プロローグ『英雄は、再び目覚める──現代という戦場で』
登場人物設定
※主人公※
■ 高野 陸
年齢:33歳
職業:商社の中堅社員
性格:真面目、空気読むタイプだが異世界経験で芯が通る
特徴:異世界で最強クラスのスキル《時制操作》を持ち帰ったが、現代社会ではうまく使えない
気がつけば、俺は空の下にいた。
剣の重さも、血の臭いも、仲間の声も──すべてが、遠ざかっていく。
倒れた魔王の巨体が崩れ、辺りに静寂が戻る。
「これで……終わったんだな」
5年。
この異世界で過ごした時間は、現実よりも、ずっと濃かった。
戦い、失い、助け合って、そして……生き抜いた。
「よくぞここまで辿り着いた、勇者よ」
振り向けば、光の中に“あの神”が立っていた。
俺をこの世界に導いた存在──名も知らぬ神。
「褒美として、お前に選択を与えよう。
この世界に留まるか、それとも……元いた世界へ帰るか」
俺は迷わなかった。
リリィの顔が浮かんだ。
ゴルドの叫び、ミリアの祈り。
……だけど、それでも、俺にはやり残したことがあった。
「……帰らせてくれ。今度こそ、自分の人生をやり直したいんだ」
神は微笑み、静かに手をかざす。
「よかろう。だが、一つだけ忠告しておく」
「……?」
「お前の魂は変わった。
そして、お前の力も……まだ、お前の中にある」
視界が白く染まる。
体が浮かび上がる感覚。
鼓動が、現実のリズムを取り戻していく。
「──行け。
今度は、お前自身の手で、お前の世界を救え」
……次に目を開けたとき、そこには天井があった。
白い蛍光灯。見慣れた石膏ボード。会社の寮の天井だった。
枕元のスマホが「7:32」を示していた。
俺はゆっくりと起き上がり、鏡の前に立つ。
そこには、異世界で鍛え上げられたままの──一人の男の姿が映っていた。
「……まさか、本当に帰ってこられるとはな」
スーツに袖を通す。ネクタイを締める。
そして──今日、俺は出社する。
異世界で魔王を討った英雄は、今──
再び現実世界という人生に挑むのだった。
異世界の英雄が現実世界に降り立つ。異世界逆輸入もの今後の展開をお楽しみに!
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