第三章 告白されたいという告白!
第三章
神埼さんと初めて弁当を一緒に食べたその翌日から。屋上で昼食をとるようになった僕らなのだけれど、僕にとって何か進展があったかと言われると、何もない。
そう、本当に何もないのだ。
ただ、みんなと談笑しながら食事をする。ただそれだけ。なぜ告白しないのか、と問われると答えは簡単に出る。神埼さんと二人っきりになれないからだ。
正直、二人っきりになる方法はいくらでもあるんじゃないか。と言われれば僕はこう答える。そんな勇気があればすでに告白をしていると。
だけれど、悠長なことは言ってられない。何とかして神埼さんと二人っきりになる機会を作らないと始まらない。
そもそも、どうして二人っきりにならないといけないか、それは僕が人前で告白できる度胸がないからにほかならない。
というわけで、三日間何も進展がなく、無駄に時間を過ごしてしまった。
「へっくしゅん」
「井上くん風邪ですか? 今日は少し肌寒いですからね。体調には気をつけてくださいね」
僕が一度くしゃみをするだけで体調まで心配してくれる神埼さんは本当に優しい人なんだなと思う。
「大丈夫だよ。ありがとう」
軽く返事を返す。
「少し雲があるのに屋上で食べるのはちょっとあれでしたかね。教室に戻ります?」
そう、今僕らは屋上で昼食を食べている最中。
そして、一人新しいメンバーが追加されている。神埼さんから話を聞いたようで、普通に翌日から何気ない顔をして普通に溶け込んでいる。その名前は如月美穂。一年の頃からずっと誠に言い寄ってきている美少女である。
風で長い髪をなびかせながら如月さんはこういった。
「大丈夫、バカは風邪を引かないっていうし」
「ちょっとそれはひどくない?」
いくら学年の成績が後ろから数えたら早いって言ったってここは一応進学校なのに。
「そうだな、美穂の言うとおりだ」
誠までそんなことを言う。
僕に味方は居ないのか。
「お兄ちゃんは馬鹿じゃないですよー。それに勉強ではどうしようもない優しさがあるいい人です」
居た。六歳の天才。つかさちゃんが僕の味方だった。
「そういえばつかさちゃんは本気で春樹をパートナーにしたいのか?」
誠が触れてはいけないことに触れた。
周りも空気を読んでくれてその話題にふれないでくれてたというのに。
「もちろんです。お兄ちゃんとパートナーになりたいです」
「あは、あはははは」
僕は変な笑いを出すしか無い。
「でも、つかさは告白されたいので待ってるです」
外堀から埋められてる気しかしない。逃げ道がどんどんなくなっていくような。この流れだったら神埼さんに告白しても、「つかさちゃんはどうするんですか」とか言われかねない。
「私はいつでも準備万全。誠、私に告白を」
「しねーよ。お前とパートナーになる気はないって何度言ったらわかるんだ」
「それは男特有のツンデレ。すなわち素直になれない。ってやつってわかってる……だからこの書類にサインして一緒に提出しに行こう」
「書かねーよ。絶対にな」