表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

はじまり

 何も見えない。

 手元の見知らぬスマホを除いては。

 そうか、「しりとりマチコ」か。

 本当にあるとはね……

 いたずらではないことは明白。

 これを人間がやったなら、拉致監禁罪だ。

 それをいたずらだと思ってやってしまうような友人はいない。

 ――と信じている。

 だからやはりこれは、怪異なんだろう。

 我ながら冷静すぎるとも思うが、仕方ないだろう。

 こういう日を待ち望んでいたんだから。

 昔から、都市伝説を調べるのが大好きだった。

 ぼくは、日々の生活に現実感を感じていなかった。

 人生がまるで、自分で自分というラジコンを動かしているような、一枚なにかを噛ませたような現実感のなさ。

 それは楽しさ嬉しさも感じにくいということでもある。

 日々の暮らしが、どこか他人事にしか感じられなかった。

 だからだろうか。

 ぼくは異常な世界を調べることで、心地よさを感じていた。

 現実が現実に思えないなら、非現実の方がぼくには親しめる。

 いつか、自分も体験してみたいと思っていた。

 そうすれば、生きている実感があるかもしれない。

 うん。

 その想像は正しかった。

 いつになく、自分自身との一体感がある。

 現実だと思われていなかった、与太話のはずの都市伝説が現実だった。

 なら、これこそぼくが求めていた現実かもしれない。

 よし、じゃあやってみようじゃないか。

 「しりとりマチコ」との対戦を。

 どういうゲームかは知っている。

 つい最近、部活の後輩がその噂をしていたのだが、興味が出て自分でも調べたのだ。

 暗闇の中、スマホアプリでしりとりをし、相手の返信したものが現れる、というものだ。

 だが、解放条件はヴァリアント――変異がある。

 調べた限り、ネット上で最初に報告されていた条件は「しりとりで勝利すること」だった。

 しかし、その後は「とにかく長く続けること」、「『出口』と言わせる」といった別の勝利条件が現れて来る。

 また、生還したと主張する人間の書き込みによれば「る攻め」をしていたらマチコに殺されたと思われるトークグループがあった、というようなものある。

 実際に、自分のトーク画面をよく見ると「新しいグループ(75)」とあった。

 他のグループを見ると、なるほど、噂は正しかったとわかる。

 実際に「る攻め」でマチコの怒りをかったと思われるグループもあるし、マチコが「ん」で終わってしまい、そのまま次の操作がない(解放された?)ものなどもあった。

 中にはやたらと長く続いて、急にどちらかの返信がなくなっているものもあるが、これも噂通り解放されたのかもしれない。

 しかし、都市伝説にまつわるネットの書き込みが正しいというのは、正直意外だった。

 ならば、過去の書き込みは変人扱いされながらも、真実を訴えようとしていた人間の、注意喚起の叫びだったのかもしれない。

 いずれにせよ、いまは勝利条件のことはいい。

 まずは試してみたい。

 マチコのトークは『いのち』。

 「ち」より始まる言葉か。

 何を入れてみるか――


 ちらし

 or

 ちかく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ