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第41話 扉を知る者たち

夕暮れのカフェには、放課後の学生やビジネスマンたちが思い思いの時間を過ごしていた。

 その隅の、奥まったソファ席。


 俺と柚葉は、久しぶりに“日常の顔”で向き合っていた。


「ごめんなさい。遅くなって……部活で少し、捕まりました」


「いや、大丈夫。俺もさっき着いたところだ」


 微笑みを交わす。それだけで、なぜか心が少し落ち着いた。


 けれど、次に交わされた言葉は──現実を、深く抉るものだった。


「水科さん、たぶん……扉の場所を知ってます」


「やっぱり……か」


「はい。この前、学校で──わたし、妙な気配を感じました。

  魔力がわずかに漏れていて……でも、それは“制御されてる”人の視線。

      気づかれないよう魔力で察知したんですが、多分、水科さんではと…」


「……完全に使いこなしてる、ってことか」


 俺の背筋が、ぞくりとした。

 俺だけでなく柚葉にも接触しようとしていること‥‥

 帰還者でさえ暴走しかねない異世界の力を、“制御”している。

 それはすなわち──長期的に異世界と接触している可能性を示していた。


「柚葉。仮に、あいつが“開けた先”で何かをしようとしてるとしたら……」


「止めなきゃ、いけません」


 静かに、だが力強く彼女は言った。


 扉が開くということ。

 それは、単なる冒険や異能の獲得ではない。

 この世界に、異世界の理が侵食するということだ。


 それがどれほど危険なことか、俺たちは身をもって知っている。


「高野さん。わたし、準備します。

 “封印解除”と“転位阻止”の術式──今からでも使えるように」


「……頼もしいな、精霊の巫女」


 俺は、かすかに笑った。


 そして──戦う覚悟を、また一つ深めた。


(続く)

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