(理不尽+普通)×風=魔力の気配
「でりゃあ!」
「グアァッ!!」
学校について必ず日本刀の鞘での攻撃で一日が始まる彼こと「影無虛」は誰がどう見ても被害者であり
日本刀の鞘で虛を攻撃した彼女こと「天照凛」が加害者であることは誰がどう見ても明らかだろう
しかし、実際は違う
ただしそれを知っているのはこの二人だけだ
「虛ぉ~~~テメェには前も言っただろうが。毎日朝早く来て、屋上でアタシに殴られろってなぁ。あぁ!!」
「ごっごめんなさい。天照さん。」
虛は殴られた腹を抑えて廊下にうずくまりながら謝る
「ゴメンじゃすまねんだよ!!ちっ朝の楽しみが無くなったじゃねーか。」
「ごっごめんなさい。」
「だからゴメンじゃすまねんだよ!!聞こえなかったのか!!」
「ごめっ・・じゃなくて・・・ええっと・・・」
「もおいい。罰として今日の放課後はアタシに付き合え。返事は?」
「えっと・・あの・・・」
「返事は!!」
「はっはい!」
【理不尽】という言葉がこの状況に一番適しているだろう
しかし誰も手を貸さない
先輩も
後輩も
同学年も
クラスメイトも
そして先生までも
誰一人として彼に手を貸すものはいない
【普通】ならありえないだろう
でもその【普通】が【周りの世界】のものだったらの話だ
でもこの【街】では
いや、この【世界】ではそんな普通は通じない
この【世界】の名は・・・
【管理された楽園】
強気者が頂点に立つ【魔法実験社会施設】だ
● ○ ● ○ ● ○
「あ~~~~~死にたい。」
虛は呟く
授業をサボリ屋上で寝転がり
「はぁ~~~~~何でアイツなんだろう。」
その呟きは誰に対してのものでもない
だからその呟きの本当の意味がわからなくても当たり前のことだ
「・・・・・・・・・・明日は確か雨にするんだったよな。」
彼は確定していることを呟く
【管理された楽園】は名前のとおりあらゆるものが管理されて確定されている
基本的には【温度】、【湿度】、【天気】の三つが管理されていて
その他の細かいところは【魔神】の調子にもよるが
過去最低記録でも87.69%過去最高記録で98.79%で確定されている
ちなみに平均確定値は95.88%である
「・・・・・・・・・・今日は・・・風が無いからなぁ。」
ちなみに今日の風の確定予測値は風速0メートルいわゆる凪だ
しかし次の瞬間
「っ!!」
静かな風が吹いた
そして虛は体を起こす
虛は風が吹いたことに驚いた訳ではない
確定予想だって外れることもあるのだから
虛が驚いたのはその静かな風にわずかばかり二つの【魔力】が混じっていたのだ
そしてその一つは虛の知っている人物の魔力だった
「これは・・・【属性】の方が【火】、【性質】は【硬化】、【神力】はランク2まで抑えてるけれど、相手の【属性】は【木】、【性質】は【増加】、しかもこの魔力からすると全力だけど【神力】はランク1かよ。・・・馬鹿か・・・相性が悪すぎる。」
風に流れて来る少しの魔力でここまで分かるのは異常だろう
しかし、虛はとある事情により魔力に敏感なのだ
そして、虛は立ち上がる
そして、また風が吹く
今度は強い風だった
どうやら、今日の【魔神】は調子が悪いらしい
そんなことを虛は考えたそのとき
彼はそこには居なかった