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「……すごい夢だな。感覚も、前と変わってる!」
ぺたぺた、と自分の体を触る。手足が六本ある……うーん、ほんとになんと言うか…シリコンのようでいてホコリが付きにくいような……例えるのなら、スマホケースとかに使われていそうな質感の体だな。イモルは青、緑、ピンクが段々となっているカラーリングだったが、俺は黄色、緑、青となっているようだ。
「あのー……もしかしてまだ現実だと信じないおつもりで?」
むーっとイモルが頬(頬袋?)をふくらませている。そこ膨らむんだ。
「いや、尚更信じられないというか……すごい夢だなあ、とは思うけれど……えーと、それで?これで、家族なの?同じ種族になったわけだし?」
「なんでそんなに理解が早い割に信じてくれないのかの方が気になりますが……まあいいでしょう、私の計画は順調に進んでいるわけですしっ!」
「計画?」
「そうですっ!題して……っ」
するとドゥルルルルルルと無駄に盛大なドラムロールが聞こえてくる。えっ、生音? ここには俺とイモルだけだが妙にリアルだ。どういう仕組みなんだよ……
イモルはニッ、と口角を上げるとこう言い放った。
「同時入学で私も経済的に楽しちゃおう作戦ですっ!!!!」
「………………は?」
「ですから同時入学で私も経済的に楽しちゃおう作戦なのです」
「いや、聞こえたけど」
「ああ!楽しみですね!」
「ちょっと待ってよ!まだなにがなんだかよくわかってないんだってば!これ夢なんだよな!?いつ覚めるんだよ!?」
「もうっ!!いい加減わかってくださいよっ!どうしたらわかって貰えますか?ほっぺたでもつねりましょうかあああ?」
有言実行!とばかりにイモルはすぐに俺の両頬をつねり出した……って、いたたたたたた
「うわ、ちょ痛い痛い痛い痛い!……えっ、と、いうことって……」
「はい、これでもうわかりましたよねっ!?」
…………さすがにこう何度も夢ではないと言われて、こんな痛みを感じると……信じざるを得ないのか!?
「え、と、すげーリアル……っていうか、これがリアルなのか!?」
「そうですっ」
「そうなのか……」
「やっとわかったようで何よりです!タテコガワさん!」
「えっなんで俺の名前」
「あなたを召喚した時に名前入りヘルメットも落ちてきましたから」
「あ……」
差し出された若干くたびれているそれはどうみても俺の相棒だ。相棒もここに来ちゃったのか……というか、スマホとかもう無いしかなりやばいんじゃないかこの状況……?
「タテコガワ?って、不思議な名前ですねえ」
「ああ、それは苗字で……下の名前は俊樹だ」
「トシキ?」
「おう、そう呼んでくれて構わない」
そう呼んでくれる人はもうしばらくいなかったから、どこか懐かしい感じが一瞬した。
「……えーと、脱線しちゃいましたけど、私の計画についてお話します!」
「確かにここがリアルってことが確定した以上、聞きたいことは山ほどあるからな……まずはイモルの話を聞くよ」
「……ほんとに謎に理解力と適応力が高いですね。まあいいですけど」
とにかく!とビシィ!と決めポーズをかましたイモルは計画の全貌を語り出した。
「私はどうしても異世界高校に通いたいのです!そのためには誰か純種を召喚して『特例』になる必要がありました」
「ああ、そこまでは……なんとかわかった」
「そしてふたつめ!あなたが純種だとバレるとすごーくモテるって話です!」
「おう、モテるならいいんじゃないのか?」
「ものっっっっっっすうううごく、ですよ?」
「…………?」
「純種の血を飲むと不老不死になるとか、純種の身体に触れるとどんな病も守るだとか、根拠の無い噂も大量に広まった世界でモテるんですよ?」
「……………………それって、ハーレムってより、殺し屋とかにモテるってこと!?」
「そうです!命の危機もあるかもしれません!」
「俺やばいじゃん!」
「ですから!現在は大丈夫です!50対50の超平々凡々な私の見た目をトレースしてますから、まあバレませんよ。私が魔法士でよかったですね!」
「え、あ、ありがとう……?」
「理解力が高くて助かります」
「……えー、その、正直わかってはいないんだが……」
「同じような見た目にしたのは、私の家族として学校に通った方がお互い都合がいいからです。純種であることは一部の教員しか知らないようにしますし、あなたは平穏な高校生活を送れるし、『その家族』である私も憧れの異世界高校にタダで通えるし!いい事づくめではありませんかっ!」
「…………」
「トシキ?」
「ああ、いや、考えてた。そうだな……すげー強引な計画だけど言いたいことは分かったよ、分かったけどだな!」
俺はずっと思ってたことをイモルに叫んだ。
「俺のプリンだけはなんか保証してくれーーーっ!!!!!!」
「………………プリン?」
「この世界にプリンはあるか!?」
「ありますよ!」
「だったら俺を計画に巻き込んだ詫びとしてプリンをくれないか!詫びプリン!」
「えと……もちろん構いませんが、そんなものでいいんですか?」
「そんなもの!?プリンだぞ!?生クリームが載ってるやつがいいんだけど!?」
「はい、ご用意しますよ。そんなにプリンがお好きなんですねえ」
「………………じゃあ、いいよ!」
「え?」
「お前の計画に乗るってこと!俺はもう現実に未練ないし新たに高校生活をやり直したいし、イモルは憧れの高校に通える!確かにイモルの言う通りいい事づくめだな!」
「………………」
「イモル?」
するとイモルは一瞬フリーズし、俺の方を見て驚いたような顔をした。そしてじわり、と目尻に涙を浮かべ出したのだ。
「ああああああありがとうございますううううう!!!!!!」
「うわっ!!?」
イモルが泣きながら抱きついてきた。全速力での突進。俺はちょっと吹っ飛ばされた。
「あ、すみません!うれしくて!」
「お、おう、俺なんかでよかったら……」
そう、本当にいいのだ。俺の人生、未練なんてほんとにプリンくらいなんだから……
「今日から私の『双子のお兄ちゃん』として、よろしくお願いしますねっ!」
「お兄ちゃん?」
「そう呼んでいいですか?」
「まあ、いいけど」
「やった!お兄ちゃん!私ずっとお兄ちゃんが欲しかったの!あ、タメ口でいい?」
「急にグイグイ来るな…………好きにしたらいいよ」
「うふふふふふふふっ」
――こうして俺は、『双子の妹』と生クリームプリンを得たのだった。




