第26話 冷蔵庫の神は、氷結系スキルを嫌うらしい
翌日。
電子レンジがご臨終したことで、俺は冷蔵庫に手を出す羽目になった。
会社の給湯室にあるその冷蔵庫は、年季の入った業務用。
音がデカい。凍らせすぎる。とにかくクセが強い。
だが、今日は違う──
(今度は逆に、冷気を制御すればいい。問題ない……はず)
俺は昨日の反省を活かし、温度をうまく下げて飲み物を程よく冷やす計画を立てていた。
そっと手をかざし、力の流れを整え──
……と思った瞬間、
「……バチィッ」
中から凄まじい霜柱が吹き上がり、
パック牛乳がカチンコチンに凍った。
「……おぉい」
「またですか」
登場:葛城ユイ(定位置)
「冷蔵庫がいきなり壊れるなんて、また珍しいですね……高野さん、何かしました?」
「いや……ちょっと……冷却の効率化を……」
「効率よく、壊れてますね」
開けた冷蔵庫の中で、凍りついたお茶ペットボトルが悲鳴のようにパキッと音を立てた。
「これ、総務に報告書いりますよ。あと弁償も」
「個人でなんとか……」
「なんともならないと思います」
俺の脳裏に、かつて異世界で囲んだ焚き火のぬくもりが浮かぶ。
──異世界の炎は優しかった。
ここのユイは、容赦がなかった。
(続く)




