会話に一貫性ないぞおい
「テストの点数で思い出したけど、六月に中間あるんだよなー。今から億劫だよ」
「大丈夫ですよ。私勉強教えますよ。一緒に勉強しましょう」
優しい。優しすぎるよ神埼さん。素敵なのはおっぱいだけじゃない。流石だ。
「つかさも一緒に勉強するです」
つかさちゃんは無邪気で楽しそうである。天才児とはいえ、やっぱ六歳って感じが拭えない。かと言って、思考回路まで高校生並みだったら可愛げがないんだろうけど。
「ありがとう。二人共。その時はよろしくお願いするよ」
神埼さんは学年トップクラスの成績だし、つかさちゃんに至っては天才幼女だ。女の子や六歳児に勉強を教えてもらうということにプライドが傷つかないのならこれほど良い先生はいないんじゃないだろうか。
何はともあれ、これで六月の中間試験はこれで怖くない。
「いや、お前ら一つ重大なことを忘れてないか?」
誠が重々しく切り出してきた。
「重大なことってなにさ」
僕は誠に聞き返す。
すると、誠は軽くため息をつきながらこういった。
「あと一週間でマリッジパートナーシップの締め切りだということだ。その時にまでパートナーが決まっていなかったらランダムでパートナーが選ばれる。んで、中間テストは六月。重要なのはここからだが、マリッジパートナーシップでは、浮気は禁句中の禁句だ」
「勉強するのも浮気だっていうのか?」
「パートナー以外の異性と交流がそもそも怪しいラインだ。たとえそれが勉強だとしてもだ。だってよく考えてみろ。パートナーと一緒に勉強したらいいだろ。わざわざ別の人と勉強する理由がない。たとえ、学年トップクラスだろうが天才児だろうがな」
「そんな、じゃあ僕の成績はどうなるのさ!」
「それは自分でどうにかしろよ。っていうか、俺が言いたいのはそんなことじゃない。六月の中間テストのことを気にかけるのは別にいいが、目先のこともちゃんと考えとかないとってことだよ。俺も人のことは言えないが、ここにいるみんなパートナーが決まってるわけじゃないだろう」
言われてみればそうだ。僕は今神埼さんと一緒に弁当を食べてる。という至福で目標を失っていた。神埼さんとパートナーになるために一緒に食事なのに、それが楽しくて目的が目標になってしまっている。
そうだ、こっからどうやって神埼さんとパートナーになるか、それを考えないと。
僕は足りない頭をフル回転させて必死に考えはじめた。
みんなもそうなのか。誠の言葉以降、沈黙が少し続いた。マリッジパートナーシップのことについて考えているのだろう。
「お兄ちゃんは、どんな人がタイプなのですか?」
沈黙を破ったのはつかさちゃんだった。
そして、唐突な質問。僕はあまり深く考えずに返答した。
「僕は、おっぱ……。いや、そうだね。優しくて可愛い人がいいね」
僕は神埼さんのことを思い浮かべていた。目の前に居るのだから、そのままの感想を言ってしまいそうになったけれど自重した。そもそも僕に、髪がふわふわでおっとりしてて――なんて、ヘタしたらそのまま告白になってしまいそうなことを言う勇気なんてなかった。