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ロリっ子登場したけどこいつらまた立たされてるよ

 一時間目が終わり、なんとか許可が下りたので教室の中に入るといつもの空気と違った。


 なんだろうか、この殺伐とした雰囲気は……。


 朝のうちに何かあったのだろうか。


 と思ったが、ここはやっぱパートナー探しが関係してそうでもある。


 もしかして、お互いがお互いをけん制して誰も動くに動けない?


「おう、春樹、やっと教室に入ってこれたのか」


「あってめー。さっきはよくも」


「まぁまぁ、落ち着け。そんなことより、お前の席はそこだぞ」


 そう言って、自分の後ろの席を指さす誠。


「あ、さんきゅー。ところでさ。なんか空気悪くない?」


「あぁ、流石のお前でも気がついたか。朝からずっとこんな調子だ」


「そうなんだ」


「ともかく。お前は前に行って自己紹介しろよ。みんなはもう自己紹介終わってるから、あとはお前一人だ」


「えっ? この空気の中自己紹介するの?」


「あぁ、当然だ。みんなこの空気の中やったし。お前だけ自己紹介しないってのもおかしいだろ?」


「それは確かにそうだけど……」


 出来れば遅刻したから自己紹介免除とかが嬉しいんだけど。


 いくらなんでもこの空気の中自己紹介といった目立つ行動はしたくない。


 みんな目が血走ってるよ――。


「ともあれ、担任の教師命令だからな。俺はお前にそれを伝えただけ。やらなかったら後で先生になんて言われるか俺の知ったこっちゃーない」


「聞いてなかったことに……」


「それはだめだ。俺が逆に怒られてしまう」


「じゃあ怒られてきてくれ」


「なんで俺がお前のためにそこまでやらないといけないんだ」


「なにをっ痛みを分け合ってこそ友達というもんだろう」


「何を自分勝手なことをっ。そもそもお前が遅刻してきたのがいけないんだろう」


「だったら助け舟ぐらいだすだろ。そもそもさっきお前が裏切ってなければ一時間目は立たずにすんだはずだ」


「お前。俺のせいだと言う気か」


「あぁ、その通り。完全に全部、果ては僕が遅刻したのさえ誠のせいだ」


「なにをむちゃな」



「こほん」



「「なんだこほんってふざけてるのか?」」


 誠と二人して咳払いが聞こえた方を見てみると、そこには次の授業の先生が立っていた。


「二人とも。廊下に立ってなさい」


 二人仲良く廊下に立つことが決定。


 授業中なので、廊下は人気がなく、静かだった。聞こえてくる音といえば、教室から漏れてくる先生の声ぐらいなもの。


「なんで俺まで立たなきゃならないんだ」


 そんな中、誠がため息交じりに漏らした。


「いや、それはこっちの台詞だ。なんで僕まで立たなきゃいけないんだ」


「なんだと……。いや止めよう。廊下で喧嘩したところで何にもならない」


「ぐっ、それには確かに同意見だ……」


 仕方なく口げんかは止める。これはまぁ、追加で先生に怒られないためには十分ありだったが。そのかわりとてつもなく暇。ぐいぐい。


 一時間目も立っていたからなおさらなんだけど……。ぐいぐい。


 ――ん? ぐいぐい。


「ちょっと、誠、さっきからぐいぐいズボンを引っ張らないでよ。いくらベルトしてるからっていつまでたってもぐいぐいされたんじゃズボンが伸びちゃうよ」


「あ? なにわけわかんねーこと言ってんだ。お前のズボンなんて引っ張ってねーよ」


「ねーねー」ぐいぐい。


「ほら。今だってねーねーとか言いながらズボン引っ張って……ってなんて高い声だしてるんだよ」


「いや、俺じゃねーよ。いくらなんでもそんな高い声ださねーし」


「じゃ、じゃあ僕のズボンを引っ張ってるのは……」


 僕らはいっぺんに下を向いた。


「ねーねーおにいちゃんたちなんでここでたってるのー?」


 幼女が居る。ここって付属の幼稚園とかあっただろうかか。いや、そんなものは無かったはず。


 幼女の姿を確認した後、すぐに誠の方をみたら、誠もこっちを見ていた。


 二人して不思議そうに幼女を見つめる。


「もしかして、あれか。先輩の子ども? ここまで成長してるのはみたことないけど」


「僕もそれは一瞬考えたけど。ここまで大きいとね。やっぱ違うんじゃないかな」


 どちらにせよ。こんなところに居るということは答えは一つだった。


「おじょうちゃん迷子?」


「んーん、つかさ迷子じゃないよー。遅刻しちゃったけど授業受けに来たの」


「ん? つかさ?」


 誠が何やら思い当たるような顔だ。


「どうした誠。なにか、思い当たる節があるの?」


「あぁ、今日出席簿でつかさって名前を見た気がして」


「あ、もしかしてお姉ちゃんに会いに来たとかかな?」


「そうかもしれん、お嬢ちゃん名字はなんて言うんだ?」


 誠は幼女にフルネームを聞いた。


「東條つかさっていうんだよ」


「どう、誠、東條っていた?」


「あぁ、確かに東條つかさって出席簿に名前があったな」


 どうやらそれで当たりのようだ。授業中だけど、幼女を放っておくわけにもいかないからまず先生に伝えないと。


 ということで、僕と誠は勢いよくドアを開けた。


「東條つかささん。妹が会いに来てるぞ」


「迷子になってもいけないし、今会ってあげて」


 ところが静まり返る教室。


 なんだかすごい空回りした気がするけど、でも幼女は実際に居るからなんとでも……。


 ってあれ?


 気がついたら幼女東條ちゃんが教室の中へ入っていった。


「せんせー。おくれてごめんなさい。東條つかさです」


 先生は一瞬おどろいたような感じだったが、すぐに状況がわかったようで。


「あなたが東條つかささんですね。遅刻の理由は聞いています、席について下さい。授業を続けますので」


「はいっ」


 そう言って幼女は空いている席に座った。


 空いている口がふさがらないのは僕ら二人だった。


「君たちはまだ立っていなさい」


 先生はそう言って戸を閉めた。


「「理不尽だー」」



 訴えもむなしく、結局二時間目が終わるまで廊下で過ごすことになった。



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