(魔術師+魔導神官)×バトル=仲裁
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・ハァ・・」
男は一定の呼吸をしながら裏路地を逃げ回る
その男の心には恐怖と絶望よりも困惑と後悔の感情で埋めつくされていた
「ハァ・・ハァ・・ハァ・・クソッ・・何でこんなことに・・・」
この男は一言で言ってしまえば不良である
しかし、この区域では珍しく【魔神の加護】を受けられる【魔術師】である
「クソッ・・何でこの区域に【魔導士】レベルの奴がいんだよ。」
【魔法】を扱う者には五つの階級が存在する
一番低い者から
【魔法使】
【魔術師】
【魔導士】
【魔導神官】
そしてこれらの頂点
【魔王】
魔法を扱う者にとっては命の次に大切な階級だ
しかしこの階級に上下関係は無い
だが・・・
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・!!」
男は驚く
いつの間にか先回りされてしまったのだ
彼女は笑う
まるで子供のように
しかし子供には無い鋭い雰囲気を身にまとって
「くっくそがーーーーーー!!」
男は叫ぶ
そしてコンクリートのヒビから生えた雑草をむしり取り食べる
「へぇ~~~それがアンタの【供物】か。その程度の【供物】なら【魔神の加護】はせいぜいランク1ね。」
彼女は淡々と言葉を述べる
【魔神の加護】を受けるにはいくつかの条件が必要だ
その内の一つに【供物】もしくは【代償】が必要なのだ
しかも人によって【供物】も【代償】も違うし、与えられる【魔神の加護】も人それぞれだ
なので一定以上の【供物】や【代償】を払っても決められた以上の【魔神の加護】は受けられない
そして【魔神の加護】は体内で、あるエネルギーに変換される
「【魔神の加護】を生成し【神力:超速成長】に変換。」
それが【神力】である
そして変換された【神力】も人それぞれである
「(【属性魔力:木】+【性質魔力:増加】)×【神力:超速成長】=【樹海の槌】発動!!」
男は【魔法公式】を唱える
男は地面を殴る
その殴った地面から小さい芽が出る
その芽はたちまち成長し一瞬にして周りを巻き込み成長する
「ははっなんだそれ?ただ【属性魔力】を強化して雑草を大木にしただけじゃねーか。」
彼女は笑う
「そっそれはどうかな。」
「あん?」
「おらぁ!!」
男は育った大木を殴る
殴った大木はきしみ傷が入り傾いていく
「げっ!マジかよ!!」
「マジだよ!おらぁ!!」
男はダメ押しでもう一発殴る
さらに大木は傾きついに自身の重みに耐え切れなくなり彼女に向かって倒れていく
「げぇぇぇぇぇ!!」
彼女は叫ぶ
しかしその叫び声をかき消すように大木が襲いかかる
大木は倒れきり衝撃の音と枝の折れる音だけが残る
「ハァ・・ハァ・・・・・くっくくくくく・・・あっはははははははは。」
男は勝利を確信して笑う
しかし次の瞬間倒れた大木から火柱が建つ
「なっなにぃ!!」
そしてその火柱の根元には名前の通り凛々しく立っている彼女
「天照凛」がいた
「そっ・・・そん・・・な。」
男はこの光景をまだ信じられなかった
確かに【木属性】は【火属性】に弱いし【樹海の槌】は彼女の言うとうり【属性魔力】を強化して雑草を成長させたただの木
だがしかし、幹や枝の密度を高くしたまま殴ったところだけを朽ちさせて倒れさせ木の密度で完全に燃えきる前に潰す
そうゆう技だったのだから
「馬鹿・・な・・・【樹海の槌】を簡単に燃やすなんて・・・魔導士レベルの【属性魔力】でも燃やしきれないはず・・・」
「それは【属性魔力】だけならの話でしょう。」
凛は男の目を真っ直ぐ見る
その目は鋭く男からしたら刃物に見えた
「ヒッ!!」
男の心は折れる寸前になった
「悪いけどアタシの【魔神の加護】のランクは4なんだわ。残念だったなぁ。」
「そっそんな。」
「ちなみに階級は【魔導神官】だ。」
「なっ!!」
少し話を階級について戻す
なぜ階級が命の次に大切か
なぜならそれは力の象徴であるからだ
この【管理された楽園】は一応【楽園の掟】があるが基本敵には弱肉強食の世界だ
だから、階級が必要なのだ
自分の強さを誇示するために
自分の命を守るために
「うっ・・・あっ・・・」
男はもはや声も出せず身動きすらできなくなっていた
「わりーが、アタシはあんたを許す訳にはいかねーんだよ。」
「なっなんのことだ・・・何で・・・いきなり俺を?・・・」
「黙れ。」
「ヒィィ。」
男は完全に戦意を無くしていた
「テメェーみたいな野郎がいちいち罪を認識する必要なんざねぇ。」
凛は腰にぶら下げた日本刀を抜く
「まっ待て!いくら弱肉強食のこの世界でも理由も無しに人を殺すのは流石に【楽園の掟】を違反してることぐらい分かっているだろう?」
「だから何。」
そして男の前まで来るとその刀を振り上げる
「お前【魔導神官】なんだろ!!【魔神】のこの世界で怒る犯罪確定予想を元に取り締まる立場なんだぞ!!その立場を捨てていいのか!?」
「別にいいさ、それでテメーを・・・」
「たっ頼む助けてくr・・・」
「殺せるなら・・・」
「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
刀に力を入れて振り下ろす
「ダメだよ殺しちゃ。」
男と凛の間に最初からいたような虛はそれを素手で止める
「「なっ!?」」
男と凛は驚く
男は彼が当たり前のようにそこに現れたことに
対して凛は当たり前のように素手で刀を受け止め血を流していることに
そして次の瞬間
虛と凛はそこから消えた
「・・・えっ?」
残された男はただ呆然とするしか無かった