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現実は、台本通りになんてならない〜中学時代に書いた黒歴史物語の世界に来てしまった話〜  作者: 瑠美


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第37話 親友

 朝食を済ませたリリアーナがエリカと共に廊下を歩いていると、ちょうど客人が帰ろうとしているところに出くわした。その人物は二人の姿に気づくと、すぐに足を止めて丁寧に一礼した。


「これは失礼しました。突然のお邪魔をしてしまいまして。」

落ち着いた声でそう言いながら顔を上げた青年を見て、リリアーナはすぐにその人物が誰なのかを察する。


「セドリック様、ですね?」

そう尋ねると、青年はわずかに驚いたように目を瞬かせ、それから穏やかな笑みを浮かべた。

「ええ、そうです。アルの友人のセドリックと申します。」


改めて丁寧に頭を下げる姿は、どこか気品があり、立ち振る舞い一つ一つが自然に洗練されている。

リリアーナも優雅に会釈を返した。

「はじめまして。アルベルトの妻のリリアーナです。」

そして少し微笑みながら続ける。

「夫から何度かお名前は聞いていましたし、大学時代も、アルベルト様といつも一緒にいらっしゃるのをお見かけしていました。ですが、こうしてお話しするのは初めてですね。」


その言葉に、セドリックは楽しそうに笑う。

「それは光栄ですね。アルの口から私の名前が出ていたとは思いませんでした。」

二人が穏やかに言葉を交わすその様子を、リリアーナの後ろでエリカがじっと観察していた。


(うわ、超イケメンだ)

整った顔立ちに、柔らかな物腰、さらに知的な雰囲気まで備えている。

(この物語、イケメン多すぎじゃない?)

内心でそんなことを思いながら、エリカはしみじみと感心していた。


リリアーナは穏やかに言葉を続ける。

「夫なら、今は剣の稽古をしているかと思います。」

「ええ、存じていますよ。」

セドリックはあっさり答えた。

「さっき会ってきましたから。」


その言葉に、リリアーナが少し驚いた表情になる。

「そうだったのですね。」

「ええ。仕事で近くまで来ていたので、ついでに顔を出したんです。」

セドリックはそう言って軽く肩をすくめる。

「私とアルは幼いころからの付き合いですから、この屋敷にもわりと自由に出入りさせてもらっているんですよ。」


その説明を聞いたエリカは、心の中で小さくつぶやいた。

(いやいや顔パスって……大丈夫かこの屋敷のセキュリティ)

もちろん表情には出さないが、内心ではしっかり突っ込んでいる。


 そんなエリカのことなど知る由もなく、セドリックはリリアーナに穏やかな視線を向けた。

「ところで、リリアーナ様。アルとはうまくやっていますか?」

唐突な質問だったが、その声にはからかうような響きはなく、ただ純粋に気にかけているような優しさがあった。


リリアーナは少しだけ驚いた表情を浮かべたあと、すぐに微笑む。

「もちろんです、アルベルト様はとても誠実な方ですから。」

その答えを聞いたセドリックは、どこか安心したように頷いた。

「そう言っていただけると嬉しいですね。」

そして少し遠くを見るような目をして続ける。


「アルは、かなり不器用な男ですので、感情が見えにくいと思うこともあるかもしれません。」

リリアーナは静かにその言葉を聞いていた。セドリックは穏やかな口調のまま続ける。

「ですが、思いやりはある男ですし、とにかく真面目で、自分に厳しい。学生の頃からそうでした。剣だって、あいつは元々かなり強いんですよ。」


その言葉に、エリカが少しだけ驚き、思わず口をはさんでしまう。

「そうなんですか?」

セドリックは笑いながら頷いた。

「ええ。学生の頃から相当な腕でした。それでも稽古を再開したということは……」

そこで少し言葉を区切る。


「きっと、何か思うところがあったのでしょう。」

そしてリリアーナを見て、優しく言った。

「どうか、応援してやってください。」

その言葉には、親友としての温かさが滲んでいた。


リリアーナは静かに、でも確かに頷く。

「はい。」

その様子を見て、エリカは思った。

(いい人だな、この人)

顔も整っているし、性格も良さそうで、しかもアルベルトのことをこんなに理解している。

(完璧じゃん)

内心でそんなことを思っていると、セドリックは軽く一礼した。

「それでは、そろそろ失礼します。」

そう言って踵を返す。だがそのとき、ほんの一瞬だけ足を止め、振り返った。


そして、エリカを見た。ほんの数秒にも満たない視線だった。

しかしその場の誰も、特に気に留めることはなかった。

やがてセドリックはそのまま玄関を出ていき、静かに屋敷を後にする。


その背中が見えなくなったあと、リリアーナがふと呟いた。

「素敵な方ですね。」

エリカはすぐに頷く。

「半端なくイケメンでしたね。」

思わず本音が出る。リリアーナはくすりと笑った。

「顔も性格も完璧です。私も親友になりたいくらいです。」

その言葉にエリカも笑う。

「アルベルト様のことも、いろいろ知れてよかったですね。」

リリアーナは小さく頷いた。

「ええ。」


そのあと少し考えるような表情になる。

エリカはその様子を見て、ゆっくりと言った。


「これから稽古で、朝食を一緒に取れない日も増えると思います。ですが、その代わりに、別の時間でお話すればいいじゃないですか。」

リリアーナは顔を上げ、エリカをまっすぐ見る。

「たとえば、夕食のあととか。それに、たまにはリリアーナ様から要望を言ってもいいと思います。」

エリカもリリアーナをまっすぐに見て、続けた。

「我慢して、一人でふさぎ込んでも、何も解決しません。アルベルト様だって、言われなければ気づかないこともあると思います。」


リリアーナはその言葉をしばらく考えていたが、やがてふっと笑った。

「確かにそうですね。」

その表情は、先ほどよりもずっと明るくなっている。

「少し、勇気を出してみます。私が落ち込んでいたこと、気づいてたんですね。ありがとう。」

そう言ったリリアーナの顔には、先ほどまでの曇りはなく、どこか晴れやかな表情が浮かんでいた。


エリカはそれを見て、内心でほっとする。

屋敷の窓から差し込む朝の光は、いつの間にか少しだけ強くなっていた。

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