やっぱりさ、区切り方下手過ぎ!!!
誠に対して身を乗り出して今にも押し倒してしまいそうな体制の如月さん。そのまま押し倒してしまったら学年の如月さんファンの男子に殺されてしまうんじゃないかって思うレベルで羨ましい。
僕は如月さんのことが好きなわけじゃないけど、美少女に押し倒されるのが嫌な男子高校生なんていない。居るはずがない。
「強情……」
そう言って如月さんは体をもとに戻して座り直す。書類を丁寧にたたんでスカートのポケットにしまう。その仕草は可憐という言葉が似つかわしいぐらいに。
僕の感情じゃなく、一般論だけど。
一応、僕の感情でいうと、神埼さんのおっぱいウェーイ。という状態だから。お間違えなく。
仮に神埼さんにあんなふうな体制で迫られたら僕はもう耐えられない。至福すぎて死んでしまうんじゃないだろうか。
そして、そんなやりとりをも笑いながら眺めている神埼さん。一体何を考えているのか正直ちょっとよくわからない。
「それにしてもここはホント眺めがいいですね」
神埼さんがにっこりと言う。
「そうだねー。たまに見たくもないものも見ちゃうけどね」
「見たくもないもの……ですか?」
「うん、そうなんだよ。例えばあっちの方とか」
僕は北側にある体育館の方を指さす」
「体育館に何かあるのですか?」
「体育館といえば更衣室がある。……まさか井上覗きを――」
「してないしてない、なんて濡れ衣だよそれ」
「見たくもないものって男子更衣室のことじゃないの……?」
如月さんがとんでもないことを言う。
「そんなわけ無いでしょ。風評被害もいいところだよ。なんで僕が男子更衣室を覗かないといけないんだ」
「いや、見たくもないものだけれど、ついつい見てしまうものだと……」
「確かに男子更衣室の窓はいつも開いてるけどそんなところ見ないよ」
涙ながらに僕は言う。勝手に見たくもないけどついつい男子更衣室を覗いてしまう変態にさせられたらたまったもんじゃない。僕は女の子の方が良い。
「じゃあ女子更衣室を覗いてるの……?」
「それもちがーう。いや、見たいって思う気持ちは確かにあるかもしれないけど、覗きは犯罪だよ。バレたらただじゃ済まない。だから覗きなんてしない」
「じゃあ一体何があるんですか?」
神埼さんが聞いてくる。じゃあっていう言い方からしたら、ちょっと如月さんの話を信じたってことなのだろうか。咄嗟に全否定してよかった。
「いやね、実はフェンスに近づかないとわからないけど、体育館裏があるでしょ?」
「体育館裏に何かあるのですね」
「その通りなんだよ。体育館裏は不良たちのたまり場でね。よく要るんだよ。目を合わせたくないから極力そっちの方を見ないようにしてるんだけどさ」
「進学校にも不良っているですかー?」