告白するなら早くしろや
僕は勇気を出して聞いてみた。そして言ったあと、僕は深呼吸をした。
理由は二つある。
一つは、今のこの緊張を抑えるため。そして、もう一つは、今ここで神埼さんに告白するという決意を固めるため。
マリッジパートナーシップの締め切りはもう残り一週間しかない。よくよく考えたら今から仲良くなるように、外堀を埋めて――。なんて作戦は、ヘタしたら他の男に先をこされる可能性が高い。ということになる。
幸い、神埼さんと親しい男子は今のところいないようだし、今勝負をかけて告白して、残りの日数できちんと考えをまとめてくれたほうが有効だと思う。
実際、先に告白してきた人とあとに告白してきた人、比べてみると断る以外では先に告白している方が印象強い。
今一番の問題は、即断られる。ということがないかどうかにある。
この昼休みで勝負に出る。
この屋上に連れてきたのも、正直それがあったからだ。この学校での告白ポイントとなる場所はいくつかあるけれど、僕個人的にここが一番ロマンチックだと思ったからだ。
純粋にここで神埼さんと過ごしたいというのは本当だが、その先まで僕はちゃんと考えていた。今日授業中に。
そう、一緒に食事をして、屋上で告白。それが僕の考えたプランだ。
告白は焦っても仕方がないという意見もあるかもしれないだろうけど、今回は期限が決められているんだ。
一番の問題は、一年の頃に如月さんから聞いたあの言葉。「瑠璃は可愛いし、優しいからかなり男子人気があるわよ」というものだ。
一年の頃からラブレターをもらって困ってるという事実からすると、告白はされ慣れてる。でも彼氏はいない。ということは今のところ男子を振り続けているということだ。
でも、マリッジパートナーシップの締め切り間近の今でも、状況は同じかどうかってことが重要になってくる。
神埼さんだって、ランダムで選ばれた相手と過ごすより、自分自身で認めた相手と学校生活を送るほうが良いに決まってる。決めつけっぽくなっているけれど、これはおそらくあたってると思う。
ランダムの方が良いって人はかなりの変わり者だと僕は感じてる。
だから僕は、勇気を振り絞って、神埼さんに告白をする――。
「そんな怖い顔して、どうしたんですか?」
神埼さんに僕の緊張が伝わってるようだ。
僕ってそんなに顔に出やすいのかな。
「えっと……その……」
意を決したというのに、肝心なところでどもる僕。
それもそうだ、僕は人生で今まで告白ということをしたことがない。いい言葉も浮かばない。
「どうしました、どこか体調でも悪いんですか?」
「……いや……その……た、体調は悪くないんだけどね。い、いい天気だね」
僕は臆病者だということを自覚した瞬間だった。こんな肝心なときに勇気がでないだなんて……。
「そうですね。いい天気ですね。春は気持ちがいいですね。ここから見える桜並木道もすごく綺麗ですし」
誤魔化せた。いや、誤魔化してどうするって話になるのだけれど、どうもタイミングが難しい。