32:目覚める少女
目が覚めると、私は木の下で寝ていました。
頭が痛くて、正直に言うとしんどいです。寝ていたい。
「はぁ、私、どうしてたんだっけ?」
よく晴れていて、ルケイは素敵です。緑の香りと共に潮の香りもします。海が近いのでしょうか?
思えば今日が何月何日かも分からないですね。確か、ライデンを出たのが5月か6月くらいだったはずなんですけど……やっぱりよく分かんないですね。
「……エリン? ん? ……ダメですね、これ以上は行きたくない」
訳の分からない映像や画像を送り付けられても分かりませんよ。私が覚えてるのはあのメガネの『コード103』に…………おい、何をした?
「私? 知らないよ。……辛いな、苦しいな。痛くて……涙を流して、楽になりたいよ」
ここが帝国だということだけ言っておこう。
「手首がスースーするのは?」
苦しみの代価だ。本当にすまない……ああするしかなかったとはいえ、君の身体を傷つけた。
「私の……左手首……腕……裏側と内側……イヤァア!?」
(ハァァ……ァァ)(痛い! なにこれ? 知らない、知らないってば!)(…………、)
マズイ! パニックを起こしてるぞ。
落ち着け、落ち着くんだ。君は……
「君は何!? 誰も守れなかった! 誰も彼もを飲み込んで、好きなようにしようとした! 殺そうとまで考えて……また、安易な道に……逃げよう……と」
これでいいのか?
どうする?
私がお姉ちゃんを癒そうか? それとも天泣お姉ちゃんの方がいいのかな?
放っておけ、紫雲。あのバカは自分が狂った理由が『我慢のし過ぎ』だと知っているのに、それでも「大丈夫大丈夫」と言っているのだぞ? 度し難い……救いようのない阿呆だよ、アイツは。
「私がなんとかしよう」
誰だ? 洗脳の類か?
違うよ。僕と同じようにナニカを超えてしまった存在だ。
「…………男を簡単に殺してしまったことが、そんなに苦しいのか?」
…………。
「自分のせいで命の恩人がゼロに殺されたことがそんなに不満かね? それともソレを知ってしまったことがかな? ソレ以前として、この目の能力かい?」
…………、
「ダブルの件も……どうして君はそこまで自分が悪いと思う? 事情を説明しない菫が悪いとは思えないのに世界の悪に仕立て上げたゼロにはそれなりの怒りを持てている……どうした?」
…………!
「時間を巻き戻すとしよう。この目と『賢者の書』のおかげで、この世界の……いや、本当の意味での『全』に近いモノへ手を伸ばせた訳だ。力は使うべき時に使わなくてはね」




