ほとんど説明じゃねーか!
僕はこの学校の制度、marriage partnershipの説明をした。
細かい決まりがちょくちょくあるのだが、簡単に説明すると。
まず、二年の一学期が開始されて、二週間以内にパートナーを決めなければならない。この際、告白が必ず必要というわけではないが、婚姻届のようにお互いに名前を記入、印鑑を捺し、さらに同意書にもサインしなければならない。そして、その書類を二人揃って職員室まできて、担当教諭に手渡ししなければならない。※だが、親の同意は不要。なぜなら入学書類の中にすでに親はこの制度に同意する署名を必ずしているから。
二つ目、期日以内にパートナーを決めれなかった生徒はランダム抽選でパートナーを選出させられ、一度決まった相手とともに学校生活を送らなければならない。※この学校は意図的に男女比が同じになるように入学者を調整している。
三つ目、不倫、浮気は認められない。さらに離婚も特別な事情がない限りは認められない。再婚は可能ではあるが、特別な事情がない限り離婚はできないので相手が居るということはほぼ無い。よって、事実上再婚は出来ないのと同じである。※不倫、浮気をした生徒は、学校から処分がある。最悪で退学という可能性も十分あり得る。
四つ目、パートナーになった二人には共通のデバイスを配られる。パートナー同士の仲が深まると完全3Dのデジタル赤ちゃんが生まれる。二人でその赤ちゃんを育てなければならない。無論これは成績や内定に関係してくる。※育児放棄も処罰がある。
学校内ではその3D赤ちゃんは立体としてみることが出来るし、逆にデバイスに収納することもできる。授業中なんかは収納しなければならない。学外では3Dに表示させれる設備がないからデバイスでみることしかできない。
説明がひと段落した。よく考えたら、生徒手帳にも同じようなことが書いてる気がしたけど。まぁ、生徒手帳見てってよりは口で説明した方がわかりやすいと思ったし。
「なるほどですー。そんな制度があるのですね」
「この学校に入ったから知ってると思ったが、知らないのか。まぁ、六歳ってのを考えたら結婚とかそんなのあまりよく分からないか」
「つかさわかりますよ! 好きな人同士で一緒に暮らすんです! それくらい知ってます」
胸を張って、どや顔するつかさちゃん。
うん、確かに結婚はその認識でも別に良いんだろうけど。
「マリッジパートナーシップは別に一緒に暮らすわけじゃないけどな」
そう、誠が今言ったように、実際に一緒に暮らすわけではない。夫婦同士仲良くなって、赤ちゃんを育てる。という感じ。赤ちゃんがなかなか出来ない夫婦も毎年いるらしいけど、その人達は内定にかなり響くらしいし、かなりちゃんとしなきゃいけないことはたしか。
「すっごく楽しそうです! でもその話とクラスの雰囲気が悪いのは関係あるのですか?」
「すごく関係あるんだなこれが、実は一学期始まって二週間ってなってるけど、実際は始業式があってから二週間なんだ。ようするに、もう期日一週間前ってことで、みんなピリピリしてるわけだ」
「それって、短いの?」
またしてもつかさちゃんは愛らしい笑顔で聞いてくる。
「短いよ。一年の時にそういう対策してなかったり、恋人出来なかった人はもう切羽詰まってるよ」
そう、僕も恋人が出来なかった一人だ。正直つかさちゃんと話している時間も惜しい。だけど、ほっとけないわけ。損な性格だなーって自分でも思うよ。
「えー、でも好きな人に好きですって言ってかっぷるになるんでしょー?」
すぐです! とつかさちゃんは言う。
「そう簡単に上手くいくんだったら……こんな空気にならないよ……」
「そういうものなのですかー」
そんなふうに、三人で長話をしていたら。
「席につけー授業始めるぞー」
次の授業の先生が教室へやってきた。十分中ずっと三人で話してるだけで終わってしまった。授業はいつも通り、適当にやりすごすことにする。