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よく屋上に行ける創作物多いけど、リアルだと立入禁止だよね

「さぁ、行こう」


 僕は咄嗟に神埼さんの手をとった。


「あ、はい」


 神埼さんは拒否せずに僕に引っ張られるような形でついてきた。


 行き先は決まっている。教室を出て、廊下を歩き、階段を登り。封鎖されるように机が組まれているのを動かして、その先にある扉を開く。


 すると、眩しい日差しが僕らを照らしつけ、風が心地よく吹き付けてくる。それに眺めもいい。


 僕が神埼さんを連れてきた場所。それは屋上だった。


「あー、気持ちいいですね」


 神埼さんは僕の手を離れ、数歩前に歩いた。両手を広げて太陽の光と風を全身で受けるように背伸びをした。


「そうでしょ。おすすめスポットなんだ」


 そう、ここは僕と誠が一年の頃からよく来ている場所。鍵が壊れているのか。施錠されていない。一応机でバリケードみたいにされているけど、簡単にどけることができるといったお粗末ぶり。


「まさに、穴場ってやつですね」


 神埼さんはこちらに振り向いて、クスッと笑う。


 その笑顔が太陽の光と同調して、すごく眩しい。


 この人が女神です。って言われたら信じてしまうぐらいに、美しく、綺麗。


 そう、神埼さんはおっぱいだけじゃなく、顔もスタイルもいい。見てくれだけで言えばもう満点以外の点数は付けられない。


 性格も、今日話した限りだとすごくいい人みたいだし。


 僕は感じた。やっぱり、この人は素敵だなと。


 この人を好きになった僕に間違いはなかったと。


 僕は、この人とパートナーになりたい。一緒に赤ちゃんを育てたい。素直にそう感じた。


 下心なんかじゃない。純粋な恋心を、僕は神埼さんに対して持っている。


「ここにはよく来るんですか?」


 何気ない言葉が僕の胸を突き刺す。


 好きな人の声ってこんなに響くんだなどと、僕は感じた。


 そのせいか、なかなか返答の発言が喉で引っかかる。


「え……と……あ……」


 必死に頭で言う言葉を巡らせる。何も難しいことはない。言おうと思ってるそのままを口に出せばいいだけなのに。それがなかなか出てこない。


「そ……そうだよ」


 絞りだすようにして発せられた声。


 この言葉はちゃんと神埼さんに届いたのか。それすら怪しいぐらいに震えるように出た。


 ちゃんと聞こえただろうか。僕はそれが気になって、次の言葉をひねり出す。


「い、一年の頃から誠とよくここに来たんだ」


 今度は震えることなく言えた。とはいえ、一言目に突っかかったけれど、誤差の範囲だろう。


「お二人は一年の頃から仲が良いのですね。中学校も一緒だったりするんですか?」


「いや、中学のときはそれぞれ別だよ。高校になって知り合ったんだ」


 僕はゴクリと生唾を飲み込んで平常心を保とうとする。言葉につっかかりもなくなってきた。


「へぇ、そうなんですか。きっと素敵な出会いだったのですね」


「全然、素敵だなんてことは一欠片もなかったよ」


「そうなのですか。私は高校で親しくなったのは美穂ぐらいですね」


「あぁ、そうなんだ!」


「あっ、美穂って言うのは、如月美穂って、一年の頃同じクラスの……」


「知ってる知ってる。如月さんは僕も話したことあるよ。誠の幼なじみだし。よく三人で話してたよ」


「そうなんですかっ! そういえば小さいころから一緒で絶対パートナーになりたい人が居るって言ってました。もしかして」


「うん、多分それ誠のことだよ」


「キャー。すごい、小さい頃からずっと一緒だなんてすごいロマンチックですね」


 何やら、興奮しだす神埼さん。


 そういう系に憧れてるのかな。遠くの中学からって言ってたしそんな人はいないんだろうけれど。


「でも、誠にはその気がないらしいから、難しいことだね」


「えーっ。美穂は女の私が見ても綺麗で素敵なのに。坂井くんは見る目がないんですか?」


 結構思ったことをズバッと言う子なんだな。と僕は感じた。だけど、それはまた良いんじゃないかな、ひた隠しにされて、何を考えているかわからない人よりはずっと良い。


「どうなんだろうね。誠自身は、ずっと近くに居るから兄妹みたいな感じでそんな感情にはならないとかなんとか言ってたけど」


「あー。それは確かにあるかもしれませんね。一緒に居すぎるのもいいことばかりじゃないのですね」


「神埼さんは……その、良いなって思ってる人居るの……?」


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