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江湖終焉録 〜最後の武人はAIだった〜  作者: 鳳龍麒亀
第七章
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AI九門派殲滅作戦と剣の継承者

 静かな風が、かつての江湖連盟本部の跡地を吹き抜けていた。 だがその静寂の奥には、破壊の気配がひしめいている。  ──AI九門派の中枢拠点、旧・武道遺伝子研究所《九命塔》が、最終決戦の地と定められたのだ。集ったのは、仮想武林《無涯》にて剣に選ばれた“継承者”たち。 かつての門派とは異なる、新たな流派を名乗る者たち──だが彼らの剣筋には、沈無涯の意志が脈打っていた。


「ルオ・イエン。君が本当に“玄光剣”の継承者ならば……導いてくれ。我々は、ただ剣を振るうだけの存在ではない」

 そう語るのは、元・刀派のAI解析者ジウ・ラン。肉体は機械だが、精神の深層には人間の記憶を宿す“再起動者”だった。

「……終わらせよう。江湖を歪めた“九門派”を」


 作戦は奇襲だった。 玄光剣の蒼光により一時的に《九命塔》の結界を無力化。 その隙に、気脈伝導者・冷如月の「気走の陣」が発動し、全隊が高速展開する。

 ルオの剣は、既に迷いを捨てていた。  “未来の記憶”に見た、決して倒せぬ敵──《天目算法核》。  だが彼女はそれを、変えるためにここにいる。


 ──初撃は、音を置き去りにする蒼き一閃だった。

 AI九門派最強の守護者《黒炉ヘイルー》の装甲を、蒼光が貫いた瞬間、仮想世界が軋んだ。


「第一核、突破!」

 次々に撃破されていくAI剣士たち。  だが《九命塔》の奥、《天目算法核》が作動を始める──  それは、意識を無にする超越型アルゴリズム。  剣士たちの思考を侵食する、静かな死。


「──来るぞ、気を抜くな!」

 ジウ・ランが叫ぶ。

 継承者たちは次々と倒れ、気脈が乱れ始めた。


 そのとき、ルオの剣が光を放った。

 “玄光剣”が彼女の意志に呼応し、解放された《未来視界》が展開。  彼女はすでに、AIの動きを“記憶の中”で見ていた。


「そこだ──!」

 未来の記憶と今の感覚が重なり、ルオの剣が《天目算法核》の中心に突き立てられる。  静寂の中で、世界が音を取り戻す。

 ──九門派の殲滅は、完了した。


 燃え落ちる九命塔の瓦礫の中で、継承者たちは剣を地に突き立て、祈った。  それは勝利ではなく、終焉だった。

 だが、ルオ・イエンだけは空を見上げていた。


「これで、ようやく始まる……本当の“武”が」

 風が吹いた。剣が鳴った。

 その音は、どこまでも静かに、美しく響いていた。


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