アイリーン・ディオンドside
アイリーンもがっつりディオンド公爵家の御方なんだなぁと書いててしみじみ思いました
アイリーン・ディオンドside
私は美しい。
…いえ、違うのよ?思い上がりでも何でもなくてこれは事実なの。なんて言ってしまうとなんて傲慢で驕った人間なのかと思われてしまうかしら…でもそうなのよ、そう。なんと言ったらいいかしら…私は美しいの。
この世にアイリーン・ディオンドとして生まれ落ちてから公爵家の姫として蝶よ花よと育てられてきたけれど、だからといってその言葉を盲目的に信じて生きてきたわけではないわ、私は基本的に見たものしか信じないから。初めて鏡を見た時、本当に美しいと思ったの。お父様やお母様が私を宝石だと言って慈しむのもわかるというものよ。ええ、仕方が無いのよね、私は美しいのだから。
私が3歳になったとき、あの子…そう、私の愛すべき可愛くない弟、ジルベール・ディオンドが産まれた。初めて見た時、この子と私はとても似ていると思ったの。…いえ、姉と弟だからではなく……そうね、根本的な所。まだその頃の私は言葉に出来なかったけれど今の私ならわかる。欲しいものを手に入れるためなら手段を選ばない、そういう所。
ふふ、誰でもそういうところはあるでしょう?そう、別に欲深いわけではないわ、隠さなくてもいいの。そんなもの当たり前の感情よ。ただ私達姉弟はそれが行き過ぎているだけで。
……ああ、私の婚約者のアランは弟のその感情を「異常だ」と言ったわね。私もそう思うわ。
だってアランがそう言ったんだもの。
「どうしてあんな奴に惚れたんだ愛しのベネット……」
今日もアランは私の膝で泣いている。そうね、貴方の妹には本当に同情するわ、私の愛すべき可愛くない弟に捕まってしまったもの。でもねぇ……私は思うのだけれど、あの子は自ら喜んでジルベールの檻に囚われているんじゃないかしら。……乙女の勘よ、これを言うとアランはもっと泣いてしまうから秘めておく。アランは泣き顔も可愛らしいけれどあまりに泣いたら目元が腫れてしまうものね。
私の婚約者のアラン・ルクセンはジルベールに捕まった哀れな少女、ベネット・ルクセンの兄。
そうね…外見は、整っている方なんじゃないかしら。一言で言うと害がなさそうな外見、よね。ああ、アランが美しくないわけじゃなくて……そうね、やはり私が美しいからそこを基準にすると語る程でもないという事かしら。でも心はとても純粋無垢で少し鈍感な心配になるくらい裏表のないいい人。そう言っても優秀なルクセン子爵家であるアランは他の貴族の前では歳よりもしっかりした一面を見せ腹の探り合いもなんのその。私はアランを愛している。
「僕を選ぶなんてアイリーンも変わってるね」
何を言っているのかしら、このお馬鹿さんは。何もかも本当は私が選んだというのに、ねぇ?
妹君に連れられて嫌々来ていた貴方が気を許せるようにのけ者としてお茶会に参加していたのも、いつも貴方に嫌なことがあったら私の前で泣くように時間をかけて刷り込んだのも、アランに見える所で、アランに聞こえるように、アランに美しく見えるように私が考えたタイミングで貴方以外の気のない殿方に言い寄られたのもあれもこれも全部全部全部
私が仕組んだことですのに。
「すべて私の望んだとおりよ?」
ええ、本当に。
今日も今日とて純粋で鈍感な婚約者を、私は優しく慰める。
お粗末様でした。拙いながら頑張って書いていきますので次の作品でもお会い出来たら幸いです。