アラン・ルクセンside
「変わり者と無能娘と」に出てきたベネット・ルクセンの兄アラン・ルクセンの恋愛模様。(※先に変わり者と無能娘とをお読みになった方がわかりやすいかも知れません)
アラン・ルクセンside
我がルクセン子爵家愛しの末娘、ベネット・ルクセンが無能娘と呼ばれるようになったのはいつからか。ベネには隠しているが暗く闇の深い内面を持っている変な話し方のジルベール・ディオンドに囚われてしまったあの日からだ。ルクセン子爵家始まって以来の聡明さでこれからの輝かしい将来が約束されていたベネット。無能だなんて罵りとは無縁な世界で皆に尊敬され愛され慈しみを一心に受けるべきベネット。容姿も頭脳も神に愛されていると言っても過言ではないのに、なのに……
「どうしてあんな奴に惚れたんだ愛しのベネット……」
僕の名前はアラン・ルクセン。ルクセン子爵家の次男坊。ルクセン家では主に外交や事務に特化している。……そんな僕はいつもの様に婚約者のアイリーン・ディオンドの膝に顔を突っ伏して泣いていた。
「あんな奴だなんて、可愛くないけれど私の弟よ。アラン。」
「そうだよ…君の弟だよ…何とかしてくれよ……」
「絶対に無理よ。貴女の妹君を見るあの子の目、普通の人間の目じゃないもの。」
異常よ異常。と自分の弟をこき下ろして上品に、けれど楽しそうにけらけらと笑い声をたてるアイリーンを恨めしい気持ちで見てしまうのは仕方がないだろう。
アイリーンとは(ウキウキと)ジルベールに会いに行くベネットに(嫌々)ついてディオンド公爵家へ行ったある日に出会った。ジルベールを見ていて美しい奴だなぁと思っていたけど血筋だと言われて納得する程アイリーンは美しい子供だった。ベネットを妖精と喩えるならアイリーンは花の姫だろう。
……断じて僕は一目惚れなんてしていないぞ。断じて、だ。
何となく子供4人で纏められその中でもベネットとジルベールが2人の世界を作り上げていた隣でやれやれとのけ者2人呆れたため息をつくのが恒例になっていたあの頃。
嫌々ディオンド公爵家へ行っていたのがいつの日か待ち遠しくなった時、幼い恋心を認めざるをえなかったけれど。
出会った時のアイリーンはまだ蕾だがそれでも目が覚めるほどの美しい人だった。そこから何年か、飽きもせずのけ者二人で代わり映えのしない日々を送っていた。
転機はアイリーンが知らない男に言い寄られているのを見てしまったあの日だ。そう、悔しいけれど男に言い寄られている姿を見て初めてアイリーンの美しさは蕾から大輪の咲き誇る薔薇になっていたことに気づいた。ずっと続くと思っていたこの関係が崩れるなんて、アイリーンが別の男と近しい関係になるなんて。
そんなこんなで、いや、あまり思い出したくないだけだ。ただもっとスマートに思いを告げられたら良かった、と思う。そんな格好悪い告白をした僕を選ぶなんて
「アイリーンも変わってるね」
「あら、すべて私の望んだとおりよ?」
今日も今日とて可愛い末妹の行く末を案じ泣く僕は、優しく美しい婚約者に慰められる。
アイリーン・ディオンドsideに続きます