第27話 プリンターは冒険者の魔道具ではありません
さすがに反省した。
俺は決めたのだ──もう、社内の電化製品には手を出さない。
たとえそれが、挙動の怪しいプリンターだったとしても。
……そう、思っていたはずだったのに。
「……また紙詰まりかよ」
会議直前、提出資料を印刷していた俺の目の前で、プリンターは息絶えた。
電源ランプは点いているのに、内部が無反応。
「おいおい、やめてくれよ……今じゃなきゃダメなんだって……」
気づけば、俺の指がプリンターに触れていた。
──ピクン、と中で何かが反応した気がする。
(少しだけ、流す……スイッチを押す程度に)
ほんのわずかに魔力を注ぎ込むと、プリンターが急に動き出した。
「……おっしゃ!」
勢いよく資料が吐き出され──
なぜか途中から、見覚えのある異世界の魔法陣が印刷されていた。
「……あれ?」
そこへ、タイミングよく村田が登場する。
「なにこの中二病デザイン」
「……誤印刷だと思う」
「これ、高野の資料?」
「……そう、俺の資料」
「会議室に召喚陣描いたら、俺もうこの会社辞めるからな?」
俺は、黙って魔法陣ページを丸めてポケットにねじ込んだ。
(異世界の遺産、現代のコピー紙に残すもんじゃないな……)
反省は、している。
(続く)




