(傷+猫)×時間=家路
「ゲホッ・・カッ・・・ハァハァ・・・・・あーー痛ぇ」
この街では珍しく【魔法】による火傷や切り傷などではなく生身の人間の攻撃・・・いや暴行による傷だらけの少年が裏路地で倒れていた
「ハァハァグッッ・・・ウゥ・・・こりゃ・・・腎臓やられてる・・なぁ・・・ついでに肋骨もか・・」
彼は何となく言ったが病院で見てもらわなくても重症だと言うことが分かる
「まぁ・・・ラッキーな部類かな・・・あの子も助けられたし・・・」
そんなことを呟いていると暗闇から《ニャー》と言う鳴き声が聞こえた
「あれ?お前逃げなかったのかよ・・・バカだなぁ・・・」
彼が暴行を受けていたのはこの子猫を助けるためである
しかし、彼のことをよく知る人物が見ればこう言っただろう
意味なんて無くなってしまうのに
そして、その時は訪れる
「時間・・・か・・・」
彼の腕時計は奏でる
無機質で単調なまるで古めいた何処かの時計塔のような午前零時零分の音を
そして彼に変化が生じる
「・・・ふぅ」
彼は立ち上がる
何事も無かったかのように
それもそのはず
彼の服もズボンも髪も皮膚も
綺麗に治っているのだから
そして猫は鳴く
「あっ」
その猫は助けられたことを忘れたかのように暗闇に消える
「まっ・・・そうだよね・・・」
彼は当たり前だと自分に言い聞かせる
「それでも・・・俺は・・・忘れないから・・・」
そして彼も家路につく・・・