳の分からないものだった。
「第二魔法! ──『我こそは死者の世界より来た闇の住人! 夜の王! その力の根源は月の光……ならば! 月光の根源たる太陽は、我が力の源である!』──クックック、俺様は今! 生者の世界に足を踏み入れたぞ」
その術式。その言葉通り、吸血鬼は太陽を克服した。
ヤツの体を燃やし浄化せしめんとしていた火は消え、太陽による傷は瞬く間に再生していく。
「どうした霞? もう終わりか?」
「…………」
愕然とする霞。それでも何とか打開策を必死に考える。
(第二魔法は一般魔法やその他の魔法と違って汎用性や多様性がある分崩しやすい……今の第二魔法で強調されていたのは『自分が夜の王で闇の住民で死者であるが力の根源は、実は太陽の光』ということと『太陽を浴びていたのだから本来は踏み入れることのできない生者の領域にまで自分は侵入できる』ということ)
考えていられたのはそこまでだった。
「くっ!!」
「術式など創らせんぞ、霞。残念だが、お前は最強となった俺様に殺されるのだ」
ただ地を蹴り、突撃し、指先まで伸ばした腕を振るう。それだけの攻撃であっても、人間がするのと吸血鬼がするのではまったく違う。
突撃の速度が大砲ならば、伸びた爪は霞の持つ刀の様に鋭利で固い。
「…………アハ」
(流人のお嬢さんは……ダメか。何かを呟いてはいるが、意識があるようには見えんの)
拮抗する両者。
しかし、驚異的な身体能力と流人特有の能力だけでなくルケイの魔法と第二魔法を兼ね備えた吸血鬼の方が優勢か。霞は吸血鬼の攻撃を受けることは無いが、吸血鬼は霞の攻撃が当たったとしてもすぐに再生し、回復する。
「人間は脆いなぁ。俺様の攻撃を一度でも受ければ致命傷なのだろう? 治癒魔法など、使う前に殺してやるぞ……どうだ? もはや霞、お前では俺様を倒せんぞ」
人を惑わす甘い言葉。実際、ただ攻撃を避け続けるだけの霞に勝ち目はない。
あの攻撃が通用しなかった時点で、霞の頭の中は次の必殺を考えることでいっぱいいっぱいだった。それゆえ反撃の術式すら口にできない。何も……出来ていない。
「…………アハ」
「そうだ……お前にいいものを見せてやる」
吸血鬼はそういうと、霞の目の前で分裂……もしくは分身し、霞に迫りくる。
「ガァッ!!」
到底防ぎきれぬ攻撃。霞は胴体を蹴られ、霙が放心して座り込んでいる場所まで飛ばされた。
「ンッ……ガハッ……はぁ、はぁ、」
「…………アハ」
何とか喉奥にたまった血を吐き出し、必死の思いで顔を上げる。
「…………アハ」
目は開いてはいる。
口元は笑顔を作り、笑い声も聞こえる。
中性的で、長い髪がなければどちらとも言えない美しい顔が見える。
霞は別に、最後の望みを賭けて霙を見上げた訳ではない。特に重要な意味があった訳でもない。
「霞よ、そこの使い物にならないお仲間にでも頼ったらどうだ? 話しかければ意識がこちらに戻って来るかもしれんぞ」
「フッ……抜かせ化け物。たかが内臓が一つ破れた程度。まだまだ儂は戦えるぞ!」
ゆっくりと近付く吸血鬼。立ち上がる鬼狩り。
「老人の空元気ほど呆れるものはないな。魔力が弱まり、その夢とかいう見づらい剣がさらに見づらくなっているぞ」
霞の目と鼻の先に吸血鬼は笑みを浮かべて立つ。
もう霞には、実体のない『夢』すら振るうことが出来ない。
「二刀夢現流……奥義、『夢現』」
それでも赤い目の吸血鬼を睨み、言葉を……術を紡ぐ。
「!?!?」
「…………」
何も知らぬ吸血鬼には、驚きの一言だっただろう。
すべてを知る霞は、ただ術の対価を受け入れるだけだった。
≪ドサッ≫
倒れる両者。
全身から血を吹き出し倒れる霞と、細切れになって、倒れるというよりは崩れていった吸血鬼。
「…………アハ、夢現だね。すごいね。考えたことぜ~んぶ現実に出来ちゃうんだ~」
「…………キヒ、大変だね。その分相手の思いの分だけ傷を負っていくぅぅうううーーー! キヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
「…………ほら、ダメだよ霙。このおじいちゃんの表情が曇ったよ。嫌だよ。止めなよ」
「…………あれあれ~? んなぁ~んでかなぁ? 不思議だなぁ? ……あ? 何が?」
瞬間、霞の意識が飛ぶ。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
「不思議そうな顔だね。今のは半分夢だよ? 言ってる意味、分かんないでしょ。私もよく分からないんだけどね」
一体、どこまでが夢でどこまでが現実だというのだろう。
霞の身体はさっきの夢? と同じく血だらけで苦しい。指先一つ動かす事すらしんどい。
「おい、女。どうやって戻ってきた」
霞の命を懸けた二刀夢現流の最終奥義『夢現』を受けたにも関わらず、もう話せる程度に再生している吸血鬼に対し霙はそっけなく答えて見せた。
「夢の世界で現実に強制的に戻ってしまうほどの恐ろしい現実を知ったのよ、吸血鬼さん」
「お前は……なんなんだ?」
そしてあっという間に元の姿に戻る吸血鬼。
座り込んだままの霙は血だらけで傷だらけの霞の姿をじっと見つめたまま、目も顔も向けずに答える。
「セラフィー・ルシフェルにとっては母であり父であり神。私にとっては謎。霞にとっては恐怖と狂気ってところかな? アナタは、私をどう捉えるのかしら? その解釈がいわゆる第二魔法なのよね」
霞の死が近づき、『逆転』の術式が消える。
世界は偽りの昼から、真の夜へと戻る。
「あぁああ゛あ゛!! 痛い! ……あ、溢れ……るぅ。ヒヒ、キヒィイイ!! 許さない」
「なっ、なんだコイツ!?」
あまりの事に、思わず後ずさる吸血鬼。
彼とて、再生はしているがダメージが全くないわけではない。霞が放った『夢現』などというチート攻撃を受けて、元の姿に戻れただけ。今の彼では魔法一つ使えない。
「素敵なお花。ドロドロでキレイなセカイ。アハ…………アハ」
突如として霙を中心に大きく魔力が動く。
吸血鬼は強大な魔法攻撃を警戒するが、術式を扱っている本人の右半身はドロドロに溶けてしまっている。
「それは……なんの術だ?」
こんなのは戦いではない。
こんなものに意味はない。
そう思った吸血鬼は夜の王らしく、心の余裕を持てるようになった。
「地面には黒いドロドロ。私も黒くドロドロ。ソラは黒百合。チは赤と黒。美しい宝石の木と花は私の左から。そこに咲くは彼岸花」
何がしたいのかも何を言いたいのかもまったく理解できないが、とにかく自分には無害だろうということは分かった。
もう、そこには美しい人間の姿はない。
地面は謎の黒いドロドロとした液が広がり、人間だったモノの目からは血が流れ、左半身と頭を除いた部分がグチャっと溶けて残った身体がドロドロの上に崩れ落ちる。
「おい女、それで生きているのか?」
「うん」
一時は『魅了』から現実に帰り、恐ろしい程の魔力を感じ、さしもの吸血鬼の肝を冷やしたが、どうだろう。
夜空にはバカでかい黒百合。地面は黒いドロドロで覆われ、そこには一面の彼岸花。術者と言えば身体の殆どをドロドロに自らの術で溶かし、血涙を流し、残った左半身と頭には美しく光る宝石……なのか何なのかは分からんが、確かに美しい光を持った木や花が咲いていた。
「このヘドロは毒か? それとも花が毒か?」
馬鹿馬鹿しくなった吸血鬼は恐れを通り越して呆れ、そのおかげで冷静になれた。
(今のコイツに知性は欠片もなさそうだ。このままコイツの血と肉を頂こう)
「攻撃の術式じゃないから大丈夫ダヨ。これはステキなセカイ。この世の摂理。仕方のないことなの。だから不安にならないで、ジャック・ザ・リッパー」
唐突に自身の名を看破されて、一瞬焦る心が芽生えるが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「どうして分かった?」
「アナタの目が人を魅了し、心を見透かすなら、私の目は…………うん、そーゆーこと。なほなほなー、娼婦を嫌い、血を吸って、証拠隠滅ぅー首を切り裂きジャック・ザ・リッパー。その正体は吸血鬼。未解決の理由は流されたからなのかー……きゃははは」
(アイツの目、あの木よりも複雑な光で満ちている……まぁ、俺様には関係ない)
吸血鬼は霙に近付き、左肩と首の間に牙を突き刺す。
「ママ! ダメ!」
声が……聞こえた。
そうだ、セラフィーを守らなきゃ。
セラフィーが好きな私を? 私の身体を、守らなきゃ。
痛い。熱い。
「なっ!? 我らの王だと!?」
驚いて血を吸うのを止め、顔を上げる吸血鬼。
血を抜かれて落ち着いたのか、霙は最初の術式のことを思い出した。
「…………イデア」
待機させていたイデアを発動した瞬間、霙以外のドロドロや木に花、そして吸血鬼が凍った。
「ママ! よかった、死んでない!」
必死にこちらに走ってくるセラフィーを最高のハグで向かい入れ、強く……更に強く抱きしめる。
「死者が生者になったら、イデアでも死ぬわよね? 永遠の存在と絶対なる死はとても近いの。盛者必衰の理……諸行無常。理論上の永遠はあるだろうけど、真の永遠なんて本当にあるのかしらね」




