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異世界流しに遭った私の異世界生活  作者: プニぷに
第一章:新世界
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プロローグ:反抗(犯行)の動機

小説初心者の私の二作品目です。至らぬところもあるでしょうが、楽しんでもらえると嬉しいです。

 ≪これは、ある国家が抱えていたテロリストの手紙≫ 


 やあ、これを見ているのは軍や警察? それとも同じテロリスト? まぁ私の手紙を見つけて読める奴はこのくらいかな? 他にいるとしたら運のいい人間かな?


 きっとこの手紙が見つかるときには世界は滅亡のカウントダウンが始まっていることだろう。

 滅亡をもたらすウイルスは私達が作り、私達が散布したのは言うまでもないが、私は()()なのだろうか?


  人を殺し、世界に反逆し、確かに罪人ではあるものの、私は自分を悪人とは思わない。何故なら、私がしてきたことはすべて、君達がやっていることの延長線でしかないからだ。

 言い訳だと思うか? 許しを()うためだと思うか? 計画が失敗して、裁判でこの手紙を提出して罪を軽くするために書いたと思うか? 否だ、断じて否だ。


 私の生まれ故郷はとても平和な国ではあった。戦争もなく、飢えに苦しむ人もいなかったし、男女平等が掲げられ、皆が学校に行くことが義務付けられている……そんな国だ。毎日のようにテレビで他国の人々が言ってくれた「この国は素晴らしい。すべての国がこうなって欲しいものだ」と。

 確かに素晴らしいが、それは国として。これを読んでいる君は分からぬかもしれんから分かりやすく言うと、彼らは十字型の橋を渡るとき、橋の反対側から機械で渡っていいという合図の時に渡る。これは当たり前のことだ。だが、彼らは横切る相手が自分の考えの中でいないと判断したとき、もしくは無意識の中でそう考えたとき、同じように渡る。それは私の国では違法行為なのだが、誰もやめないし、誰も真剣に考えているようには思えない。


  軍ですらそれをやめさせようとする人間は少ないし、なんなら彼らもやっている。


 平和を維持するための規則・法律。誰しもが平和で安全に生活できるようにするための規則・法律。

 私は幼い時からそれを守らない人間が不思議で仕方なかった。

 学校に行けば先生たちに「守らないと危険だから絶対に守るんだよ」「それが普通のことなんだ」と言われ続け、それを守らないと怒られて、強制的に守らされる日々が続く。


 まぁ何年か経てば誰も守らなくなるんだけどね。


 でも、私は守った。ずっとずっと守った。守ることを馬鹿にされても守った。それを守ることが大切なのだから、守らなければ事故に遭う。命を落とす。だから自分だけでなく他人にも守らせようとした。注意をした、相手を掴んでいかせないようにして注意した、その結果理不尽な暴力や暴言で私の注意を無視した。それなのに誰も事故に遭っていないし、命を落とすようなことにはなっていない。


 橋を渡るときの法律を守らない彼らは言う「そんなのは時間と人生の無駄だ。だって誰も、何も横切ることが無いのは目視で分かるだろ?車が来てるなら渡らないよ、でも守っても守らなくても結局安全に渡れるなら渡ってもいいじゃないか」 「守っても事故に遭う人はいる。車や横切る人がいる状況で渡っても事故に遭わない人もいる。守らなくても安全なら渡ってもいいでしょ?」

……おかしい。


 文章にして誰かに送れば、必ず相手をいら立たせるようなことを相手に言い。その相手にそんなことを言っておいて、直ぐにニコやかに会話を始める。

……おかしい。


 テストでカンニング。授業を聞く気がないのに学校に来る。同族の人間と話すため、自分が楽しくなるための居場所に『新しい知識を学びに来る者が集まる場所』を使う。バレなければいい。バレても謝って、その場だけやっておけばいい。とりあえずとか……仕方なくとか……障がい者や脳の機能が低下した老人を『可哀想と思わず、少しだけ自分より劣っていると考えるのを()()されている』からと言い、それでも「心が無くてもやってあげた方がいいでしょ?」

……おかしい。


 私は本当に男女平等だ。男だろうと女だろうと幼児だろうと老人だろうと歳の差・性別・宗教・国・性的少数者などに関係なく暴力を振るい、対象を(いまし)めるが出来る。その間に偏った感情など無い。理由が違うだけで、理由さえそろえば出来る。

 人間が一人死のうと百人死のうと心は同じ。人間はすべて同じように扱う。私の人間の扱い方に差があるように見えるかもしれんが、それは相手と私を足して同じにしているのだ。老人に過酷を与えるのはおかしい、自分が過酷を味わうべきだ。試練を望む者には過酷を与える、自分はソイツに肩代わりしてもらっているのだから感謝を。すべて本心。すべてが本性。それがこの国でいう()()()()()だと信じていた。


 だって、『本心ではなくとも救われれば嬉しいのだから、自分が何を思っていようと関係ない』:それは生死がかかっているからだ。そんな状況なら他人を殺してでも助かろうとする。それが無いのはこの国が()()という特異な環境にあるからで、それが家庭だったら、無感情に親から食べものを与えられた子供はどう思うだろうか? 子供は食べ物がないよりかはあった方が嬉しいだろう。だが、健康面・体調面・家族で食卓を囲む喜び、それを何とも思わずに出された食べ物を子どもは食べることはあっても、無感情の感謝を述べることはあっても、けっして幸せとはいえないでしょ?


 『バレなければいい。謝ってその場しのぎをすればいい』:他人を殺してもバレなければいい? バレて裁判になったら言い訳をして謝ればいい?


 『自己判断、自己責任。解釈によって法律を捻じ曲げても今まで問題無かった』:車が来ていないから自分の判断で法律を守らなくて良いのならば、この人間は生きていても無駄だからという勝手な自己判断でソレを殺してもいいのですか?


 私は疲れた。私は我慢した。私は守り続けた。私は国が決め、全員が守るはずのことを守らせるための努力をしてきた。私は本心で人に接し、どんなに他人に偽善者と罵られようとも人の為に尽くした。

 そして私は気付いた。

 そうか……彼らは()()()()()()()()()()()()()。だったら守れなくて当然だ。人間にそっくりな動物は本物の人間達に違法行為を促す存在になる……害虫は殺さなくちゃ。


 私は、すべての生物は平等であることを知っている。殺すなんてもってのほかだとも知っている。

 だから私は、殺していい生き物しか殺さない。自分の欲望をぶつけていいのは、それをしてもいいものだけ。

 だから私はこの国に渡り、国の規則・法律として世界への反逆を目指し、殺す道具を作って、邪魔を排除する職業についた。それをテロリストというらしいが、守らないと死ぬ、危険な目に遭う、自分にとって良くないから守るはずの規則・法律を守らない人間モドキを殺し、危険な目に遭わせ、相手に良くないことをする。


 それが私の動機だ。

 皆が守らないことを守らない。それでも彼らは善行な国民なのだから。私が罪人であっても悪人ではないことは一目瞭然でしょ?


~全人類に伝えたい歴史博物館から:史上最悪の犯罪者の手紙より~



 とある国家と共同開発によって生み出されたウイルスは世界を滅亡させるのには十分すぎた。

 国はテロリストに武器や戦闘を国の代わりにやってもらうことで国の被害を最小限に留めつつ、他国への圧力を強めることが出来る。そしてテロリストは『国』という後ろ盾と資金を手に入れることが出来るのだが、両者にはとてつもない誤算があった。


 それは、テロリストのメンバーの一人が勝手にウイルスを持ち出し、戦力を持ち出し、世界を滅ぼそうとしたことである。

 そいつの名は『神無月(かんなづき) (みぞれ)

彼女は優秀な科学者で、世界を滅ぼすウイルス開発にも携わっている人物なのだが、彼女には他のメンバーとはナニカが違っていた。それを国も他のメンバーも見抜くことは出来なかったが、近寄りがたい雰囲気を出しているかと思えば、少し目を離した隙に今度は人懐っこく他の人たちと話したりしている。

 そんな彼女はテロリストの中では唯一、科学者でありながら戦闘に参加できる女性であった。

 数は少ないが、他にも女性はいた。しかし、戦闘に参加できるほどの実力者は神無月 霙だけであった。


「ミゾレェ~今日も敵の部隊を壊滅させたんだって?いいな~私も戦いたいよ」


「行っても訓練と大して変わらなくてつまんないよ、それに私は死なないから」


「霙はいっつも『私は死なない』って言うけど、何でそんなこと言えるのよ?」


「ん~……内緒」


「えー 教えてよ~」


  鍛えられた肉体と黒い目に黒くて長い髪。中性的な姿は男女ともに好かれていたが、誰も彼女に深く関わろうとはしなかった。むしろそれが正解だろう、アレに深く関わるのはそれだけの危険を伴うのだから。


 そして彼女は命に興味のない連中を引き連れて、世界に滅亡のウイルスをまき散らしていった。

 地球上にいる生物は絶滅するかに思われた……が、世界人口の3割という死者を出したあたりで、ウイルス感染による死者は出なくなった。それも世界中で同時に、ピタリと止んだのだ。

 奇跡だ 神の祝福だ 神の御業だ 天使が助けてくれたんだ、などと口々に人は言う。

 10月25日 皮肉にも首謀者である神無月 霙の誕生日に奇跡は起き、彼女の計画は失敗に終わった。

 その日、空から光輝く雪の様な……雨の様な……そう、(みぞれ)が地上に降り注ぎ、全生命体は救われたのだ。神無月 霙の消失を伴って。


 本物の神はいたのだろうか? あれから何年たっても10月25日になると全人類が天に向かって祈りを捧げ、TVは『天使と悪魔の霙』事件に関する番組で埋め尽くされ、彼女の動機が書かれた手紙はいくつもの複製が作られ、世界中の博物館に展示されている。


 本当に彼女は犯罪者だったのか? 彼女は世界に犯罪者にされたのでは? などという人間まで現れる始末。あの事件は人類に平和と正義を考えさせる事件だった。彼女は誰もが知っている地球の歴史史上最悪の大犯罪者ではあるが、同時に彼女を救え無かった人類への罰とも言えるのかもしれない。

 事件収束直後、彼女は神隠しに遭ったように消息を絶った。彼女は何処へ消えてしまったのか?死体が見つからない以上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 史上最悪の犯罪者のその末路、それを知る者は誰もいない。仮にその答えを知ることが出来るとするならば……


 その答えは神のみぞ知る。

感想や誤字脱字に関するメッセージなど、ありましたらドシドシ送ってください。

読んでくださりありがとうございます。これからもこの作品と霙をよろしくお願いします。

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