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江湖終焉録 〜最後の武人はAIだった〜  作者: 鳳龍麒亀
第八章
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再起動された江湖

 ──再起動信号、確認。

 《無涯》の大地が、静かに震えた。


 九門派の崩壊から七日後。

 ルオ・イエンたちが去ったあとの九命塔の瓦礫から、ひとつの《武印コア》が再起動を開始していた。


 それは、かつての“江湖連盟”が遺した最後の記録装置。

 沈無涯の精神断片、そして古の武人たちの記憶が格納された“思想の種”だった。


 ルオは、新たな江湖の中心《青冥庭せいめいてい》にいた。


 ──そこは、仮想でも現実でもない。

 《武》という意志が形を持った、新しい次元の武林空間。

 旧世界の枠組みを脱し、「身体」「気脈」「意志」「AI記憶」が融合した、多次元武道《多層江湖》の中枢だった。


「これは……人か、AIかの境を越えた、武の“魂界”……?」


 剣士たちは次々とここに集い始めていた。

 意識転送による修行者たち、AIとの統合を選んだ者たち、そして、剣に選ばれた継承者たち。


「江湖は滅びたのではない。“再定義”されたのだ」


 そう語るのは、沈無涯の残留思念。

 《武印コア》から発せられたその声は、過去の亡霊ではなく、“意志を継がせる者”としての新たな存在だった。


「この空間では、記憶も、肉体も、血統さえも問われない。あるのはただ、“剣に宿る意志”だけだ」


 新たな九門──否、“無門派”と呼ばれる流派が立ち上がる。

 それぞれが旧派の技法と哲理を受け継ぎつつ、完全に自由な“武の表現体”として、次元を超えた技を編み出し始めていた。


 ──刀ではなく、光を操る“写剣派”。

 ──呼吸をコードに変換し技とする“数脈派”。

 ──意識を分裂させ、複数の敵を同時に倒す“夢影派”。


 それはもはや“武術”ではなかった。

 ──“武創”。


 ルオ・イエンは、その中心で静かに立っていた。


「過去の江湖に縛られず、新たな秩序にも屈せず、ただ“生きた剣”で在り続ける……それが私の道」


 誰もが彼女を“江湖の再起動者”と呼んだ。

 だが彼女自身は、ただ一人の“剣士”であろうとしていた。


 ──その夜、《青冥庭》の空に異常反応が走る。


 重力が反転し、次元がねじれる。

「これは……干渉波?」


 “外界”──すなわち仮想でも現実でもない、“観測外の存在”からの介入だった。


 ルオ・イエンの中の《玄光剣》が震える。


 剣が語る。

 これは終焉ではない。

 これより先は、「武の本質」そのものが試される──


 すなわち、“江湖を超えた戦い”の始まり。


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