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異世界流しに遭った私の異世界生活  作者: プニぷに
第二章:帝国
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35:天使と悪魔の二人+αの旅

 森の中。裸のままではいけないと、霙はリュックの中から何かしら服がないかと探してみる。

 とりあえず、霙の替えの服をセラフィー・ルシフェルに着せてみるが幼女と霙では体格差がありすぎてダボダボのワンピースのようになってしまった。


「ん~、これはこれでありかな?」


 仕方がないので大きく広がって胸が見えそうになっている(えり)の部分をセラフィー用に細めて、余った布地をリュックの中に入っている針と糸で縫い付ける。セラフィーの首の後ろにはチョコンと魚の背ビレみたいなのが出来上がってしまったがセラフィーの髪が長いということもあり、霙は特に気にしていない様子。


(おさかなさん? みたいで可愛いし、セラフィーも髪長いし、バレないっしょ)


「ありがとう、ミゾレお姉ちゃん」


 そういう霙のいたずら心というか幼さのようなものを感じ取ってなのか、今のセラフィー・ルシフェルにとっての霙の精神年齢は『ママ』から『お姉ちゃん』に下がってしまった。


「それじゃあ行こうか。それとも魔法か何かで義足とか作った方がいい?」


 霙はセラフィーが自分をなんと呼ぼうと気にしていない様子。


「ううん、大丈夫だよ。自分で出来るもん」


 そう言うと右足の付け根から黒いナニカがヌリュっと出てきた。

 その黒いナニカは霙の心のどこかに引っかかったが、だからといって()()()()()()()()()()()()()()()


「それじゃあ、行こうか」


「うん」


 こうして二人は森の中を歩き始めるのであった。




 森の中をあてどなく歩く二人。

 歩きながら霙はセラフィーに何があったのかを詳しく聞くことにした。


「ねぇセラフィー、ゼロの策略がどうとかって言ってたけど何があったの?」


「あのね、本当ならね、私が本当の天使になるはずだったの」


 その話は二回目だったような気がするが、それでもよく分からない霙。つまりは本来の天使であり神でもあるゼロは、この幼いセラフィー・ルシフェルからその座を奪ったということなのだろうか?


「? じゃあ今は誰が天使なの?」


「ん? セラフィーだよ?」


 本当に分からなくなってしまった。


「え? でもさっき天使じゃないって……」


「だから! 神様のおかげでここに生まれたけど、ゼロのせいで本当の天使になれなくなったの~!」


 やっぱりよく分からない。

 霙はだんだんセラフィーの話を聞くのが面倒になってきて、一旦話を終わらせて時間があるときにゆっくり聞こうかなどと考えていたが……霙は思い出す。いや、()()に話しかけられる。


(自分が一生懸命に話してるのに、ママに嫌そうな顔をされながら「はいはい、すごいね」って終わらせられた時、どんな気分だった? どんなに説明しても全然分かってもらえなくて、一時間も二時間もかけてやっとママや学校の先生に犯人が自分じゃないって分かってもらった時、どれだけ嬉しかった?)


「…………」


「ミゾレお姉ちゃん?」


(あの世界とは違って、この世界は忙しくないでしょう? 思い出して、その子にはそんな思いをさせないで)


「はぁ……セラ、座ろうか」


「セ~ラ~フィ~イ~!! もぉ~短くなちゃってるよぉ~」


 生足と魔法で出来た足で地団太を踏みながら片腕をブンブンと振るセラフィーを見ていると、思わずニコニコしてしまう。だからこそ、過去にどんな目に遭っていようとも、この子にだけは(コッチ)側には絶対にこさせない……絶対に。


「いいじゃん。愛称だよ、あ・い・しょ・う」


「むぅ~、ならいいけどさぁ~。あ! そういえばさっきの子はいい子だったね!」


「ん~? そう? ていうか見えてたの? 恥ずかしいな」


「私と同じくらいの子だったのに大人っぽくてすごかった!」


 その小さく幼い『子』というのも当然霙である。

 霙の頬は若干赤くなり、それを隠すようにセラフィーに背を向けリュックやら腰の妹達を地面に置いていく。


「ほ、()()()! セラフィーも早く座りな」


「アハハ! 変なの~」


 思わず声が上ずって変な声になってしまいセラフィーに爆笑される始末。

 セラフィーが笑っている間、霙はリュックに顔をうずめて赤くなっているであろう顔をなるべく見せないようにした。


「……よし、まずはセラフィーがゼロに何をされたのか聞こうかな? 教えてくれる?」


 霙もセラフィーも落ち着き、二人は面と向かって地面に座る。


「うん。あのね、最初はママとパパといたの。だけどね、私が本物の天使になっちゃうから、ゼロがパパとママとみんなをおかしくさせて……それで……いっぱい怒られてぶたれて、蹴られて……うぅっ、」


 セラフィーのトラウマをほじくり返してしまったようだ。

 彼女を泣かせてしまった。だが、彼女の勇気のおかげで我輩(わがはい)は理解できたぞ。


「すまなかったな、君の嫌な記憶を思い出させてしまったようだ」


「あれ? 今度はオジサン?」


「君には我輩がそういう風に見えるのか……ありがとう、君のおかげで二つの事が分かった」


 すぐに泣き止んでくれたことに安堵する霙。


「二つ?」


「ゼロを殺す理由が出来た。やはりアイツのせいで人生を狂わせられた人が一人でもいる……それだけで十分だ」


()()()()()?」


(聞いた? 『もいっこ』だって)(うんうん、すっごくかわいいね)(ホントホント! もぉ~食べちゃいたいくらいよね)


「『賢者の書』に書いてあったことと我輩が経験したことから、ずっと考えていたことが恐らく真実であるということを確信できた。ようするにアイツは自分より強い『天使』という自分と似たようなモノを消したかったのだろう」


「そうなの?」


「さぁな、いずれ会うんだ。その時にでも聞いてみようか」


「ありがとね、お姉ちゃんたち」


(((キャー!! セラフィーちゃ~ん)))


 思わずコッチの中に引き込んで永久に自分だけのモノにしたくなったが、それは『イケナイコト』だ。独占欲からくる歪んだアイなど本当の愛ではない……治まれ。


「ママ?」


「ううん? 大丈夫だよ」


 そう言いながら妹達を腰の魔道具に付け、リュックを背負い立ち上がる霙。

 セラフィーはまだ座っていたいようで、霙に向かってその可愛らしくウルウルさせた瞳を向けてくる。


「…………」


「…………、はいはい。抱っこしてあげるから早く次の村か町に行きましょう」


「わーい! ありがとう! ママ」


「ん~よいしょっ! あぁ~あったかいねセラフィー」


 一見すると幼いセラフィ・ルシフェルが疲れたからこその行動に見える。だが、『すべてを見る目』をもつ霙には分かる。


 セラフィーにはもうほとんど魔力がない。昨日の天使化といい、霙の心のために力を使ったり、そして歩くために黒い足をずっと維持してきたのだ。それだけの力の行使をして、まだ多少の魔力が残っている方が不思議なのかもしれない。


「あれ? 寝ちゃった?」


 霙の腕の中でスヤスヤと眠る天使のような少女。

 右足と右腕がないその少女がどれだけ自分を信じてくれているのだろう? 壮絶な目に遭っているのだから人間不信に(おちい)ってもおかしくないというのに。


「私の世界で言う宗教上の『右』っていうのは、天使の力であったり聖なるものだったりするそうだ。お前はそういうのも使ってこの子を不浄にして穢れた存在にしたかったのか?」


 その問いに答えは無い。


「どうせ聞いてるんだろ。ぜってぇお前を滅ぼしてやるからな」


 新たな決意を胸に、滅びの悪魔がココロに潜ませた百鬼夜行と共に神を殺す旅。

 天使であり悪魔でもある少女を抱え、神の住処へ向かう術を探す旅の始まりである。

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