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異世界流しに遭った私の異世界生活  作者: プニぷに
第二章:帝国
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34:旅は道連れ世は異世界

 ぼんやりとした意識の中、木漏れ日の(まぶ)しさで徐々に目と意識が覚め始める。


「───んっ……ポヤポヤだぁ」


 今が何月かは分からないけど、大体春か夏の間くらいかな? ほんわか温かくて、ポヤポヤする。


 そんなことを思ってる霙は自分の頭部が柔らかい何かを枕代わりにしていることに気が付く。


「ん? …………、フト、モモ。……ひゃわっ!?」


 自分が幼女の太股を枕にしていたとは露程も思っていなかった分、驚きは大きく、思わず立ち上がってしまう。急激に起き上がった体は反動で低血圧からくる立ちくらみを起こしてしまった。


「おっ……」


「…………あ、起きたんだお姉ちゃん」


 幼い天使は立ち上がろうとしたが、さっきまで霙が片方しかない太股に寝ていたこともあって上手く立ち上がれず、その場に倒れてしまった。


「……うぅぅ」


「カワユス」


 ついついそんな言葉が出てしまう霙。

 すぐに彼女を起こし、自分のせいで滞ってしまった血流を元に戻すべく幼い天使──セラフィー・ルシフェルの足やら身体をモミモミしていく。


「そういえば、妖精だか精霊のみんなはいないんだね」


 霙は辺りに彼らがいないことを不思議に思って幼い少女に聞いてみる。

 昨日の風の精霊だか妖精の話では、この少女は()()()()存在に好かれているという話ではなかったか? などと自分の不安定な記憶にも話しかけてみる。


「みんな? みんなは帰っちゃったよ。やっぱり私以外の人に見られるのは恥ずかしいんだって」


「ふ~ん、そういうものなんだね…………どう? 大丈夫?」


 ひとしきり幼女の身体を触りまくって満足したところで彼女に確認する変態。

 彼女は「まだちょっとピリピリするかも」と言っていたが、それでもすぐに立ち上がれた。


「それじゃあ、私は行くね」


「どこに?」


 そう言われてみると特に考えがあったわけでもない霙は、彼女のその質問に答えることができない。

 そうして黙っているうちに彼女の方から他の質問が投げかけられた。


「ねぇお姉ちゃん。私の……あの……あのね、その……なんていうの?」


 年相応だな。純粋にそう思えた霙は、彼女が言いたいことが分かる…………と言うよりも、彼女の求めるソレは霙も心のどこかで求めていたものだ。


「───家族。…………それはきっと、『大切な人』で、離れたくなくて…………私も、独りは嫌だな」


 そう言って霙は彼女に近付き、その小さい頭を撫でてやる。

 ここ最近の霙にしては珍しく、その表情は穏やかで悲しげだった。


「家族………うん! 私はお姉ちゃんと一緒がいい!」


 片足でピョンと一度だけ()ねて霙との距離を縮めるセラフィー・ルシフェル。片腕だけではあるものの、彼女なりの全力の抱擁(ほうよう)に対して霙はなんとも言い表せない怒りのような悲しみのような…………そんな苦痛に似た感情で胸がいっぱいになった。


 目の能力を使わなくたって分かるよ。右目も、右腕も、右足も、全部誰かが切ったんだ……体中傷だらけで、髪も伸び放題でボサボサ。燃やされたせいで毛先が白くてチリチリに……。


(だから言ったろ、お前なんかが受けている自称イジメやら虐待やらなんてその程度なんだって。この子を見てみろ、お前なんか生ぬるい方じゃねえか)


「こんな私でいいなら……私の旅についてきてくれる?」


 頭の声を無視してそう言う霙。


「あなただからいいんだよ、お姉ちゃん」


 その幼い天使の笑顔は、霙のココロのすべてを見通してるかのようであった。

 嬉しくもあり、少しばかり怖いような気もする……あの神無月 霙が恐れるなどというのは自分でも面白いと思うが、そう感じてしまったのだからしょうがない。


「私は神無月 霙。流人で異常で犯罪者……それとあなたの家族です」


 手を差し伸べる。


「私はセラフィ―・ルシフェル。ゼロの策略により天使の座を堕とされ、堕天したかの者の名を与えられたすべてを知る神の子孫の一人。これからよろしくね、ママ」


 人から何度拒絶され、してきただろうか。また離れられるのではと思うとセラフィーに差し伸べた手が震える。


「ママでお姉ちゃんでミゾレちゃん? それといっぱいの変な家族だね。一度でこんなにたくさんの幸せなんて、セラフィーはとっても嬉しいよママ」


 それでも少女はバケモノの手をとり腕にしがみつく。

 こんなに開放的な気持ちになったのは初めてかもしれない。この子の前では自分の心も、それによって誰かが傷つくなんてことも考えなくていいのかもしれないと、霙は思った。


 きっとセラフィー・ルシフェルは幼い霙を『ミゾレちゃん』と呼ぶだろう。少し大人びてきた霙を『霙お姉ちゃん』と呼び、冷静で達観した霙を『ママ』と呼ぶのだろう。


「まずはセラフィーの話を聞かなくちゃね」


「その後はどこに行くの?」


「ゼロのいる場所に行くための情報を手に入れる。そしてスリート・ルーインの残した最終術式を完成させる」


「ねぇ、ママ。一つお願い」


「なぁに?」


「もしよかったら服が……欲しいな」


 ようやく始まるかもしれない楽しい旅。

 異色な二人の異世界生活が今、始まるのであった。

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