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異世界流しに遭った私の異世界生活  作者: プニぷに
第二章:帝国
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36:Sleet sisters

 森の中、幼女を抱えて歩く黒い外套に大きなリュックを背負った中性的な顔立ちの美女。

 そんな彼女は幼い天使に自分の魔力を与えることで回復を早め、そして寝ているうちに幼女の傷を治癒魔法で治してやった。


「…………別に、それがどうしたっていうんだよぉ」


 抱きかかえているセラフィー・ルシフェルは寝ている。周囲に誰か他の人間がいるわけでもなんでもない。


「…………だー! かー! らー! 関係ないでしょってば!」


(その餓鬼になんの価値がある? 何故足手まといを連れて行く? 我一人でこの世界を収められるというのに……姉上は馬鹿なのか? あぁ、すまない。馬鹿だったな)


 霙が頭の中にいる根雪と話していると、突然腰の魔道具が淡く光って動き出し『根雪』になった。


「まぁいい。一応言っておくが、他の武器も我のように変身できるようにしておいてやったぞ。ありがたく思え」


 黒をベースに赤いラインやらリボンが使われたドレスの美女が霙の目の前に現れ、その手を霙の腰のあたりに向ける冷血の美女こと根雪。

 目つきが鋭いものの、霙の自慢の妹の一人である。


「へぇーありがとね? いや、天泣(てんきゅう)紫雲(しうん)も了解してるの?」


「は? 我が知るわけないだろう」


 自分だけでなく他の妹達にも変身能力を与えたのは彼女の優しさなのだろうが、こういう部分は根雪らしさなのだろうな。と霙は思った。


 瞬間。武器としての天泣と紫雲が宙を舞う。先程の根雪同様、光り輝きヒトの形になる。


「……ウニュ~。うんぁ?」


「あれぇ! お姉ちゃんたちとコッチで会えちゃった! キャハハ! わー天泣お姉ちゃんモフモフだ~」


 白い毛並みに大きな身体は、まさしく『白狼』と言うにふさわしい姿だが、その毛並みから覗かせる大きな胸やどこかぼんやりとした顔がその気高さと偉大さを半減させていた。


 そして、そんなモフモフふわふわボサボサな次女に抱きついているロリータ服の幼女こそ神無月姉妹の中の癒し担当兼一番怒らせてはいけないというか、なるべく戦闘に巻き込ませてはいけない子である紫雲である。


「どうすんだこれ」


「我が知るわけないだろ。長女として何とかして見せろ、霙お姉様。それとも原初にして本能の天泣お姉様に頼もうか?」


 そんな霙と根雪の会話に末っ子の紫雲が反応する。


「もー、ダメだよ。根雪お姉ちゃん。イジワルしないの……めっ!」


 そう言って根雪の唇に人差し指をくっつける紫雲。さすがの根雪も紫雲にはいつもの調子はでないようだ。


「…………あうぅ、紫雲は背伸び?」


 そこへ天泣が背伸びをしている紫雲を持ち上げる。

 身長は天泣が飛びぬけて大きく、次に根雪、そして根雪より()()()()小さいのが霙。紫雲はそれこそセラフィー・ルシフェルと同じくらいだ。


「んんっ……あれ? ママの妹さん? そっくりだね。わーすっごい、私に近付いてくる魔獣さんにそっくりだね」


 天泣を見てそういうセラフィ―。彼女曰く、天使としてこの世に存在する生きとし生けるものは本能的に寄せ付けてしまうのだとか。妖精や獣や魔獣といった生き物は、その殆どが彼女の味方であり、彼女の従僕でもあるらしい。

 それでも人間は違うのだとか。人間は大いなる意思には完全に従えないのだからだろうか。


「んー? あなたは自分の手の届く範囲を守る勇者様。あなたはすべてを支配し孤独という平和を創る独裁者……それとも神様。あなたは……すべての統合? すべてがあなた? 平和というよりは平和以外の道がないディストピアって感じかな?」


 セラフィ―・ルシフェルは天泣、根雪、紫雲をそれぞれ見てそういった。

 霙には分かる。それが各々の『正義』なのだと。そして、自分は。


「やっぱり、セラフィ―はママのが一番好きかな。迷ってるみたいだけど、それでいいと思う」


「はぁーあ、天使様に隠し事は無理かな。分かったろ根雪、この子はただの人間じゃないんだ。私達みたいな……所詮、人間如きじゃ到達できない場所にいるんだよ」


「だからどうした? この世界の法を使えばソレに追いつき追い越せる。我が真の『超越者』となれるのだぞ? そのガキ如きが我に勝てるとでも?」


 いらだつ根雪。その怒りに満ちた声。


「勝つとか負けるとかじゃないんだって。この世界の神様はゼロだけど、それは無限の世界の神々の一柱でしかない。それは分かるだろう?」


「神の神の神の神ってか? 要するに原初の神の使いがそこのガキだと……本当にそうだとして、真の神に我が負けるとでも?」


「『無』が『有』るという矛盾に戦いを挑めるわけないだろう? 落ち着いて根雪、根雪なら分かってくれるよね」


 しばらくの沈黙。下を向く根雪。

 その噛まれた唇からは血が出ていた。


「四姉妹で一番の天才が私だと? ふざけるな。……誰もが貴様のように超越した思考をもてると思うなよ!!」


「ねえ、二人共。争いはよくないよ」


 紫雲のよく通る美しくも凍死するほどの冷たい声。


「ねえミゾ姉。紫雲ね、この先の海に行きたいな。素敵な吸血姫さんと危ない吸血鬼さんがいる気がするしね、みんなと一緒に海で遊びたいの」


「あ! 私もママたちと遊びたーい」


 白い手足を生やしたセラフィ―は霙の手から逃れ、さっそく同い年位の友達が出来たようだ。


「よし、じゃあ行こうか。長女である私の命令だ、当然聞いてくれるよね?」


「…………」


「うあぁー」


「「いぇーい!!」」


 不思議な四姉妹と不思議な天使のような少女。

 この光景に霙は神と、その神に仕える四大天使のようだと思ったが天使はセラフィーだったと思い微笑する。



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